【空き樽は音が高い】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

空樽は音が高い

【ことわざ】
空き樽は音が高い

【読み方】
あきだるはおとがたかい

【意味】
中身のない軽薄な人ほど、得意げによくしゃべることのたとえ。

ことわざ博士
空き樽は音が高いは、空の樽がたたくと高く響く音を立てることを、知識や思慮の乏しい人の言動に重ねた言い方なんだよ。
助手ねこ
十分に分かっていないことを大声で語ったり、自分を大きく見せようとして話し続けたりする場面に用いるニャン。

【英語】
・Empty vessels make the most sound.(空の入れ物がいちばん大きな音を立てる)

【類義語】
・浅瀬に仇波(あさせにあだなみ)

【対義語】
・能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす)

「空き樽は音が高い」の語源・由来

ことわざを深掘り

このことわざの土台にあるのは、中に何も入っていない樽をたたくと、よく響く音が出るという身近なたとえです。樽の「空」は、人の知識や思慮、実力の乏しさに重ねられ、内容の伴わない人ほど騒がしく語るという戒めを表すようになっています。

「空樽(あきだる)」という言葉は、ことわざとして使われる前から、中に何も入っていない樽を指す言葉でした。17世紀前半の『四河入海(しかにゅうかい)』には、「我が才尽て、ある事は何もない。あき罍を傾たが如きぞ」とあり、才能が尽きて何も残っていないことを、空の器を傾ける姿にたとえています。「罍(らい)」は、酒などを入れる器を指します。

江戸時代中期の浄瑠璃『鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)』(1717年、近松門左衛門作)には、「四斗入の明樽(アキダル)下人に持せ」とあります。ここでの「明樽」は、物を入れる容器としての空の樽を指しており、「あきだる」が暮らしの中で実際に用いられていた言葉であることを示しています。

この空の樽が、人の話しぶりを評することわざとして日本語に現れた用例が、福沢諭吉の『福翁百話(ふくおうひゃくわ)』(1897年・明治時代、時事新報社刊)第五十四話です。同書には、「西洋の諺に空樽の音は高しと云ふことあり」と記されています。

この一節は、「空樽の音は高し」という言い方が、日本で古くから生まれた逸話にもとづくものではなく、西洋のことわざを受け入れた表現であることを示しています。空の樽のよく響く音を、内容の乏しい人の多弁さにたとえる考え方が、明治期の日本語に移されたのです。

もとになった英語のことわざは、Empty vessels make the most sound. です。英語では、15世紀前半のジョン・リドゲートの作品に、空の器は満ちた器よりも大きな音を立てるという趣旨の表現が記されています。

16世紀には、ウィリアム・ボールドウィンの『A Treatise of Moral Philosophy』(1547年)で、空の器ほど大きな音を立てることと、知恵の少ない人ほどよくしゃべることとが、はっきりと結び付けられています。また、ウィリアム・シェイクスピアの『Henry V』(1599年)にも、空の器が大きな音を立てるという言い回しが用いられています。

17世紀には、ジョン・レイ編『A Collection of English Proverbs』(1678年)に、Empty vessels make the greatest sound. が収められています。そこでは、実際の価値が乏しい人ほど自慢しがちで、言葉数も多いという意味が添えられており、器の音のたとえが、人の軽薄な言動を戒めることわざとして定着していたことが分かります。

さらに、18世紀初めの『The Tatler』にも、深い水は静かであるのに対し、空の器は大きな音を立てるという対比が出てきます。長く英語圏で受け継がれてきたこのたとえが、明治期の日本では、「空樽の音は高し」や「空樽は音が高い」という簡潔な形で受け止められました。

したがって、「空き樽は音が高い」は、単に話好きな人を責める言葉ではありません。よく知らないことまで得意げに語り、言葉の勢いで自分を大きく見せようとする態度を、空の樽の響きにたとえて戒めることわざです。

「空き樽は音が高い」の使い方

健太
隣のクラスの男の子がね、まだ習っていない難しい漢字をたくさん知っているって大威張りで話していたんだ。
ともこ
そうなの?でも、そういう人に限って、実際のテストの点数はあんまり良くなかったりすることが多いよね。
健太
うん、実は簡単な漢字の読み方を間違えていて、まさに空き樽は音が高いって言葉がぴったりだと思ったよ!
ともこ
ふふ、本当にその通りだね。私たちは周りに威張ったりしないで、これからもコツコツ静かに勉強を頑張ろう。

「空き樽は音が高い」の例文

例文
  • 知識もないのに専門家のように語る彼の態度は、まさに空き樽は音が高いである。
  • 空き樽は音が高いというように、十分な準備もせず自慢ばかりする人は信頼されにくい。
  • 会議で根拠のない意見を声高に繰り返す上司を見て、空き樽は音が高いとはこのことだと思った。
  • 兄は調べてもいない噂を得意げに話し、母から空き樽は音が高いとたしなめられた。
  • 空き樽は音が高いという戒めを忘れず、彼女は確かな資料をそろえてから説明した。
  • 実力よりも自慢話ばかりが目立つ選手に対して、空き樽は音が高いという批判が向けられた。

主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・Jennifer Speake編『The Oxford Dictionary of Proverbs 第6版』Oxford University Press.2015年。
・福沢諭吉『福翁百話』時事新報社、1897年。
・John Ray, A Collection of English Proverbs, Cambridge: Printed by John Hayes for W. Morden.1678.


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