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【仰いで天に愧じず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語)

仰いで天に愧じず

【故事成語】
仰いで天に愧じず

【読み方】
あおいでてんにはじず

【意味】
自分の心や行いを省みても、少しもやましいところがないこと。

ことわざ博士
仰いで天に愧じずは、天に向かっても恥ずべきところがないほど、公明正大であることをいうんだよ。
助手ねこ
人目の有無にかかわらず、自分の行いを正しいと信じて胸を張れる場面に用いるニャン。

【類義語】
・俯仰天地に愧じず(ふぎょうてんちにはじず)

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「仰いで天に愧じず」の故事

故事成語を深掘り

この言葉は、中国・戦国時代の思想家である孟子(もうし)の教えを伝える『孟子』(紀元前4世紀後半)の「尽心上(じんしんじょう)」に基づきます。『孟子』は、孟子の言行や思想を伝える七篇の書物で、のちに四書の一つとして重んじられました。

「尽心上」では、孟子が、人格を磨いた人である君子(くんし)には三つの楽しみがあると語っています。そのうち、第二の楽しみとして、「仰不愧於天、俯不怍於人、二樂也」とあり、日本語では「仰いで天に愧じず、俯して人に怍じざるは、二の楽しみなり」と読まれます。

第一の楽しみは、父母がそろって健在で、兄弟にわざわいがないことです。第三の楽しみは、天下のすぐれた人材を得て教育することであり、孟子は、天下の王になることを三つの楽しみの中には含めませんでした。

つまり、孟子が大切にした第二の楽しみは、地位や名声を得ることではなく、自分の心と行いに後ろめたいところがないことでした。「仰いで天に愧じず」は、この一節の前半を取り出し、天を見上げても恥じるところのない、潔白で正しい生き方を表す言葉となったものです。

原文で「仰いで天に愧じず」と対になるのは、「俯して人に怍じず」です。「天」に対しても「人」に対しても恥じるところがないという組み合わせによって、自分だけが知る心の内にも、他人に向き合う行いにも、やましさがないことを表しています。

一方、日本語では、「俯して地に愧じず」と続ける形や、「俯仰天地に愧じず」という形も用いられるようになりました。原文の「人」が「地」と対応する形に変わっても、天にも地にも恥じない、すなわち、心や行動に少しもやましさがないという意味の芯は保たれています。

『孟子』の「尽心上」は、日本でも古くから学ばれてきました。『孟子抄(もうししょう)』巻第十三(1532年・室町時代後期、清原宣賢講述)には「尽心章句」上下が収められており、この言葉のもととなった章が、日本で読まれ、講じられていたことを伝えています。

近代の日本語では、同じ意味をもつ「俯仰天地に愧じず」という形が、文章の中で用いられています。『信仰之理由』(1889年・明治時代、小崎弘道著)には「俯仰天地に恥ぢず」とあり、『予が半生の懺悔』(1908年・明治時代、二葉亭四迷著)には「俯仰天地に愧じざる生活」とあります。

このように、「仰いで天に愧じず」は、『孟子』の君子の三楽の一節から生まれ、日本語の中で、だれに見られていなくても正しく行動し、自分の良心に恥じないあり方を表す故事成語として受け継がれてきました。

「仰いで天に愧じず」の使い方

ともこ
健太くん、さっき先生に職員室へ呼ばれていたけれど、何か悪いことでもしちゃったの?
健太
ううん、図書室の本を戻し忘れている人がいないか、確認を頼まれただけだよ。
ともこ
よかった、てっきり掃除をサボった犯人に疑われているのかと思って心配しちゃった!
健太
僕はいつだって掃除の手を抜いていないし、仰いで天に愧じずの気持ちで堂々としているから大丈夫さ。
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「仰いで天に愧じず」の例文

例文
  • 彼は不正な誘いをきっぱり断り、仰いで天に愧じず生きる道を選んだ。
  • 家族に疑われても、母は仰いで天に愧じずと言えるほど誠実に家計を守っていた。
  • 選挙に携わる者は、仰いで天に愧じずという心で一票一票を扱わなければならない。
  • 失敗の責任を隠さず引き受けた彼の態度には、仰いで天に愧じずという強さがあった。
  • 長年、町のために私利私欲なく働いた祖父は、仰いで天に愧じずその職を退いた。
  • 裁判で無実を訴える彼は、仰いで天に愧じず、自分は何も隠していないと言い切った。

主な参考文献
・小学館『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・清原宣賢講述『孟子抄 巻第十三(尽心章句上下)』1532年。
・『孟子』。





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