【引導を渡す】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

引導を渡す

【慣用句】
引導を渡す

【読み方】
いんどうをわたす

【意味】
相手に、もう見込みがないことや終わりであることをはっきり告げ、あきらめさせること。もとは、僧が死者に引導を授けることをいう。

ことわざ博士
「引導を渡す」は、相手の望みや関係を断ち切る最終的な宣告を表しているよ。
助手ねこ
進路、仕事、勝負、交渉、人間関係などで、続ける余地がないと告げる場面に用いるニャン。

【英語】
・give someone their marching orders(相手に退去や解雇を命じる)
・give someone an ultimatum(相手に最後通告をする)

【類義語】
・因果を含める(いんがをふくめる)
・最後通牒(さいごつうちょう)

【対義語】
・望みをつなぐ(のぞみをつなぐ)
・未練を残す(みれんをのこす)

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「引導を渡す」の語源・由来

慣用句を深掘り

「引導を渡す」のもとにある「引導」は、仏教の言葉です。もともとは、人々を導いて悟りの道に入らせることを表し、さらに葬儀では、導師の僧が棺の前で死者のために法語を唱え、悟りへ導くことを指すようになりました。

「引導」には、先に立って導くこと、教え導くことという広い意味もあります。古い用例としては、『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)巻五の漢文序に「引導」の字が出てきて、導くという意味で用いられています。

仏教語としての「引導」は、迷っている人々や霊を仏道へ導くこと、また極楽浄土へ導くことを表します。『多度神宮寺伽藍縁起資材帳』(801年・平安時代初期)には、人々を仏法へ導く意味で「引導」が使われています。

さらに、『観智院本三宝絵』(984年・平安時代中期、源為憲著)にも、「後世を引導し給へ」という形が出てきます。ここでは、後の世のために仏道へ導いてほしい、という願いを表しています。

葬儀の場での「引導」は、死者を葬る前に、僧が棺の前で経文や法語を唱え、迷わず悟りへ向かうように導く儀礼を指します。この意味の古い用例として、『大乗院寺社雑事記』(文明元年・1469年、室町時代後期)には、「引道申入云々」とあります。

この葬儀での引導は、死者にこの世との縁を切らせ、仏の救いへ向かわせる儀礼として理解されてきました。宗派によって作法は異なりますが、棺前で導師が無常の理を説き、死者を浄土へ導き入れるという考えが根にあります。

そこから、「引導を渡す」は、実際の葬儀の作法を表す言い方として用いられました。つまり、最初は死者に対して、迷いを断ち、次の世界へ向かうよう導くという宗教的な意味をもっていたのです。

この言い方が日常語へ移ると、「この世との縁を切らせる」という部分が強く意識されました。そのため、相手に見込みがないことを知らせる、関係を終わらせる、命がまもなく尽きることを告げる、という厳しい意味に広がっていきました。

現在の意味に近い古い用例として重要なのは、浄瑠璃『絵本太功記』(1799年・江戸時代後期、近松柳・近松湖水軒・近松千葉軒合作)です。この作品は、武智光秀が主君を討ち、真柴久吉に討たれるまでを描く人形浄瑠璃です。

『絵本太功記』十日目には、「武智十兵衛光秀が、此の世の引導渡してくれん、観念せよ」とあります。ここでは、僧が死者を導くという本来の宗教的場面ではなく、光秀が相手に死や敗北を覚悟させる言葉として「引導」を使っています。

この用例から、「引導を渡す」は、命や勝負の終わりを告げる強い表現として定着していきました。死者を悟りへ導く言葉が、相手に「もう終わりだ」と悟らせる言い方へ移ったところに、この慣用句の意味の流れがあります。

現代では、実際の死を告げる場合だけでなく、夢、計画、交渉、地位、人間関係などを終わらせる最終宣告にも使います。ただし、かなり強い響きをもつため、相手の望みをはっきり断ち切る場面に限って用いるのがふさわしい言い方です。

「引導を渡す」の使い方

健太
野球部の先輩、けがが治らないまま大会に出たいって言っているんだ。
ともこ
監督の先生は、体をこわす前に引導を渡すつもりなんだね。
健太
つらいけど、このまま無理を続けたら、先輩の足がもっと悪くなるかもしれない。
ともこ
うん。夢を止める言葉でも、先輩を守るためなら必要なときがあるよ!
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「引導を渡す」の例文

例文
  • 監督は、けがを抱えた選手に引導を渡すように、今季限りでの引退を告げた。
  • 会社は、赤字が続く事業に引導を渡すため、正式に撤退を発表した。
  • 医師は家族に、これ以上の治療は難しいと引導を渡すような説明をした。
  • 何度注意しても改善しない部下に、上司は引導を渡す決意を固めた。
  • 長年続いた交渉は決裂し、相手企業が引導を渡す形で契約終了を通知した。
  • 友人は、見込みのない夢を追い続ける彼に引導を渡すように、別の道を勧めた。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・小学館編『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・近松柳・近松湖水軒・近松千葉軒『絵本太功記』1799年。


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