【ことわざ】
余り茶に福あり
【読み方】
あまりちゃにふくあり
【意味】
人が残した物や、最後に余った物の中に、思いがけないよいことがあるというたとえ。


【類義語】
・余り物に福あり(あまりものにふくあり)
・残り物には福がある(のこりものにはふくがある)
・残り物に福あり(のこりものにふくあり)
【対義語】
・先んずれば人を制す(さきんずればひとをせいす)
・早いが勝ち(はやいがかち)
「余り茶に福あり」の語源・由来
「余り茶」とは、茶筒に使い残した茶、または茶碗に飲み残した茶を指す言葉です。もともとは、飲み物としての茶が残っている、または茶葉が使い残されているという具体的な意味から出たものです。
このことわざの古い形に、「余茶に福がある」があります。意味は、人が残した物に、かえって思いがけない利益があるというたとえで、「余り物に福あり」と同じ考えを表します。
古い用例として、『ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)』(1739年・江戸時代中期、文耕堂・三好松洛・浅田可啓・竹田小出雲・千前軒合作)に、「余り茶には福が有る、呑(のん)でお休みなされや」とあります。ここでは、残った茶を飲むようにすすめる言葉の中で、残り物にもよいことがあるという発想が、すでにことわざらしい形で使われています。
『ひらかな盛衰記』は、源平の物語世界を背景にした浄瑠璃で、元文4年、つまり1739年に刊行・上演された作品です。茶という日常的な物を使った表現が、浄瑠璃のせりふの中に出てくることで、この言い回しが江戸時代の人々にも分かりやすい生活感をもっていたことがうかがえます。
一方で、「余り物に福あり」という、より広い言い方も江戸時代に確認できます。浮世草子『傾城歌三味線』(1732年)には、「あまり物(モノ)には福(フク)があると申せば、ふせうながらももらふて下され」という用例があり、茶だけでなく、残った物全体に「福」を見る考えが広がっていたことが分かります。
この流れの中で、「余り茶に福あり」は、具体的な「余り茶」から出発しながら、ただ茶のことだけをいう表現ではなくなりました。人が先に選んだあとに残った物、最後まで余った物の中に、思いがけないよい物があるという意味へ広がったのです。
後には、「残り物には福がある」「余り物に福がある」のような言い方が広く使われるようになりました。これらは、順番が最後になった人を慰めたり、実際によい物が当たったときに喜びを表したりする言葉として使われます。
つまり、「余り茶に福あり」は、残った茶という身近な場面から生まれ、やがて残り物全般に思いがけない幸運を見いだすことわざとして受け止められるようになった表現です。先を争う気持ちを少しやわらげ、残った物にも目を向ける余裕を教えてくれる言葉といえます。
「余り茶に福あり」の使い方




「余り茶に福あり」の例文
- くじ引きで最後に残った券が一等だったので、余り茶に福ありとはこのことだ。
- 友人たちが選んだあとに残った席は、舞台全体がよく見え、まさに余り茶に福ありだった。
- 売れ残りの鉢植えを買って帰ったら美しい花が咲き、余り茶に福ありだと思った。
- 希望者が少なかった図書委員になったが、本の紹介文を書く楽しさを知り、余り茶に福ありだった。
- 最後に残った弁当を受け取ったら好きなおかずばかりで、余り茶に福ありと笑った。
- 急いで選ばずに待っていたら条件のよい部屋が残っていて、余り茶に福ありの結果になった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・文耕堂・三好松洛・浅田可啓・竹田小出雲・千前軒『ひらかな盛衰記』菊屋七郎兵衛、1739年。























