【ことわざ】
秋魳は嫁に食わすな
【読み方】
あきかますはよめにくわすな
【意味】
秋のかますはとくにうまいので、嫁には食べさせるなということ。転じて、旬のうまい物を人にやりたくないほど惜しむ気持ちをいう。


【英語】
・Don’t give away your best stuff.(いちばんよい物を人に渡さない)
【類義語】
・秋茄子は嫁に食わすな(あきなすびはよめにくわすな)
・秋鯖は嫁に食わすな(あきさばはよめにくわすな)
・夏蛸嫁に食わすな(なつだこよめにくわすな)
【対義語】
・秋茄子嫁に食わせよ(あきなすびよめにくわせよ)
・鯒の頭は嫁に食わせよ(こちのあたまはよめにくわせよ)
「秋魳は嫁に食わすな」の語源・由来
「魳」は、かますのことです。ことわざ全体では、秋のかますがそれほどおいしいので、嫁には食べさせたくないという気持ちを表しています。
このことばで大事なのは、「秋」がただの季節名ではないことです。かますは秋に旬を迎える魚として知られ、9月から10月ごろ、また秋から初冬にかけて脂がのって味がよくなると伝えられています。
そのため、秋のかますは、昔の人にとって「今いちばんうまい魚」の代表の一つでした。ことわざの前半だけで、旬のごちそうを思い浮かべられる言い方になっていたのです。
ただし、「嫁に食わすな」という形そのものは、かますだけで生まれたわけではなさそうです。古くから広く知られてきたのは「秋茄子は嫁に食わすな」で、その説明の中で、同じ形のことばとして秋鯖や秋かますが並べられています。
この型の古い土台としてよく引かれるのが、鎌倉時代後期の『夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)』に入る秋茄子の歌です。そこには「よめにはくれじ」という言い方があり、秋のうまい食べ物を嫁にやりたくないという形が、かなり古い時代から語られていたことが分かります。
江戸時代になると、「秋茄子は嫁に食わすな」は、よく知られたことわざとして扱われるようになります。『世間姑気質(せけんしゅうとめかたぎ)』が出典として挙げられていることからも、家の中の人間関係をからめて語る言い方が、生活のことばとして広まっていた様子がうかがえます。
そう考えると、「秋魳は嫁に食わすな」は、この有名な型に、その土地でとくに珍重された食べ物を入れて広がった言い方と見るのがいちばん無理のない考え方です。実際、ことわざ集や解説では、秋かます、秋鯖、五月蕨などが並んで伝えられています。
秋茄子には、体を冷やすから大事な嫁に食べさせないという別の読み方も後から加わりました。けれども、秋かますの説明では、秋のかますがうまいから食べさせたくない、という意味が前に出ることが多く、ことばの調子もそちらに寄っています。
また、このことばには、昔の家制度の空気もはっきり残っています。研究では、女性の地位の低さを示すことわざの例として「秋かますは嫁に食わすな」が挙げられ、おいしい秋のかますは嫁には食べさせない、という受け取り方が示されています。
そのため、今このことばを読むときは、単に魚の味をほめることばとしてだけでなく、昔の暮らしや嫁姑の力関係を映したことばとしても受け取る必要があります。うまい物を惜しむ気持ちと、家の中のきびしい序列とが重なって、この言い回しになったのです。
まとめると、「秋魳は嫁に食わすな」は、秋のかますの味のよさを土台にしながら、「秋茄子は嫁に食わすな」と同じ型のことばとして広まった表現です。旬のごちそうを惜しむ気持ちを言い表す一方で、昔の家の考え方も伝えていることが、このことわざの大きな特徴です。
「秋魳は嫁に食わすな」の使い方




「秋魳は嫁に食わすな」の例文
- 給食の時間、先生が秋魳は嫁に食わすなというほど、かますは秋がうまい魚だと話した。
- 祖父は七輪で焼いたかますを見て、秋魳は嫁に食わすなという昔の言い回しを口にした。
- 魚屋の主人は、今朝のかますは脂がよいから秋魳は嫁に食わすなだと笑った。
- 漁師町では、秋のかますの味をほめることばとして秋魳は嫁に食わすなが伝わっている。
- 友人は干物を独り占めしたがって、まるで秋魳は嫁に食わすなの気分だと言った。























