【慣用句】
旭日昇天の勢い
【読み方】
きょくじつしょうてんのいきおい
【意味】
天に昇る朝日のように、勢力や活動の勢いが非常に盛んなこと。


【英語】
・rise rapidly in power and influence.(勢力や影響力を急速に伸ばす)
【類義語】
・旭日東天(きょくじつとうてん)
・破竹の勢い(はちくのいきおい)
「旭日昇天の勢い」の語源・由来
「旭日(きょくじつ)」は朝の太陽、すなわち東の空から昇る朝日を指します。「昇天(しょうてん)」は、ここでは天高く昇ることを表します。「旭日昇天」は、朝日が空へ昇っていく光景そのものを意味し、そこから、物事が上向きに発展し、勢いがますます盛んになる様子をたとえるようになりました。
「旭日」という言葉は、中国最古の詩集とされる『詩経(しきょう)』(中国・西周から春秋時代の詩を収録)の「邶風(はいふう)・匏有苦葉(ほうゆうくよう)」に、すでに出てきます。そこには「雝雝鳴鴈、旭日始旦」とあり、雁が穏やかに鳴き、朝日が昇って夜が明ける情景を表しています。この段階の「旭日」は、勢力が盛んなことではなく、実際の朝日を指す言葉です。
日本でも、「旭日」は早くから朝日の意味で使われました。禅僧の季弘大叔が記した『蔗軒日録(しゃけんにちろく)』(1484〜1486年・室町時代後期)には、文明18年、すなわち1486年3月22日の記事として、「晴快、旭日透窓、朝寒頓止」とあります。空が晴れ、朝日が窓から差し込み、朝の寒さが急にやわらいだという場面で、ここでも「旭日」は具体的な朝の太陽を表しています。
やがて、暗い地平から現れた朝日が、光を増しながら空高く昇っていく姿は、衰える気配がなく、これから一層発展していくもののたとえとして使われるようになりました。夕方の太陽が沈んでいく姿とは反対に、朝日は一日の始まりとともに昇っていくため、新しい勢力の成長や、事業・組織の急速な発展を表すのに適した比喩となったのです。
「旭日昇天の勢」という形は、明治時代の終わりごろには、産業や団体の急速な発展を表す言い方として使われていました。明治43年、すなわち1910年10月9日の『福井新聞』には、福井県春江村の羽二重工業について、「旭日昇天の勢を以て肉薄しつゝある」とあります。力織機を導入し、生産を急速に拡大していた地域の目覚ましい発展を、昇る朝日の勢いに重ねた表現です。
大正8年、すなわち1919年に刊行された日本青年教育会の『相撲講話』には、「此場所の太刀山は旭日昇天の勢なので」とあります。当時、圧倒的な強さを示していた横綱太刀山の活躍を、天へ昇る朝日の勢いにたとえています。この用例では、現在と同じように、人の人気や実力が盛んに伸び、他を圧する様子を表しています。
その後、「旭日昇天」は単独でも使われましたが、日本語では「旭日昇天の勢い」「旭日昇天の勢」という形が広く定着しました。「旭日昇天」が勢いの盛んな状態を示し、さらに「勢い」を添えることで、その上昇の力強さを明確に表す言い方になっています。
昭和29年、すなわち1954年に発表された吉行淳之介の『驟雨(しゅうう)』や、昭和42年、すなわち1967年に刊行された星新一の『人民は弱し 官吏は強し』にも、「旭日昇天」が用いられています。近代以降、運勢、人物、政党、企業、産業などが、次々と成果を上げながら力を増していく様子を表す言い方として広まり、現在の「旭日昇天の勢い」へと受け継がれています。
「旭日昇天の勢い」の使い方




「旭日昇天の勢い」の例文
- 新しい部員を迎えた野球部は連勝を重ね、旭日昇天の勢いで県大会を勝ち進んだ。
- 兄が始めた小さな菓子店は評判を呼び、旭日昇天の勢いで支店を増やしている。
- 若い選手を中心とするそのチームは、旭日昇天の勢いで上位へ駆け上がった。
- 地域の人々が立ち上げた祭りは年々来場者を増やし、旭日昇天の勢いで発展した。
- 新しい技術を生み出した会社は、旭日昇天の勢いで海外市場へ進出している。
- 改革を進めた政党は各地の選挙で勝利を重ね、旭日昇天の勢いを示した。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・飯間浩明編『四字熟語を知る辞典』小学館、2018年。
・近藤いね子・高野フミ編集主幹『プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・『詩経』「邶風・匏有苦葉」。
・季弘大叔『蔗軒日録』1484〜1486年。
・日本青年教育会『相撲講話』1919年。























