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【秋の鹿は笛に寄る】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

秋の鹿は笛に寄る

【ことわざ】
秋の鹿は笛に寄る

【読み方】
あきのしかはふえによる

【意味】
恋や欲に心を奪われ、みずから危ないほうへ近づいて身をあやうくすることのたとえ。弱みにつけこまれて利用されやすいことにもいう。

ことわざ博士
このことわざは、恋や強い欲のために、自分からあぶない方へ近づいてしまうことを表すよ。好きな気持ちが強いと、ふだんなら気づけるあやしい誘いにも心が動きやすくなるんだ。
助手ねこ
相手に弱みを見抜かれて、利用される場面にも使われることが多いニャン。

【英語】
・Love is blind.(恋は人の目をくらませる)
・like a moth to a flame(危険と知りながら引き寄せられる)
・walk into a trap(自分からわなにかかる)

【類義語】
・妻恋う鹿は笛に寄る(つまこうしかはふえによる)
・笛に寄る鹿は妻を恋う(ふえによるしかはつまをこう)
・飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし)

【対義語】
・君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)
・石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
・濡れぬ先の傘(ぬれぬさきのかさ)

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「秋の鹿は笛に寄る」の語源・由来

ことわざを深掘り

このことわざの土台には、秋の鹿が相手を求めて鳴くという、古くからよく知られた秋の情景があります。古い和歌では、鹿は秋の萩のもとで妻を恋うて鳴く動物としてたびたび詠まれ、秋の寂しさや恋しさを背負った生き物として受け止められていました。

そのため、「秋の鹿」というだけで、ただ秋に山にいる鹿ではなく、恋しさのために落ち着きを失った鹿を思わせます。人が強い思いに引かれて判断を誤る姿を重ねやすい下地は、かなり早い時代からできていたのです。

ここでいう「笛」は、山野の景色を楽しむための笛というより、鹿を寄せる笛を思わせる言い方です。秋の鹿がその音に引かれて近づくという発想が、このことわざのいちばん大事なたとえになりました。

今たどれる古い例としてよく知られるのは、南北朝時代ごろに成った『曾我物語(そがものがたり)』です。そこには、夏の虫が火に入る姿と並べて、秋の鹿が笛に心を乱すという趣旨の表現が出てきて、恋のために身を損なうことが高い身分の人にも低い身分の人にも起こる、と語られています。

この段階では、今の見出しの形そのままがきれいに現れているわけではありません。けれども、笛に引かれる秋の鹿が、恋のために心を乱し、自分をだめにするたとえとして、すでにはっきり働いていたことは、この用例から十分に読み取れます。

さらに、1331年ごろ(元弘1年・鎌倉時代末期)までに成った『徒然草(つれづれぐさ)』第九段には、「女のはける足駄にて作れる笛には、秋の鹿、かならずよる」とあります。ここでは男女の色欲が人の心を惑わすことを戒める流れの中でこのたとえが使われていて、当時すでに広く通じる言い回しだったことがうかがえます。

この『徒然草』の言い方は、今のことわざより長く、たとえもいっそう具体的です。けれども、中心にあるのはやはり「秋の鹿が笛に引かれて寄ってくる」というイメージであり、のちの短い形へつながる大切な橋渡しになっています。

そのあとも、この言い回しは中世から近世へ受け継がれました。1686年(貞享3年・江戸時代前期)の『好色訓蒙図彙(こうしょくきんもうずい)』の序にも「秋の鹿、笛により」と近い形が出てきて、江戸時代前期には、今のことわざにかなり近い形で言い表されていたことが分かります。

もともとこのことわざが強く表していたのは、恋のために心を乱し、身を滅ぼしかねないという意味でした。ところが、恋に限らず、相手に弱みを見抜かれて自分から危険へ近づいてしまう、という広い意味でも使われるようになり、現代ではその両方が通用しています。

この意味の広がりは、もとのたとえを考えると分かりやすいものです。鹿を動かすのは、相手を求める気持ちの強さですし、人を動かすのもまた、恋心や欲、あるいは弱みにつけこまれやすい心だからです。そこから、単なる恋の失敗だけでなく、甘い誘いに乗って自分を危うくする場面全体へ使い道が広がりました。

つまり「秋の鹿は笛に寄る」は、秋の鹿の生態をそのまま説明した言葉ではなく、強い思いに引かれて警戒を失う人間の姿を映したことわざです。秋の鹿という古くから親しまれた季節のイメージと、笛に誘われて近づく危うさとが重なって、恋にも誘惑にも通じる、鋭い戒めの言葉になったのです。

「秋の鹿は笛に寄る」の使い方

健太
放課後に公園へ行くだけで、人気ゲームのレアカードを三枚くれるって知らない人からメッセージが来たんだ。ほんとうにもらえるのかな?
ともこ
知らない人がそんなうまい話を出すのは、あぶないよ。秋の鹿は笛に寄るっていうでしょう?
健太
たしかに、レアカードがほしくて、相手のことを何もたしかめていなかった。先生と家の人に見せてからにするよ。
ともこ
うん、それがいいよ。ほしい気持ちにつけこまれて、自分から危ない場所へ行ったら困るもの!
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「秋の鹿は笛に寄る」の例文

例文
  1. 試験問題が手に入るという甘い誘いに乗ったのは、秋の鹿は笛に寄るというほかない。
  2. 危険な投資話と知りながら大金を出した父の姿は、秋の鹿は笛に寄るを思わせた。
  3. 会いたい一心で相手のうそを見抜けなかった彼女は、まさに秋の鹿は笛に寄るであった。
  4. 祭りの招待券をただで渡すという見知らぬ連絡先を信じるのでは、秋の鹿は笛に寄るになる。
  5. 取引先に気に入られたいあまり不利な契約をのんだのは、秋の鹿は笛に寄るという失敗だった。
  6. 弱みを抱えた人を甘い言葉で誘い出す詐欺は、秋の鹿は笛に寄るをねらう手口だ。




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