【故事成語】
迹を滅せんと欲して雪中を走る
【読み方】
あとをめっせんとほっしてせっちゅうをはしる
【意味】
足跡を消そうとして雪の中を走り、かえって足跡を残すことから、目的と実際の行動が相反し、望む結果とは逆の結果を招くこと。


【英語】
・defeat the purpose(本来の目的をだめにする)
・shoot yourself in the foot(自分の行動で自分に不利な結果を招く)
【類義語】
・薪を抱きて火を救う(たきぎをいだきてひをすくう)
・火を以て火を救う(ひをもってひをすくう)
「迹を滅せんと欲して雪中を走る」の故事
この故事成語のもとになった表現は、中国・前漢の淮南王劉安が編ませた『淮南子(えなんじ)』にあります。『淮南子』は二十一編から成る論集で、老荘思想を中心に、儒家・法家などの考えも取り入れた前漢期の重要な書物です。
『淮南子』の「説山訓(せつざんくん)」には、「欲滅跡而走雪中,拯溺者而欲無濡,是非所行而行所非」とあります。これは、足跡を消したいのに雪の中を走り、溺れた人を助けたいのに自分は濡れたくない、という矛盾した行いを並べた一節です。
雪の上では、歩いても走っても足跡が残ります。足跡を消すことが目的なら、雪の中を走るという方法は、その目的をかなえるどころか、いっそう足跡を増やす行動になります。
同じ一節に出てくる「拯溺者而欲無濡」も、意味を考えるうえで大切です。水に落ちた人を助けるには、自分も水に入って濡れることを避けにくいのに、濡れないことだけを望めば、助けるという目的と行動が合わなくなります。
この二つのたとえのあとには、「是非所行而行所非」と続きます。これは、行うべきでないことを行い、行うべきことに合わない行動をしている、という趣旨を表しており、目的と手段の食い違いをはっきり示しています。
「迹」は、足あとや物事のあとを表す字で、「跡」と通用します。そのため、もとの漢文では「跡」の字で書かれた形が伝わり、日本語の見出しでは古い漢字の「迹」を用いた形も残っています。
日本語では、漢文の「欲滅跡而走雪中」を訓読した形として、「迹を滅せんと欲して雪中を走る」という長い言い方になりました。もとは雪に残る足跡という具体的なたとえですが、後には、隠そうとしてかえって証拠を増やすこと、または目的をかなえるつもりで反対の結果を生むことを表す故事成語として受け取られています。
この故事成語の中心は、「何をしたいのか」と「そのために選ぶ方法が合っているのか」を考えることにあります。言い訳で失敗を隠そうとして不自然さが目立ったり、問題を解決しようとして問題を大きくしたりするなら、それは雪の中を走って足跡を消そうとするのと同じだといえます。
「迹を滅せんと欲して雪中を走る」の使い方




「迹を滅せんと欲して雪中を走る」の例文
- 宿題を忘れたことを隠すために友人のノートを写したため、迹を滅せんと欲して雪中を走る結果になった。
- 連絡の遅れをごまかそうとして作り話を重ねるのは、迹を滅せんと欲して雪中を走るような行為だ。
- 会計の小さな誤りを隠そうとして数字だけを直し、迹を滅せんと欲して雪中を走る形で不自然な記録を残した。
- 家族に心配をかけまいと失敗を隠したが、話のつじつまが合わず、迹を滅せんと欲して雪中を走ることになった。
- 店の評判を守ろうとして苦情を無視すれば、迹を滅せんと欲して雪中を走るように信用を失う。
- 遅刻の理由をごまかすために別のうそをつき、迹を滅せんと欲して雪中を走るほど問題を大きくした。
主な参考文献
・劉安編『淮南子』前漢、前2世紀。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・ブリタニカ・ジャパン編『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』Cambridge University Press。























