【ことわざ】
木株にも物着せよ
【読み方】
きかぶにもものきせよ
【意味】
形のよくない木の切り株のようなものでも、飾り方しだいで見栄えがよくなるということ。


【英語】
・Fine feathers make fine birds.(美しい羽が鳥を美しくする)
【類義語】
・切株にも衣装(きりかぶにもいしょう)
・馬子にも衣装(まごにもいしょう)
・鬼瓦にも化粧(おにがわらにもけしょう)
・人形にも衣装(にんぎょうにもいしょう)
【対義語】
・衣ばかりで和尚はできぬ(ころもばかりでおしょうはできぬ)
「木株にも物着せよ」の語源・由来
「木株にも物着せよ」は、木を切ったあとに残る株をもとにしたことわざです。「株」は、切り倒した木や刈り取った稲などのあとに残る根元の部分を指し、「切株」は、木や草を切ったり刈ったりしたあとに残る根元の部分を表します。
木の切り株は、枝葉がなく、形も整っていないものとして受け取られやすいものです。そのような木株でも、布や飾りを付ければ、それなりに見られるようになるという発想が、このことわざの土台にあります。
意味の近い形として、「切株にも衣装」という言い方があります。これは、つまらないものでも外見しだいでよく見えるという意味で、「馬子にも衣装」と同じ考えを表します。
「木株にも物着せよ」の「物」は、ここでは身に付けさせるもの、つまり衣装や飾りにあたるものとして働いています。「着せよ」という命令形によって、見栄えのしないものでも、まず外側を整えてみよ、という調子の言い方になっています。
このことわざは、中国古典の故事に由来するものではなく、身近な物を用いた日本語のたとえとして理解できます。木株というありふれた物を出すことで、外見を飾る力を、誰にも分かりやすく言い表しています。
この考えは、人の身なりをいう「馬子にも衣装」とよく重なります。「馬子にも衣装」は、馬子のような者でも衣装しだいで立派に見えるという意味で、つまらない者でも外面を飾れば立派に見えることを表します。
「馬子にも衣装」は、江戸時代の俗語・俗諺を集めた『俚言集覧(りげんしゅうらん)』とも関係の深い言葉です。『俚言集覧』は太田全斎の編んだ書物で、俗語や俗諺を集めた江戸時代の国語辞書として知られます。
外見を整えると見え方が変わるという発想は、さらに多くの言い方を生みました。「鬼瓦にも化粧」は、醜いものも化粧すれば、けっこう美しく見えることを表し、「人形にも衣装」は、衣装によって人が立派にも下品にも見えることを表します。
これらの言い方に共通するのは、内実そのものを変えなくても、外側を整えるだけで人の受ける印象が大きく変わるという見方です。「木株にも物着せよ」は、その見方を、人間ではなく切り株という物に移して、いっそう素朴に表したことわざです。
ただし、このことわざには、相手をそのままほめるよりも、「もとは見栄えがしないが、飾れば何とか見られる」という軽い皮肉が含まれます。そのため、人に向かって使う場合は、「馬子にも衣装」と同じく、相手を下に見る響きにならないよう注意が必要です。
現在では、人の服装だけでなく、古い家具、簡素な部屋、手作りの展示物などにも使えます。もとの形はよくなくても、布を掛ける、花を添える、配置を工夫するなどして見栄えがよくなる場面に合うことわざです。
「木株にも物着せよ」の使い方




「木株にも物着せよ」の例文
- 古い棚でも布を掛けて花を飾れば、木株にも物着せよで見栄えがよくなる。
- 地味な発表コーナーに色紙を添えたら、木株にも物着せよのように明るくなった。
- 傷のある木箱を展示台に使ったが、布で包むと木株にも物着せよで立派に見えた。
- 手作りの看板は少し粗かったが、縁を飾ると木株にも物着せよで目を引いた。
- 古い机も、きれいな布と小さな花びんを置けば、木株にも物着せよで客席に合う。
- ただの段ボール箱でも、紙を貼ってリボンを付ければ、木株にも物着せよと言えるほど印象が変わる。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小西友七・南出康世編集主幹『ジーニアス和英辞典 第3版』大修館書店、2011年。
・太田全斎『俚言集覧』。























