【ことわざ】
後の喧嘩先でする
【読み方】
あとのけんかさきでする
【意味】
後でもめごとが起きないように、言いにくいことも先にはっきり話し合い、議論して調整しておくこと。


【類義語】
・転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)
・備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし)
【対義語】
・後は野となれ山となれ(あとはのとなれやまとなれ)
「後の喧嘩先でする」の語源・由来
このことわざは、「後に起こりそうな喧嘩を、先にしておく」という逆説的な言い方で成り立っています。ここでいう「喧嘩」は、殴り合いや怒鳴り合いそのものではなく、意見・条件・役割などをめぐるもめごとを指します。「後の喧嘩を先にする」という形では、後でもめごとが起きないように、言いにくいこともはっきり口にして、議論し調整しておくことを表します。
この表現の中心には、「その場を丸くおさめること」と「あとで本当に納得できること」は同じではない、という生活上の知恵があります。最初に少し気まずい話し合いをしておけば、あとになって大きな不満や争いにふくらむことを防げます。そのため、「先に喧嘩する」といっても、人を責めたり争ったりするすすめではなく、まだ直せる段階で問題点を出し合うことを意味します。
現在使われる形には、「後の喧嘩を先にする」「後の喧嘩先でする」「後の喧嘩は先にする」などがあります。「を」「に」を補った形は意味を丁寧に示し、「後の喧嘩先でする」の形は、助詞を省いた歯切れのよい言い方として受け取れます。いずれも、将来のもめごとを避けるために、今のうちに話し合うという意味の芯は同じです。
このことわざは、家庭や友人関係だけでなく、仕事や契約(けいやく)の場面でも用いやすい表現です。たとえば、契約上のリスク分担や追加費用の扱いがあいまいだと、あとで合意が難しくなることがあります。そのため、条件や責任の範囲を契約時にできるだけ決めておく考え方は、このことわざの意味とよく重なります。
また、戦後に創業した企業の歩みを語る文章にも、「人を騙さず正々堂々と商売する」と並んで「後の喧嘩は先にする」という考えが出てきます。そこでは、誠実に商売するため、言いたいことは先に言い合う姿勢として説明されています。これは、このことわざが単なる用心の言葉ではなく、相手との関係を長く保つための率直さを重んじる表現であることをよく示しています。
つまり、「後の喧嘩先でする」は、争いを好む言葉ではありません。むしろ、後になって相手を責めたり、約束をこわしたりしないために、先に勇気をもって話し合うことをすすめることわざです。小さな気まずさを避けて大きなもめごとを招くより、最初にきちんと向き合うほうが、結果として人間関係を大切にすることにつながります。
「後の喧嘩先でする」の使い方




「後の喧嘩先でする」の例文
- 旅行の費用分担をあいまいにせず、後の喧嘩先でするつもりで出発前に決めておいた。
- 文化祭の出店では、売上の使い道について後の喧嘩先でする形で話し合った。
- 兄弟で祖父の家を片付ける前に、後の喧嘩先でするため、残す物と処分する物の基準を決めた。
- 新しい係を決めるときは、仕事の範囲について後の喧嘩先ですることが大切だ。
- 共同で店を始める二人は、利益の分け方を後の喧嘩先でする考えで細かく確認した。
- 友人同士で動画を作る前に、編集担当と投稿日を後の喧嘩先でするように決めておいた。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。























