【故事成語】
完璧
【読み方】
かんぺき
【意味】
欠点がなく、完全で、すぐれていること。また、残るところなく、すべてにわたるさま。


【英語】
・perfect(完全な、欠点のない)
・flawless(欠点や誤りのない)
【類義語】
・完全無欠(かんぜんむけつ)
・全璧(ぜんぺき)
・無欠(むけつ)
【対義語】
・不完全(ふかんぜん)
・欠陥(けっかん)
・瑕疵(かし)
「完璧」の故事
「完璧」は、中国の史書『史記(しき)』(前漢、紀元前91年ごろ、司馬遷著)「廉頗藺相如列伝(れんぱりんしょうじょれつでん)」に出てくる故事にもとづく言葉です。『史記』は、本紀・表・書・世家・列伝から成る紀伝体の歴史書で、「完璧」のもとになった話は列伝の中に収められています。
「璧」は、古代中国で尊ばれた円形の玉を指します。「完璧」は、現在では「完全な璧」という形で読まれますが、もとの文脈では「璧を完うす」、つまり璧を傷つけずに守り通すという意味をもっていました。
故事の舞台は、中国の戦国時代です。趙の恵文王は、楚から「和氏(かし)の璧」と呼ばれる名高い宝玉を手に入れました。
この名玉のことを聞いた強国の秦の昭王は、趙に使者を送り、十五の城と引きかえに璧を譲ってほしいと申し入れました。しかし趙では、璧を渡しても本当に城が得られるか分からず、また断れば秦の軍が攻めてくるおそれもあるため、対応に悩みました。
そのとき、使者として名乗り出たのが藺相如(りんしょうじょ)です。藺相如は、秦が約束どおり城を渡すなら璧を秦に置き、城が得られないなら璧を無傷のまま趙へ持ち帰る、と趙王に言いました。
この場面の原文には、「城不入、臣請完璧歸趙」とあります。これは、城が趙のものにならないなら、私は璧を傷つけずに趙へ持ち帰りたい、という意味です。
藺相如は璧を持って秦へ行き、秦王に差し出しました。ところが秦王は大喜びして璧を側近たちに見せるばかりで、十五の城を趙に渡す気持ちを示しませんでした。
藺相如はそこで、「この璧には瑕(きず)があります。王にお見せしましょう」と言って、いったん秦王の手に渡った璧を取り戻しました。さらに柱のそばへ退き、もし自分をおどすなら、自分の頭も璧も柱に打ちつけて砕く、と強く迫りました。
秦王は璧が壊れることを恐れ、いったんは十五の城を趙に与えるようなそぶりを見せました。しかし藺相如は、それが本心ではないと見抜き、五日間の斎戒と正式な礼を求めて時間をかせぎました。
その間に藺相如は、従者に粗末な服を着せ、璧をふところに入れさせて、近道から趙へ逃げ帰らせました。こうして和氏の璧は、傷つくことなく趙へ戻りました。
この故事から、「完璧」はもともと、「璧を完全なまま守り、趙へ帰すこと」を表しました。中国では「完璧帰趙」の形で、借りたものを無事に返すことや、大切なものを取り戻すことを表す用法があります。
日本語では、やがて「瑕のない宝玉」という発想が強まり、欠点のないこと、完全無欠ですぐれていることを表す日常語として広く使われるようになりました。明治時代の『東京新繁昌記』(1874〜1876年、服部誠一著)には、誤りを直し、不足を補って「完璧」とする趣旨の用例が出てきます。
現在の「完璧」は、試合運び、発表、作品、準備、答えなどが、欠けるところなく整っている場合に使われます。もとの故事を知ると、「完壁」ではなく「完璧」と書く理由も分かります。
「完璧」の使い方




「完璧」の例文
- 彼女のピアノ演奏は、音の強弱まで整っていて完璧だった。
- 旅行の予定表は移動時間まで考えられており、完璧な計画になった。
- 発表資料に誤字が一つもなく、説明の順番も完璧だった。
- 料理の味つけも盛りつけも完璧で、家族全員が驚いた。
- 守備の連係が完璧に決まり、相手チームに得点を許さなかった。
- 彼は試験前に弱点を見直し、完璧な状態で本番を迎えた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・司馬遷『史記』紀元前91年ごろ。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster.























