【ことわざ】
朝の一時は晩の二時に当たる
【読み方】
あさのひとときはばんのふたときにあたる
【意味】
朝は仕事がはかどるため、朝の短い時間は、晩の長い時間に匹敵するほど価値があるということ。早く起きて、朝のうちに働いたり勉強したりする大切さをいう。


【英語】
・The early bird catches the worm.(早く行動する人が有利になる)
【類義語】
・朝起き千両、夜起き百両(あさおきせんりょう、よおきひゃくりょう)
・朝起きは三文の徳(あさおきはさんもんのとく)
・朝起きは七つの徳(あさおきはななつのとく)
【対義語】
・宵っ張りの朝寝坊(よいっぱりのあさねぼう)
「朝の一時は晩の二時に当たる」の語源・由来
このことわざの中心にあるのは、「一時」を昔の時間の単位としてとらえる考え方です。「一時」は「ひととき」と読み、昔の時間区分では、今のおよそ二時間に当たる意味を持ちます。
古い日本語では、「一時」は、短い時間を表す言葉としても、時間の区切りを表す言葉としても使われてきました。『古今和歌集(こきんわかしゅう)』(905〜914年成立、平安時代前期)には「ひと時」という形の用例があり、短い間という意味で使われています。
一方で、「いっとき」と読む場合には、昔の時間区分で一日の十二分の一を指す用法があります。『平家物語(へいけものがたり)』(13世紀前半成立、鎌倉時代)の用例にも、時間の長さを表す「一時」が出てきます。
このように、「一時」は、日常の短い時間を表す言葉であると同時に、昔の時刻制度と結びついた言葉でもあります。奈良・平安時代の定時法では二時間ほどを指し、鎌倉時代以降の不定時法では、季節や昼夜の長さによって実際の長さに違いが出ました。
「朝の一時は晩の二時に当たる」では、この「一時」を朝の短い作業時間として用いています。「二時」はその倍の時間を指し、ことわざ全体では、朝の一時が晩の二時、つまり倍の時間に匹敵するという形で述べています。
ここでの「当たる」は、同じ価値を持つ、相当するという意味で働いています。つまり、朝に集中して働く二時間ほどの仕事が、晩に四時間ほどかけてする仕事に見合うという考え方です。
ただし、このことわざは、時間を数学のように厳密に測るための言葉ではありません。朝のほうが仕事や勉強に取りかかりやすく、物事が進みやすいという経験を、「一時」と「二時」の対比で強く言い表したものです。
同じ考え方は、「朝起きは三文の徳」にも表れています。こちらは、早起きをすれば少しでも利益があるという意味で、朝に早く動くことをよいこととしてとらえる言い方です。
また、「朝起き千両、夜起き百両」も、朝に起きて働くことの価値を高く見る表現です。「朝の一時は晩の二時に当たる」は、この系統の中でも、朝と晩の仕事の能率を時間の長さで比べる点に特色があります。
反対に、「宵っ張りの朝寝坊」は、夜遅くまで起きていて、朝は遅くまで寝ていることを表します。朝の時間を大切にするこのことわざとは、生活の向きが反対になります。
現在では、農作業や家事だけでなく、勉強、読書、仕事の準備などにも用いることができます。夜になって疲れてから無理に進めるより、朝のうちに大切なことへ取りかかるほうがよい、という教えとして受け取ると分かりやすいです。
したがって、このことわざは、早起きそのものをほめるだけの言葉ではありません。朝の時間を軽く見ず、頭や体が動きやすいうちに大事な仕事を進める知恵を伝える言葉です。
「朝の一時は晩の二時に当たる」の使い方




「朝の一時は晩の二時に当たる」の例文
- 朝の一時は晩の二時に当たるというから、試験前の暗記は夜更かしせず、翌朝に集中して進めた。
- 母は、朝の一時は晩の二時に当たると言って、休日の掃除を午前中に済ませた。
- 朝の一時は晩の二時に当たると考え、発表資料の最終確認は疲れた夜ではなく、登校前に行った。
- 祖父は、畑仕事では朝の一時は晩の二時に当たると言い、涼しいうちに草取りを始めた。
- 旅行の荷造りを前夜にあわててするより、朝の一時は晩の二時に当たると思って、早起きして落ち着いて準備した。
- 新しい企画書は、朝の一時は晩の二時に当たると判断し、退社前に無理をせず、翌朝の静かな時間に書き上げた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・現代言語研究会編『故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press。























