【ことわざ】
秋魳は嫁に食わすな
【読み方】
あきかますはよめにくわすな
【意味】
秋のかますはとりわけ味がよいので、嫁には食べさせるなということ。旬の美味を惜しむ気持ちと、嫁を冷たく扱った昔の家の考え方を表す。


【類義語】
・秋茄子嫁に食わすな(あきなすびよめにくわすな)
・秋鯖嫁に食わすな(あきさばよめにくわすな)
「秋魳は嫁に食わすな」の語源・由来
「魳(かます)」は、細長い体と大きな口をもつ海の魚であり、「かます」には「魳」「魣」という表記があります。ことわざの「秋魳」は、初秋にとれるかますを指し、とくに味がよいものとして言い表す言葉です。
食用のかますとしてよく知られるアカカマスは、白身で淡泊な味わいをもち、干物や塩焼き、煮魚にしても風味があります。旬は秋から冬にかけてであり、「秋魳」という言い方の背景には、秋のかますを季節のごちそうとして喜ぶ暮らしがあります。
「秋魳は嫁に食わすな」は、「秋茄子嫁に食わすな」と同じ形をもつことわざです。「秋茄子嫁に食わすな」は、味のよい秋なすを嫁には食べさせまいとする言い方で、秋鯖や秋カマスについても、「嫁に食わすな」と言う形が伝わっています。
この言い回しの型を示す古い用例は、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・江戸時代前期、松江重頼編)にあります。そこには、「あきなすびよめにくはすな、よめしうとの中よきはもっけのふしぎ」とあり、秋なすを嫁に食べさせないという句に、嫁と姑(しゅうとめ)の仲がよいのは珍しいという言葉が続いています。
この古い用例では、味のよい秋の食べ物を惜しむことと、嫁を遠ざけようとする姑の態度とが結びついています。後に、その「秋の味覚を嫁に食わすな」という形が、なすだけでなく、秋に味のよくなる鯖やかますにも重ねられ、「秋魳は嫁に食わすな」という類句として用いられるようになりました。
「秋茄子嫁に食わすな」には、秋なすは体を冷やすので嫁をいたわって食べさせない、または、種子の少ない実を嫁に食べさせないようにした、という解釈もあります。しかし、これらは言い回しが定着した後に添えられた説明であり、秋魳の形では、秋のかますのうまさを惜しんで嫁に与えまいとする意味が、より直接に表れています。
このように、「秋魳は嫁に食わすな」は、秋のかますが格別においしいことを強く言い表すとともに、嫁を低く扱った昔の家族観を映すことわざです。現在では、だれかを食卓から外すための言葉ではなく、旬の味を強調する古い言い回しとして、その背景とともに理解したい表現です。
「秋魳は嫁に食わすな」の使い方




「秋魳は嫁に食わすな」の例文
- 鮮魚店に並んだ立派なかますを見て、祖父は秋魳は嫁に食わすなという言葉を思い出した。
- 焼きたてのかますを味わった父は、秋魳は嫁に食わすなも納得の味だと言った。
- 郷土の食文化を調べる授業で、彼女は秋魳は嫁に食わすなということわざを取り上げた。
- 料理屋の品書きには、秋魳は嫁に食わすなと添えて、季節のかます料理が紹介されていた。
- 母は秋魳は嫁に食わすなと言いながらも、香ばしく焼いたかますを家族の皿に分けた。
- 秋の魚を扱った随筆の一節に、秋魳は嫁に食わすなという昔の言い回しが使われていた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・学研辞典編集部編『用例でわかる故事ことわざ辞典』学習研究社、2005年。
・海洋生物環境研究所『海の豆知識 Vol.37 魚のことわざ〈その35〉――カマス――』海洋生物環境研究所、2008年。
・松江重頼編『毛吹草』寛永15年序(1638年)。























