【ことわざ】
木に餅がなる
【読み方】
きにもちがなる
【意味】
話がうますぎること、また、難しいことをいかにも簡単そうに言うことのたとえ。


【英語】
・too good to be true.(話がよすぎて本当とは思えない)
・when pigs fly.(とても起こりそうにないこと)
【類義語】
・畑に蛤(はたけにはまぐり)
「木に餅がなる」の語源・由来
「木に餅がなる」は、木に果物がなるように、餅まで自然に実るという、ありえない見立てから生まれたことわざです。餅は「もち」と読み、漢字では旧字に「餠」の形もあります。
餅は、木の実のように枝から自然にできるものではありません。そのため、この言葉では、現実には起こりにくいことを、まるで簡単に実現するかのように言うおかしさを表しています。
古い用例には、『鷹筑波集(たかつくばしゅう)』(1638年序・1642年刊、江戸時代前期、西武編)に出てくる「木は餠(モチ)のなるとやいはん松の雪〈盛成〉」があります。これは、松の枝に積もった白い雪を見て、まるで木に餅がなったようだと言うだろう、という趣をもつ句です。
『鷹筑波集』は、俳諧(はいかい)の撰集です。俳諧は、発句(ほっく)や連句などを含む文芸で、機知やおかしみを生かした表現を大切にしました。
『鷹筑波集』は、西武が編んだ五巻の書物で、1642年に刊行されました。貞徳が長い年月をかけて批点を施した発句や付句(つけく)を集めたもので、貞徳の門に連なる多くの俳人の句を収めています。
この古い句では、雪が白く枝にのっている実際の景色がもとになっています。そこでは、餅そのものが木から生じたのではなく、雪の白さと餅の白さを重ねて、ありえない光景のように言い表しています。
このような表現は、見たものをそのまま説明するだけでなく、「木に餅がなる」という意外な言い方によって、聞き手に強い印象を与えます。ありえないものが実ったように言う点が、後のことわざとしての意味につながっています。
表記では、古い用例に「餠」の字が出てきます。現在の説明ではふつう「餅」と書きますが、意味の中心は変わらず、木に餅がなるような、現実には考えにくいことを表します。
後にこの言い方は、単に雪景色をおもしろく言う表現にとどまらず、話がうますぎることや、難しいことをこともなげに言うことのたとえとして用いられるようになりました。白い餅が木になるという不可能に近い見立てが、現実ばなれした話を示す表現へ広がったのです。
現在の「木に餅がなる」は、よい話そのものを喜ぶ言葉ではありません。あまりにも都合がよく、実現の見込みが薄い話に対して、「そんなに簡単にはいかない」という疑いをこめて使います。
「木に餅がなる」の使い方




「木に餅がなる」の例文
- 一日で英単語を千個覚えられるという話は、木に餅がなるようなものだ。
- 練習せずに大会で優勝できると言うのは、木に餅がなる話にすぎない。
- 材料も道具もないのに立派な工作がすぐ完成するとは、木に餅がなるような説明だ。
- 売る品物を考えないまま大もうけできるという計画は、木に餅がなるに近い。
- 宿題をまったく見直さず満点を取れると思うのは、木に餅がなるというものだ。
- 何の準備もせずに発表が成功すると考えるのは、木に餅がなる話だ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・小川環樹・西田太一郎・赤塚忠・阿辻哲次・釜谷武志・木津祐子編『角川新字源 改訂新版』KADOKAWA、2017年。
・西武編『鷹筑波集』1642年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』























