【故事成語】
晏子の御
【読み方】
あんしのぎょ
【意味】
他人の権威によりかかって得意になること。自分の実力ではなく、上にいる人や強い立場の人の威光を借りて誇らしげにふるまうこと。


【英語】
・bask in reflected glory(他人の成功や名誉に結びついて、自分も立派になったように感じる)
【類義語】
・虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)
【対義語】
・独立独歩(どくりつどっぽ)
「晏子の御」の故事
「晏子の御」は、中国春秋時代の斉(せい)の宰相、晏嬰(あんえい)にまつわる話から生まれた故事成語です。晏嬰は字を平仲といい、斉の霊公・荘公・景公の三代に仕えた政治家で、尊んで晏子と呼ばれました。
もとの話は、前漢の司馬遷がまとめた歴史書『史記(しき)』の「管晏列伝(かんあんれつでん)」に出てきます。『史記』は本紀・表・書・世家・列伝から成る紀伝体の史書で、その列伝の一つに、管仲と晏嬰の事績がまとめられています。
『史記』では、晏子が斉の宰相であったころ、外出する晏子の馬車を、その御者の妻が門のすき間からのぞいたとあります。御者は宰相の馬車をあずかり、大蓋(たいがい:大きな日よけ)を支え、駟馬(しば:四頭立ての馬)にむち打ち、「意気揚々」としてたいへん得意げでした。
けれども、帰宅した御者に対して、妻は離縁を願い出ます。理由を問われた妻は、晏子は背が六尺にも満たないのに斉の宰相として諸侯に名を知られ、しかも深く思慮していつも自分を低くしている一方、あなたは八尺の大男でありながら人の御者にすぎず、それで満足して得意になっている、と夫をきびしく戒めました。
この言葉を聞いた御者は、自分の姿を恥じて、態度をひかえめに改めました。晏子がその変化を不思議に思ってたずねると、御者は妻との出来事を正直に話し、晏子はその人物を認めて大夫(たいふ)に推薦したと記されています。
この故事で大切なのは、御者が「宰相を乗せる人」であっただけなのに、まるで自分まで偉くなったかのように得意になっていた点です。そこから「晏子の御」は、他人の権威によりかかって得意になる人や、そのような態度を戒める言葉として用いられるようになりました。
日本語では、「晏子の御者」という形でも用いられました。明治時代の小説『当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)』(1885〜1886年、坪内逍遙作)には、「晏子の御者めく官員も」という用例があり、近代の文章の中でも、他人の威光を借りて得意そうにふるまう人物を表す言い方として使われています。
「晏子の御」の使い方




「晏子の御」の例文
- 校長先生と親しいことを理由に特別な態度をとるのは、晏子の御と言われてもしかたがない。
- 有名な先輩と同じ部にいるだけで威張る彼の姿は、まさに晏子の御だった。
- 父の会社で働いているからといって得意げにするのは、晏子の御にすぎない。
- 代表選手の友人であることを自慢して周囲を見下す態度は、晏子の御に近い。
- 上司の名前を出して無理を通そうとする彼は、職場で晏子の御と見られていた。
- 晏子の御にならないよう、他人の肩書ではなく自分の努力で評価されたい。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・司馬遷『史記』前漢。
・坪内逍遙『当世書生気質』1885〜1886年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press.























