【ことわざ】
徒花に実は生らぬ
【読み方】
あだばなにみはならぬ
【意味】
見かけだけが立派でも、内容や実力が伴わなければ、よい成果には結びつかないということ。


【英語】
・All that glitters is not gold(光って見えるものが、すべて価値あるものとは限らない)
・Appearances can be deceptive(見かけは人を惑わせることがある)
【類義語】
・見掛け倒し(みかけだおし)
・名有りて実なし(なありてじつなし)
・有名無実(ゆうめいむじつ)
【対義語】
・花も実もある(はなもみもある)
・名実相伴う(めいじつあいともなう)
・実を結ぶ(みをむすぶ)
「徒花に実は生らぬ」の語源・由来
このことわざの中心にある「徒花」は、もとは咲いても実を結ばない花をいう言葉です。「徒」には、無益・無用で成果が上がらないという意味があり、「生る」は草木の実ができることを表すため、「実は生らぬ」は、文字どおり実ができない状態を指します。
平安時代中期の漢和辞書『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』(934年ごろ成立、源順著)には、中国最古の字書『爾雅(じが)』の説明として「栄而不実謂之英〈於驚反阿太波奈〉」という形が出てきます。これは、花が咲いても実らないものを「英」といい、その日本語の読みとして「あだばな」を添えた記述です。
この段階の「あだばな」は、現在のことわざそのものではなく、植物として実を結ばない花を示す言葉です。しかし、「花は咲くのに実がない」という対比が、すでに言葉の核にあります。
室町時代の歌謡集『閑吟集(かんぎんしゅう)』(1518年成立、編者未詳)には、「ならぬあだ花、まっしろに見えて、うき中垣の、夕顔や」という歌が出てきます。白く目をひく夕顔の花と「ならぬあだ花」という言い方が重なり、美しさと実りのなさを取り合わせる表現が、中世の歌謡の中にも現れています。
一方で、「徒花」には、咲いてもすぐ散るはかない花、季節はずれに咲く花などの意味もあります。けれども「徒花に実は生らぬ」では、これらのうち、とくに「咲いても実を結ばない花」から「実質や成果を伴わない物事」へ移る意味が中心になります。
「無駄花/徒花」は、咲くだけで実を結ばない花や、雌雄異花の植物の雄花をいうこともあり、はなばなしい行動が成果につながらなかった場合のたとえにも用いられます。そこから、このことわざは、見た目の美しさや勢いだけでは価値ある結果にならないという、生活上の戒めとして分かりやすく定着したと考えられます。
現在の使い方では、花そのものを論じるより、派手な企画、立派な言葉、見栄えのよい準備などが、内容や実力を欠くと結果につながらないという場面で用います。花が咲くことと実が生ることを分けて考える古い語義が、見かけと実質を分けて評価する現在の意味へ自然につながっています。
「徒花に実は生らぬ」の使い方




「徒花に実は生らぬ」の例文
- 豪華な包装でも中身の菓子が粗末なら、徒花に実は生らぬ。
- 派手な広告ばかりで商品が使いにくければ、徒花に実は生らぬ。
- 会議資料の見た目を整えても、調査不足なら徒花に実は生らぬ。
- 練習をしないまま衣装だけそろえても、舞台では徒花に実は生らぬ。
- 立派な目標を掲げるだけで実行しなければ、徒花に実は生らぬ。
- 友人への謝罪も言葉だけで態度が変わらなければ、徒花に実は生らぬ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・現代言語研究会編『故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・源順『和名類聚抄』934年ごろ。
・『閑吟集』1518年。
・『爾雅』
・HarperCollins Publishers『Collins Easy Learning Idioms Dictionary』。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』。























