【故事成語】
一日之を暴めて十日之を寒す
【読み方】
いちにちこれをあたためてとおかこれをひやす
【意味】
少しだけ努力しても、そのあと長く怠れば、物事の効果は上がらないこと。勤勉に努めることが少なく、怠けることが多いことのたとえ。


【類義語】
・一暴十寒(いちばくじっかん)
・三日坊主(みっかぼうず)
【対義語】
・継続は力なり(けいぞくはちからなり)
・石の上にも三年(いしのうえにもさんねん)
「一日之を暴めて十日之を寒す」の故事
「一日之を暴めて十日之を寒す」は、中国の古典『孟子』の「告子・上」に出てくる言葉に由来します。『孟子』は、戦国時代の儒家である孟子の言行を弟子たちが編んだとされる書物で、儒教の大切な経典の一つです。
もとの文には、「雖有天下易生之物也,一日暴之,十日寒之,未有能生者也」とあります。これは、天下にどんなに育ちやすいものがあっても、一日だけ日に当てて暖め、十日間冷やしてしまえば、よく育つものはない、という意味です。
ここでの「暴」は、日にさらして暖めることを表します。また「寒」は、冷やすことを表します。植物を育てるには、たった一日の暖かさだけでは足りず、その後に長く冷やされれば、芽を出す力も育つ力も失われてしまいます。
この言葉が出てくる場面で、孟子は、王が賢くならないことをすぐに不思議がってはいけない、という内容を語っています。孟子が王に会ってよい教えを伝える機会は少なく、孟子が退いたあとには、その教えを冷やすような人々が多く来るので、せっかく王の心に善い芽が出ても育ちにくい、という筋道です。
このあと孟子は、囲碁の名人に二人の人が学ぶたとえも出しています。一人は心を集中して先生の話を聞き、もう一人は話を聞きながらも、白鳥が飛んで来たら弓で射ようと考えています。二人が同じ先生に学んでも、集中しない人は上達しません。これは、生まれつきの能力だけでなく、学び方や心の向け方が大切だということを示しています。
このように、もとの言葉は、植物を一日だけ暖めて十日冷やすという具体的なたとえから、努力や学びを続けなければ成果が出ないという意味へ広がりました。現在の日本語では、「一暴十寒」という短い形でも用いられ、「努力しても怠ることが多くてはむだになる」「継続して行わなければ効果は上がらない」という意味で定着しています。
「一日之を暴めて十日之を寒す」という形は、古典の訓読調を残した言い方です。一日だけ頑張って十日休むような態度では、学問も練習も仕事も育ちません。この故事成語は、才能やきっかけだけに頼らず、毎日の積み重ねを大切にするよう教える言葉です。
「一日之を暴めて十日之を寒す」の使い方




「一日之を暴めて十日之を寒す」の例文
- 試験前夜だけ徹夜して勉強し、ふだんは教科書を開かないのは、一日之を暴めて十日之を寒すというものだ。
- ピアノの練習を発表会の直前だけ頑張っても、一日之を暴めて十日之を寒すでは上達しにくい。
- 健康のために一日だけ長く走っても、その後に十日間何もしなければ、一日之を暴めて十日之を寒すになる。
- 会社の研修で学んだことを一週間でやめてしまうのは、一日之を暴めて十日之を寒すの悪い例だ。
- 読書の習慣をつけたいなら、一日之を暴めて十日之を寒すにならないよう、短い時間でも毎日読むことが大切だ。
- 部活動で急に長時間練習して、その後ずっと休むようでは、一日之を暴めて十日之を寒すで成果は出にくい。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小林勝人訳注『孟子 上』岩波書店、1968年。
・『孟子』戦国時代。























