「腐っても鯛」とは
読み方・意味
- ことわざ:腐っても鯛
- 読み方:くさってもたい
- 意味:もともと立派なものは、少し落ち目になってもその価値を失わない。
「腐っても鯛」とは、もともと立派で価値のあるものは、たとえ衰えたり落ち目になったりしても、その本来の良さや品格は失われない、という意味のことわざです。
ただし、「衰えた」「落ちぶれた」というニュアンスを含むため、目上の人や敬意を払うべき相手に対して使う際は注意が必要です。
「腐っても鯛」の語源・由来
「腐っても鯛」ということわざの由来は、日本における鯛の特別な価値に基づいています。
鯛は昔から高級魚とされ、祝いの席で振る舞われる縁起物でした。
江戸時代には、「めでたい」に通じることから、最も格式の高い魚として位置づけられ、進物や正月の飾りにも用いられました。
また、鯛は身がしっかりしており、多少古くなっても外見があまり変わらず、品格を保っているように見えるという特徴があります。
このことから、「たとえ状態が悪くなったとしても、本来の価値は失われない」という考えが生まれ、「腐っても鯛」という表現が生まれたとされています。
このことわざは比喩的に使われ、落ちぶれた名家や実力者などが、依然としてその品格や能力を持ち続けていることを示す言葉として広まりました。
「腐っても鯛」の使い方
「腐っても鯛」の例文
- 「彼は引退してしばらく経つけれど、いざプレーすると動きのキレが違うね。やっぱり腐っても鯛だよ。」
- 「全盛期ほどの声量はなくなったけれど、それでも観客を魅了する歌声はさすがだね。腐っても鯛とはこのことだ。」
- 「彼、最近は冴えないけど、やっぱりあの名門大学を出ただけあって、知識の深さが違うな。腐っても鯛だよ。」
- 「昔ほどの権力はないとはいえ、彼の一言が業界に影響を与えるのは間違いない。腐っても鯛だね。」
- 「このバッグ、少し傷んでるけど、有名ブランドだけあって品格があるね。やっぱり腐っても鯛だよ。」
- 「祖父はもう80歳だけど、話してみると知識が豊富で頭の回転も速い。腐っても鯛とはまさにこのことだ。」
文学作品などの用例
世間の人は、自分の身近にある有価値な、美味いものを利用することに無頓着のようだ。
出盛りのさんまより場違いのたいをご馳走と思い込む、卑しい陋習(ろうしゅう)から抜けきらないところに原因があるようだ。
「腐ってもたい」などという言葉は、うかうか聞いていると、諺としてはちょっと面白いが、料理の方では大変な邪魔となって害がある。
また、料理人のつくったものなら、なんでも結構なお料理だなぞと、軽卒に考えるのも大変な考えなしであることを、私は特に言い添えておきたい。(『家庭料理の話』北大路魯山人)
「腐っても鯛」の類義語・似たことわざ
- 大鍋の底は撫でても三杯
- ちぎれても錦
- 痩せても枯れても武士は武士
- 沈丁花は枯れても香し
- 破れても小袖
「腐っても鯛」の対義語
- 麒麟も老いては駑馬に劣る
- 昔千里も今一里
- 昔の剣今の菜刀
「腐っても鯛」の注意点
- 本来の価値があるものに対して使う
→ もともと優れた人物や物に対して使う言葉であり、最初から平凡なものには適さない。
(例:✕「この安物のバッグ、古くなったけど腐っても鯛だね」→ もともと高級ではないため不適切) - 衰えや劣化を含むニュアンスがある
→「衰えてもなお価値がある」という意味のため、相手に直接使うと失礼になることがある。
(例:✕「お年を召しましたが、腐っても鯛ですね!」→ 年齢による衰えを強調するため失礼に聞こえる) - 状況によっては皮肉に聞こえることがある
→ 褒め言葉のつもりでも、相手によっては「落ちぶれた」という意味に取られる可能性がある。
(例:✕「あなた、もう昔ほどじゃないけど、腐っても鯛だよね」→ 本人の前で言うと失礼) - 使う場面を慎重に選ぶ
→ ビジネスシーンやフォーマルな場では、誤解を招く可能性があるため、慎重に使うべき。
(例:✕「御社も最近は業績が落ちましたが、腐っても鯛ですね」→ 目上の相手に使うのは失礼)
「腐っても鯛」の英語表現
A good horse becomes never a jade.
直訳:良い馬は決して駄馬にならない。
意味:本当に優れたものは、歳をとってもその価値を失わないという意味のことわざ。才能や実力のある人は、たとえ衰えてもその本質的な優秀さを失わないことを示している。
例文:Even after retiring, he still gives excellent advice. A good horse becomes never a jade.
(引退した後も、彼は素晴らしいアドバイスをくれる。良い馬は決して駄馬にならない。)
An old eagle is better than a young crow.
直訳:年老いたワシは若いカラスより優れている。
意味:経験を積んだ者は、たとえ年老いても、未熟な若者よりも価値があるという意味のことわざ。知識や経験が重要であることを強調している。
例文:Even though he’s older, his experience makes him valuable. An old eagle is better than a young crow.
(彼は年を取っているけれど、その経験が彼を価値ある存在にしている。年老いたワシは若いカラスより優れている。)