【ことわざ】
空き樽は音が高い
【読み方】
あきだるはおとがたかい
【意味】
知識や中身の乏しい者ほど、得意げによくしゃべることのたとえ。


【英語】
・Empty vessels make the most sound.(空の入れ物ほど大きな音を立てる)
・Empty vessels make the greatest sound.(中身のない者ほどよく騒ぐ)
・Empty vessels make the most noise.(中身のない者ほどいちばん騒がしい)
【類義語】
・浅瀬に仇波(あさせにあだなみ)
・能無し犬の高吠え(のうなしいぬのたかぼえ)
・吠える犬は噛みつかぬ(ほえるいぬはかみつかぬ)
【対義語】
・能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす)
・深い川は静かに流れる(ふかいかわはしずかにながれる)
・雀の千声鶴の一声(すずめのせんこえつるのひとこえ)
「空き樽は音が高い」の語源・由来
このことわざは、からの樽をたたくと、よく詰まった樽よりも甲高く響きやすい、という身近な現象を土台にした言い方です。見た目は大きく音がしても、中に入っているものは少ないというところから、人の言動にもたとえるようになりました。
日本語としては古い和歌や軍記からそのまま出てきた形ではなく、今の言い回しが広まったのは、明治時代に英語のことわざを訳した流れによるとされています。つまり、日本で長く言い継がれたというより、外国のことばをうまく日本語に置き換えた表現として定着したものです。
もとになった考え方は、英語圏ではもっと早くから知られていました。英語の古い例としては、1579年(安土桃山時代)の『Euphues』に、空の器のほうが満ちた樽より大きな音を立てる、という趣旨の文が確かめられます。
そこでは、からの器と中身のある樽とを並べて比べています。大事なのは、音の大きさと中身の重みが反対になっている、という対比です。
その後もこの考え方は、英語のことわざ集や随筆の中でくり返し語られました。1710年(宝永7年・江戸時代中期)の英語雑誌『タトラー』でも、深い水は静かで、空の器は大きな音を立てるという組み合わせで紹介されています。
こうして英語では、よくしゃべることと中身の薄さを結びつける言い方が、長いあいだ受け継がれてきました。日本語の「空き樽は音が高い」は、その比喩を日本語として分かりやすく言い直した形だと考えられます。
日本語では、「空樽は音が高い」という書き方も広く行われます。さらに、意味の近い別の形として「空の樽ほど音が大きい」という言い回しもあり、どれも、からの器ほど騒がしく響くという同じ発想を表しています。
ここでいう「音が高い」は、ただ声が高いという意味ではありません。軽くて薄いものほど、たたいたときに軽い高い音を立てる、という感覚を借りて、言葉ばかり目立つ人をたとえているのです。
そのため、このことわざが向いているのは、よく知らないことを知ったふうに話したり、根拠がないのに自信たっぷりに言い切ったりする場面です。ただにぎやかな人や、明るく話す人を指すことばではありません。
似た方向の日本のことわざに「浅瀬に仇波」がありますが、こちらは浅いところほど波が立ち騒ぐというたとえです。空の樽も浅い瀬も、どちらも中身や深さの足りなさが騒がしさにあらわれる、という点で通じ合っています。
反対側には、「能ある鷹は爪を隠す」や「深い川は静かに流れる」があります。つまり、「空き樽は音が高い」は、ほんとうの実力や知恵はむやみに騒がず、薄いものほど音だけが目立つ、という見方を短く鋭く言い表したことわざなのです。
「空き樽は音が高い」の使い方




「空き樽は音が高い」の例文
- 調べもせずに歴史の出来事を言い切るのは、空き樽は音が高いというほかない。
- 会議で声ばかり大きく、数字の裏づけを一つも出せない発言は、空き樽は音が高いの典型だ。
- 料理をしたこともないのに台所で手順だけをえらそうに批評する姿は、空き樽は音が高いと思われやすい。
- 試合で結果を出していないのに作戦だけを大げさに語るのは、空き樽は音が高い。
- 事情をよく知らないまま町内のうわさを断定的に広める人に、空き樽は音が高いという目が向けられた。
- 読んでいない本まで知ったように感想を語ったため、空き樽は音が高いと言われてもしかたがなかった。























