『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』講談社より出版。詳細はコチラ!

【朝に夕べを謀らず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

朝に夕べを謀らず

【故事成語】
朝に夕べを謀らず

【読み方】
あしたにゆうべをはからず

【意味】
事態が差し迫って、先のことを考える余裕がないこと。朝のうちに、その日の夕方のことさえ考えられないほど切迫している状態を表す。

ことわざ博士
この故事成語は、先を見通して計画しないというより、目の前の危機に追われて計画を立てるゆとりがない状態を表すよ。
助手ねこ
病気、災害、資金繰り、急な混乱など、すぐ先の見通しも立てにくい場面に用いるニャン。

【英語】
・taking things as they come because one is too busy to plan ahead(忙しさや切迫で先を考えられず、目先の成り行きに応じる)
・dealing with things without thinking ahead(先の見通しを立てず、目の前のことだけに対応する)

【類義語】
・朝に夕べを慮らず(あさにゆうべをおもんぱからず)

対義語
・備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし)
・転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)

【スポンサーリンク】

「朝に夕べを謀らず」の故事

故事成語を深掘り

「朝に夕べを謀らず」は、中国古典の『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に出てくる「朝不謀夕」という言い方に基づく故事成語です。『春秋左氏伝』は、『春秋』の記事を、史実や史話をまじえて詳しく語る古典として伝わってきました。

『春秋』は、魯(ろ)の隠公元年から哀公十四年までの出来事を年代順にしるした古い歴史書です。その記事を補う書物として、公羊伝(くようでん)・穀梁伝(こくりょうでん)・左氏伝(さしでん)の三つが生まれ、その一つが『春秋左氏伝』です。

この故事成語のもとになる場面は、『春秋左氏伝』昭公元年にあります。晋(しん)の有力者である趙孟(ちょうもう)が鄭(てい)に入り、その帰りに、周の王が劉定公(りゅうていこう)をつかわして趙孟をねぎらわせる場面です。

劉定公は、古代の禹(う)が治水によって人々を救った功績を引き合いに出し、趙孟にも遠くまで人々を守る大きな働きをしてほしいと勧めます。これは、ただ身近な務めを果たすだけでなく、国や民の将来まで考えるように促す言葉です。

それに対して趙孟は、自分は罪を恐れるだけで、遠い先のことまで気にかける余裕はないと答えます。その返答の中に「吾儕偷食、朝不謀夕、何其長也」という言葉が出てきます。

この言葉は、「自分たちはその日をしのいで食べているだけで、朝に夕方のことまで計画できない。どうして長い先のことまで考えられようか」という意味にほどけます。ここでの「朝不謀夕」は、のんびりして先を考えない態度ではなく、差し迫った不安の中で、すぐ先の見通しさえ立たない状態を表しています。

さらに、この場面では劉定公が帰ってから、趙孟の言葉を周王に伝えています。晋の重い立場にある人物が、自分を召し使いのように低く見て「朝不謀夕」と言ったことを、国や人々を見捨てる姿勢として重く受け止めています。

このため、この故事成語には、単に「計画性がない」という軽い意味だけではなく、責任ある立場の人が将来を考えられないほど追い詰められている、という切迫感が含まれます。目の前のことだけで精いっぱいになり、夕方という近い未来さえ考えられない状態が、言葉の中心にあります。

漢文の「朝不謀夕」は、日本語では「朝に夕べを謀らず」と読み下されました。「朝」はここでは「あした」と読み、朝の意味です。「夕べ」は夕方を指し、「謀る」は、先のことを考え、計画する意味で用いられています。

後には、同じ発想を表す近い形として「朝に夕べを慮らず」も用いられました。「謀る」が計画することに重きを置くのに対し、「慮る」は先を思いめぐらすことに重きを置く言い方ですが、どちらも、切迫してすぐ先のことまで考える余裕がない状態を表します。

現在の日本語では、生活、仕事、社会の動きなどが急に苦しくなり、目前の対応だけで手いっぱいになる場面に用いられます。もとの故事にある「朝から夕方までの短い時間さえ見通せない」という感覚が、今の「先を考える余裕がない」という意味につながっています。

「朝に夕べを謀らず」の使い方

健太
台風で学校の避難所がいっぱいになって、先生たちも受付や毛布の準備で走り回っているね。
ともこ
うん。明日の予定どころか、今夜の寝る場所をどう分けるかで精いっぱいみたい!
健太
こういう時は、まさに朝に夕べを謀らずだね。夕方のことさえ決められないほど、状況が変わっているよ。
ともこ
だからこそ、わたしたちは指示をよく聞いて、水や荷物を静かに運ぶ手伝いをしよう。
【スポンサーリンク】

「朝に夕べを謀らず」の例文

例文
  • 地震のあと、町の復旧作業は朝に夕べを謀らずの状態で、まず避難者の安全確認が急がれた。
  • 急に資金が足りなくなった会社は、朝に夕べを謀らずとなり、来月の計画より今日の支払いを優先した。
  • 大雪で交通が止まり、駅員たちは朝に夕べを謀らずの忙しさで、帰宅できない乗客の案内に追われた。
  • 祖父の容体が急変し、家族は朝に夕べを謀らずで、病院からの連絡を待ちながら必要な荷物を整えた。
  • 大会の会場で停電が起こり、運営側は朝に夕べを謀らずとなって、照明の復旧と観客の誘導に全力を注いだ。
  • 水道管が破裂した地域では、住民も役所も朝に夕べを謀らずで、飲み水の確保を最優先に動いた。

主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『春秋左氏伝』昭公元年。
・Electronic Dictionary Research and Development Group『JMdict』。





『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』(講談社)発売中♪

マンガでわかる ことわざ図鑑

◆試験に出ることわざを網羅
ことわざは小学、中学、高校、大学、さらに就職試験の問題になっています。ことわざの試験対策としてもオススメの一冊。

◆マンガで楽しみながらことわざを知る! 憶える!
本書では、マンガで楽しくわかりやすくことわざを解説し、記憶に定着させます。