【慣用句】
危ない橋を渡る
【読み方】
あぶないはしをわたる
【意味】
危険な手段をとること。特に、危険だと分かっていながら、法律や規則に触れるような行為を行うこと。


【英語】
・play with fire(危険なことをする)
【類義語】
・剣の刃を渡る(つるぎのはをわたる)
・虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
【対義語】
・石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
「危ない橋を渡る」の語源・由来
「危ない橋を渡る」は、文字どおりには、今にも落ちそうな危険な橋を、それでも向こう側へ行くために渡ることを表します。そこから、危険を知りながら、あえて危ない方法を選ぶという意味へ広がりました。特に、法律や規則に触れるか触れないかの、危険すれすれの行動をいう場合によく使われます。
この表現の古い用例として、明治21年(1888年)初演の歌舞伎『月梅薫朧夜(つきとうめかおるおぼろよ)』が挙げられます。この作品は河竹黙阿弥の作で、東京・中村座で初演されました。国立劇場の収蔵資料にも、同じ演目の上演情報として、明治21年4月・中村座と記録されています。
『月梅薫朧夜』序幕には、「まあ女の体が抵当替りと思って、あぶねえ橋(ハシ)を渡(ワタ)らう」という形が出てきます。ここでは、危険な手段を承知で用いるという意味が、すでに現在の「危ない橋を渡る」にかなり近い形で使われています。橋そのものを渡る場面ではなく、人が危険な手段に踏みこむたとえとして働いている点が大切です。
その後、明治26年(1893年)の斎藤緑雨『売花翁』にも、「あぶない橋を渡ること」という形の用例が出てきます。この用例では、危険な行動をすることが、日常の言い回しとして分かる形で使われています。明治期の文章の中で、芝居のせりふだけに限らず、危険な手段を表す慣用句として広がっていたことがうかがえます。
表記については、「危ない橋を渡る」と書く形が一般的ですが、古い用例では話し言葉に合わせて「あぶねえ橋」と表されることがあります。また、意味の中心は「橋」そのものではなく、「安全な道ではなく、危険な手段を選ぶこと」にあります。そのため、現在では事業、交渉、金銭、規則違反に近い行動など、実際の橋とは関係のない場面で広く用いられます。
「危ない橋を渡る」は、勇気をたたえる言葉としてだけ使うと、意味がずれやすい表現です。大きな成果を得るために危険を冒すという面もありますが、無理な手段や不正に近い行為を含む場合が多いため、相手を心配したり、行動をいさめたりする文脈で使うと、意味がよく伝わります。
「危ない橋を渡る」の使い方




「危ない橋を渡る」の例文
- 会社の利益を増やすためとはいえ、規則を無視して危ない橋を渡るべきではない。
- 友人に頼まれても、うそをついてまで危ない橋を渡ることはできない。
- 父は、少し得をするために危ない橋を渡るくらいなら、時間をかけて正しい方法を選ぶと言った。
- その計画は成功すれば大きいが、証拠を隠すような危ない橋を渡る必要がある。
- 店の信用を守るため、店長は安すぎる仕入れ話で危ない橋を渡ることを避けた。
- 大会に勝ちたいからといって、反則ぎりぎりの作戦で危ない橋を渡るのはよくない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・野島寿三郎編『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』日外アソシエーツ、1990年。
・河竹黙阿弥『月梅薫朧夜』1888年。
・斎藤緑雨『売花翁』1893年。























