【故事成語】
刀を売りて子牛を買う
【読み方】
かたなをうりてこうしをかう
【意味】
戦いや争いから離れ、武器を手放して、農業などの平和な暮らしに向かうこと。


【英語】
・beat swords into plowshares.(武器を捨て、平和な生活に移る)
【類義語】
・剣を売り牛を買う(けんをうりうしをかう)
・売剣買牛(ばいけんばいぎゅう)
・売刀買犢(ばいとうばいとく)
「刀を売りて子牛を買う」の故事
「刀を売りて子牛を買う」は、中国の歴史書『漢書(かんじょ)』の「循吏伝(じゅんりでん)・龔遂伝」にもとづく表現です。『漢書』は、前漢の歴史を記した中国二十四史の一つで、後漢の班固が撰し、班昭らが補い、80年ころに成立しました。
もとの漢文には、「民有帶持刀劍者、使賣劍買牛、賣刀買犢」とあります。これは、刀剣を身につけている民がいれば、剣を売って牛を買わせ、刀を売って子牛を買わせた、という意味です。
この故事の中心人物は、前漢の宣帝の時代に渤海(ぼっかい)の太守となった龔遂です。渤海では飢饉のために盗賊が起こり、武器を持つ民が多くなっていました。
龔遂は、民をただ力で押さえつけるのではなく、農業に戻して生活を安定させる道を選びました。農具を持つ者は良民とし、武器を持つ者は賊と見なす形で、民が武器を捨てやすいように導きました。
そのうえで龔遂は、民に倹約をすすめ、農業と養蚕に力を入れさせました。さらに、木を植え、ねぎ・にらなどを作り、家ごとに豚や鶏を飼うようにすすめたと伝わります。
この流れの中で、刀剣を帯びている民には、剣を売って牛を買い、刀を売って犢(こうし:子牛)を買わせました。龔遂は「何為帶牛佩犢」と言い、牛や子牛は身につけるものではなく、農作に用いるものだという趣旨で、民を農業へ向かわせました。
「犢」は子牛を指す漢字です。そのため、原典の「賣刀買犢」は、日本語では「刀を売りて子牛を買う」と受け止められます。
この話では、刀や剣は争いを表し、牛や子牛は農業と生活の立て直しを表します。つまり、武器を生活の道具へ替えることによって、盗みや争いから離れ、平和で働きのある暮らしへ移ることを示しています。
その後、この故事は「売剣買牛」や「売刀買犢」という形でも用いられました。いずれも、武器を売って牛を買うという同じ発想から、戦いをやめて農業に従い、平和に暮らすことを表します。
日本語の「刀を売りて子牛を買う」は、この漢籍の表現を、意味の分かりやすい形にほどいた言い方です。武力で争うよりも、生活を支える仕事に力を移すことの大切さを伝える故事成語として用いられます。
「刀を売りて子牛を買う」の使い方




「刀を売りて子牛を買う」の例文
- 長く続いた争いをやめ、村人たちは刀を売りて子牛を買うように田畑の復興へ向かった。
- 社内の対立を続けるより、刀を売りて子牛を買う姿勢で新しい仕事に力を合わせるべきだ。
- 両国は武器を減らし、食料生産を支援する道を選び、刀を売りて子牛を買う政策へ踏み出した。
- 兄弟げんかをやめて家の手伝いを始めた二人の姿は、刀を売りて子牛を買うようだった。
- 試合後、相手校を責めるのではなく合同練習を始めたことは、刀を売りて子牛を買う考えに近い。
- 争いにお金を使うより、地域の畑や学校を整えることこそ、刀を売りて子牛を買う行いだ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・教育部『重編國語辭典修訂本』2021年。
・班固撰、班昭ら補『漢書』80年ころ成立。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary.』























