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【橘中の楽】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語)

橘中の楽

【故事成語】
橘中の楽

【読み方】
きっちゅうのらく

【意味】
囲碁をする楽しみ、または囲碁を上品に言い表した名。広くは、将棋を楽しむことにもいう。

ことわざ博士
橘中の楽は、橘の実の中で老人たちが盤上遊戯に興じた故事を踏まえた表現だよ。
助手ねこ
勝敗だけにこだわらず、囲碁や将棋の対局そのものを心ゆくまで楽しむ場面で用いるニャン。

【類義語】
・橘中の楽しみ(きっちゅうのたのしみ)

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「橘中の楽」の故事

故事成語を深掘り

「橘中の楽」は、唐代の牛僧孺が編んだと伝わる『玄怪録(げんかいろく)』の物語に由来します。『玄怪録』の本文は散逸しましたが、この話は、北宋の李昉らが編んだ『太平広記(たいへいこうき)』(978年成立)巻四十の「巴邛人」に採録され、後世へ伝わりました。

物語の舞台は巴邛(はきょう)、現在の四川省にあたる土地です。ある人の家に橘の園があり、霜が降りた後に実を収穫すると、三、四斗入りの器ほどもある巨大な実が、二つだけ残っていました。

不思議に思った人が二つの実を取って割ると、それぞれの中に二人ずつ、合わせて四人の老人がいました。老人たちは白い髪と眉をもち、肌はつややかで、背丈は一尺余りしかなく、向かい合って象戯(しょうぎ:中国の将棋にあたる盤上遊戯)を楽しんでいました。

勝負が終わると、一人の老人が「橘中之楽、不減商山」と言います。これは、橘の中で過ごす楽しみは、商山での楽しみにも劣らないという意味であり、老人は、実が摘み取られたために橘の中へ住み続けられなくなったことを惜しみました。

やがて別の老人が、袖から竜の形をした根を取り出して食べ、残った根に水を吹きかけました。すると、その根は竜に変わり、四人の老人はそろって背に乗り、風雨と雲の中へ消えていきました。

「橘中の楽」という言い方は、老人の言葉にある「橘中之楽」を日本語として読んだものです。「橘中」は、橘の実の中に隠された仙人の世界を指し、「楽」は、その別天地で盤上遊戯に心を遊ばせる楽しみを表します。

ただし、もとの物語で老人たちが行っていたのは、囲碁ではなく象戯でした。一方、中国には、商山に隠れ住んだ四人の老人である商山四皓が、囲碁を楽しんだという別の伝承があります。橘の中にも四人の老人がいたことや、原文に「商山」という言葉が出てくることから、二つの話は次第に重ね合わされました。

後代には、四人の老人が囲碁を打つ話、橘の中の四人が象戯をする話、商山四皓が橘の中で囲碁を打つ話という、互いに関係する形が広まりました。その結果、橘の中の老人たちは、囲碁を楽しむ仙人としても描かれ、「橘中の楽」は、囲碁を表す言葉へと意味を広げていきました。

日本では、鎌倉時代末期ごろから、五山の僧侶たちの漢詩文にこの物語が取り入れられ、室町時代の応永・永享年間には、詩や連歌の題材として広く知られるようになりました。明応7年、すなわち1498年に成立した和漢聯句でも「橘中の仙人」が用いられており、このころには、物語を短い言葉で示す表現として定着していました。

こうして、もとは橘の実の中で象戯を楽しむ仙人の話であったものが、商山四皓の囲碁の伝承と結び付き、日本語では主に囲碁の雅やかな異称となりました。「橘中の楽しみ」という形では、囲碁または将棋に興じる喜びを広く表し、「橘中の楽」は、盤を囲んで時を忘れるような楽しさを伝えています。

「橘中の楽」の使い方

健太
おじいちゃんが、部屋の隅でずうっと盤を見つめて動かなかったんだよね。
ともこ
それはきっと、大好きな将棋に集中して自分の世界に入り込んでいるのね。
健太
うん、まさに橘中の楽という感じで、声をかけるのもためらうくらい楽しそうだったよ。
ともこ
そんなふうに時間を忘れて熱中できる趣味があるなんて、本当に素敵なおじいちゃんね!
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「橘中の楽」の例文

例文
  • 祖父は旧友と碁盤を挟み、橘中の楽に時を忘れた。
  • 雨の休日、兄弟は将棋盤を広げて橘中の楽を味わった。
  • 地域の囲碁会には、毎週、橘中の楽を求めて愛好者が集まる。
  • 仕事を終えた父は、仲間との橘中の楽を何よりの息抜きにしている。
  • 寺の静かな縁側で碁を打つ二人の姿は、橘中の楽という言葉にふさわしかった。
  • 勝敗だけにこだわらず一手一手を味わうところに、橘中の楽の深さがある。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・牛僧孺『玄怪録』唐代。
・李昉ほか編『太平広記』北宋、978年。
・中本大「本国禅林における橘叟説話の受容について―『竹林抄』所収宗砌句を端倪に」『中世文学』第36号、1991年。
・桑浩哲「日本中世の禅林における囲碁の『文雅』化―『四皓・橘中』伝説の変容をめぐって」『国士舘人文科学論集』第5号、国士舘大学大学院人文科学研究科編集委員会、2024年。





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