【ことわざ】
逢い戻りは鴨の味
【読み方】
あいもどりはかものあじ
【意味】
一度別れた男女がよりを戻すと、その仲は以前にもましてむつまじくなるということ。


【類義語】
・元の鞘に収まる(もとのさやにおさまる)
【対義語】
・覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)
「逢い戻りは鴨の味」の語源・由来
「逢い戻りは鴨の味」は、「逢い戻り」と「鴨の味」という二つの言い方を結びつけたことわざです。「逢い戻り」は、いったん別れた男女がもとの関係へ戻ることを表し、「鴨の味」は、鴨肉の美味をもとに、夫婦の仲のよさをも表す比喩となっています。
「逢い戻り」にあたる古い言い方として、「往戻(いにもどり)」があります。これは、離縁された女性が再びもとの夫のところへ戻ることを指し、その別の呼び方として「逢い戻り」が挙げられています。
「往戻」の古い用例は、雑俳(ざっぱい)『壁に耳』(1716〜1736年・江戸時代中期)にあり、「二三日下女の気に入る去(いニ)もどり」とあります。この用例からは、江戸時代中期には、いったん切れた夫婦の縁が戻ることを表す言い方が、すでに用いられていたことが分かります。
また、「行戻り(ゆきもどり)/往戻」という形にも、嫁いだのちに戻った女性、すなわち出戻りの女性を指す意味があります。雑俳『柳多留』六編(1771年・江戸時代中期)には、「行戻り和尚大屋へおとつれる」という用例があり、結婚した女性がもとのところへ戻ることを、「戻り」という言葉で表す用法が続いていたことを示しています。
一方の「鴨の味」は、もともと鴨の肉の味がたいへんよいことを表す言い方です。江戸時代には庶民も鴨を好んで食べ、「鴨」や「鴨の味」は、食べ物としての美味だけでなく、非常によい楽しみや幸運を表す比喩としても用いられるようになりました。
さらに、「鴨の味」は、夫婦の親しい暮らしぶりを表す言い方にも広がりました。雑俳『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』七十九編(1824年・江戸時代後期)には、「鶺鴒(せきれい)のおしへで知れた鴨の味(あぢ)」とあります。
この句の「鶺鴒」は、夫婦の道を教えた鳥として語られてきました。その鶺鴒とともに「鴨の味」が詠まれているため、ここでの「鴨の味」は、料理の美味だけでなく、男女や夫婦の親しさにも重ねられた表現となっています。
こうした意味の広がりは、滑稽本(こっけいぼん)『浮世床(うきよどこ)』(1813〜1814年・江戸時代後期、式亭三馬著)にも表れています。この作品には、「まづ此鴨をめしあがって御覧じろ、〈略〉従弟同士(イトコドウシ)の味(アジ)がいたす」とあり、「従兄弟同士は鴨の味」という言い方を踏まえて、鴨の美味と男女の親しさとを重ねています。
また、『柳多留』四十五編(1808年・江戸時代後期)には、「伯母と叔母の目をぬき鴨はつがふ也」とあり、「鴨」だけで「鴨の味」を表す用例もあります。江戸時代後期には、「鴨」という言葉そのものが、男女の仲のよさを思わせる比喩として働いていたのです。
こうして、「逢い戻り」は別れた男女が再び結ばれることを表し、「鴨の味」は、その結びつきのよさや深さを美味にたとえる表現となりました。「逢い戻りは鴨の味」は、単に再会することではなく、離れていた男女がよりを戻し、以前にもましてむつまじくなることを、鴨の美味になぞらえて言い表すことわざです。
「逢い戻りは鴨の味」の使い方




「逢い戻りは鴨の味」の例文
- 別居していた夫婦が再び暮らし始めてから以前より穏やかになり、逢い戻りは鴨の味という言葉がよく当てはまった。
- 若いころに別れた二人が年月を経て再婚し、逢い戻りは鴨の味を思わせる家庭を築いた。
- いったん婚約を解消した二人が互いの過ちを認めて結ばれ直した姿は、逢い戻りは鴨の味そのものだった。
- 祖父母は一度離れて暮らした経験を経て、逢い戻りは鴨の味というような仲のよい夫婦になった。
- 昔の物語には、別れた男女が再び結ばれ、逢い戻りは鴨の味といえる暮らしを始める場面が描かれている。
- 友人は別れた恋人とよりを戻してから前より相手を大切にするようになり、逢い戻りは鴨の味だと祝福された。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・平凡社編、加藤周一編集長『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。























