【慣用句】
騎竹の年
【読み方】
きちくのとし
【意味】
竹馬に乗って遊ぶような幼い年ごろ。幼年のころ。


【英語】
・childhood(子どもである時期、幼年時代)
【類義語】
・竹馬の時(ちくばのとき)
【対義語】
・老年(ろうねん)
「騎竹の年」の語源・由来
「騎竹の年」は、「騎竹」と「年」が結びついた言い方です。「騎」は「のる」という意味をもつ字で、「騎竹」は竹馬に乗ることを表します。
ここでいう「年」は、年齢や時期を表します。つまり「騎竹の年」は、竹馬に乗って遊ぶような年ごろ、すなわち幼年のころを指す表現です。
「竹馬」は、現在よく見る二本の竹竿に足場をつけて歩く遊びだけを指す言葉ではありませんでした。古くは、葉のついた笹竹にひもをつけ、馬に見立ててまたがって走る遊びや、竹の先に馬の頭をつけた玩具も「竹馬」と呼ばれました。
二本の竹に足がかりをつけて歩く形は、江戸時代後期ごろから広まったものです。そのため、「騎竹」のもとの姿を考えるときは、竹を馬に見立てて遊ぶ、昔の子どもの素朴な遊びを思い浮かべると分かりやすくなります。
「騎竹」という言葉の古い例として、大蔵善行の『雑言奉和』(10世紀初めごろ)に「騎竹遊童」の句が出てきます。これは、竹にまたがって遊ぶ子どもの姿を、過ぎ去った昔の記憶として思い起こす表現です。
この句では、竹馬で遊ぶ子どもの姿と、年老いた今の身とが対比されています。竹馬遊びは、単なる遊具の説明にとどまらず、幼い時期を思い起こさせるものとして用いられていたことが分かります。
「竹馬」を幼い時期の表現に用いる流れは、「竹馬の時」にも表れています。『明衡往来』(11世紀中ごろ)には「竹馬之時」という形があり、これは「たけうまに乗って遊ぶような時期」「おさない時期」を表します。
「騎竹の年」という形は、室町時代の『伊京集』に出てきます。『伊京集』は、室町時代に広く作られた「節用集」の系統に属する書物で、言葉を引きやすいようにまとめた、実用的な国語辞書の一つです。
『伊京集』に出る「騎竹の年」は、竹馬に乗って遊ぶ年ごろ、幼年のころを指す言い方です。古い子どもの遊びである竹馬の姿が、そのまま「幼いころ」を表す言葉へ移っていったものといえます。
同じ「竹馬」を用いる表現には「竹馬の友」もありますが、これは幼いころにともに遊んだ友人を指します。「騎竹の年」は友人ではなく、竹馬に乗って遊ぶほど幼かった時期そのものを表す点に特徴があります。
このように、「騎竹の年」は、子どもが竹を馬に見立てて遊ぶ姿をもとに、幼年時代を少し古風で品よく言い表す慣用句として伝わっています。日常の軽い会話よりも、昔を振り返る文章や、落ち着いた表現の中によく合う言い方です。
「騎竹の年」の使い方




「騎竹の年」の例文
- 父は、騎竹の年に過ごした海辺の町を今もよく覚えている。
- 騎竹の年の思い出は少ないが、祖母の家の庭で遊んだ記憶だけは残っている。
- 兄は、騎竹の年から絵を描くことが好きだった。
- 騎竹の年に身についた習慣が、大人になってからもその人を支えることがある。
- 彼女は、騎竹の年に読んだ絵本をきっかけに本が好きになった。
- 式典のあいさつで、校長は騎竹の年の無邪気な好奇心を忘れないでほしいと語った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・平凡社『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。
・『伊京集』(室町時代)。
・大蔵善行『雑言奉和』10世紀初めごろ。
・『明衡往来』11世紀中ごろ。























