【ことわざ】
合うも不思議、合わぬも不思議
【読み方】
あうもふしぎ、あわぬもふしぎ
【意味】
夢や占いは、現実と合って当たったとしても、もともと確かな根拠のあるものではないため、不思議なことだという意味。


【類義語】
・当たるも八卦当たらぬも八卦(あたるもはっけあたらぬもはっけ)
「合うも不思議、合わぬも不思議」の語源・由来
「合うも不思議、合わぬも不思議」の「合う」は、人どうしの気が合うことではなく、夢や占いの内容が現実の出来事に合うこと、つまり当たることを指します。このことわざは、夢や占いが当たったからといって、それを確かな予告として信じ切るべきではない、という受け止め方を表しています。
古い用例は、『虎寛本狂言・花子(はなご)』(室町時代末期から近世初期の狂言〔きょうげん〕)にあります。『花子』は、ある男が妻を欺き、以前から思いを寄せている女性のもとへ出かけようとする筋の作品です。
その初めの場面で、男は、続けて夢見(ゆめみ)が悪いので、外へ出たいと妻に申し出ます。妻は、夢をそれほど気に掛けるものではないと返し、「夢と申物ははかない物で、合ふも不思議合ぬもふしぎ」と語ります。夢ははかないものであり、たとえ現実と合ったとしても、心を奪われるほどの根拠にはならない、という文脈で用いられています。
ここで大切なのは、後半の「合ぬもふしぎ」が、外れた夢まで特別なものとして重く扱う言い方ではないということです。「合わぬも不思議」は、口調を整えるために添えられた部分であり、言葉の芯は、根拠のはっきりしない夢や占いが現実に合うことこそ不思議だ、という点にあります。
古い本文では、「合ふも不思議合ぬもふしぎ」と記されています。「合ふ」は現在の「合う」に当たり、「合ぬ」は「合わぬ」に当たります。表記は現代の形に整えられても、夢や占いが偶然に当たったことを過大に受け止めないという意味は、現在のことわざにも受け継がれています。
意味の近いことわざに、「当たるも八卦当たらぬも八卦」があります。「八卦(はっけ)」は占いを表し、この言葉は、占いは当たる場合も外れる場合もあることを、より直接的に言い表します。「合うも不思議、合わぬも不思議」は、古い用例では夢をめぐる会話の中に現れ、当たった夢でさえ頼り切るべきものではないと示すところに特色があります。
このように、「合うも不思議、合わぬも不思議」は、夢の内容が現実になったり、占いの言葉が実際の出来事と重なったりしたときにも、それだけで心を決めたり、恐れたりしないように教えることわざです。偶然に合ったことに振り回されず、落ち着いて物事を見る知恵を伝えています。
「合うも不思議、合わぬも不思議」の使い方




「合うも不思議、合わぬも不思議」の例文
- 昨夜見た夢と同じ出来事が起こっても、合うも不思議、合わぬも不思議と考え、すぐに運命だとは決めつけなかった。
- 占いで雨になると言われたが、合うも不思議、合わぬも不思議なのだから、遠足の準備は天気予報を確かめて進めた。
- 祖母は、よい夢が現実になったと喜ぶ孫に、合うも不思議、合わぬも不思議だから浮かれすぎないようにと言った。
- 友人の占いが偶然当たったとしても、合うも不思議、合わぬも不思議であり、大切な進路は自分で考えるべきだ。
- 商店街の福引で占いどおりの賞が出たため皆が驚いたが、店主は合うも不思議、合わぬも不思議と笑って受け流した。
- 新しい仕事の吉凶を占いだけで決めようとする同僚に、彼は合うも不思議、合わぬも不思議だと静かに忠告した。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・小学館『デジタル大辞泉』。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。























