目次
「親の心子知らず」とは
読み方・意味
- ことわざ:親の心子知らず
- 読み方:おやのこころこしらず
- 意味:親が子どものためによかれと思って一生懸命やっているのに、子どもはその気持ちを理解せず、勝手気ままなふるまいをしてしまうこと。
「親の心、子知らず」とは、親の深い愛情や心配が子供には理解されず、子供は勝手気ままに振る舞うことのたとえです。
親は子供のためを思って行動しているのに、子供はそれに気づかず、あるいは反発してしまうことがよくあります。
しかし、成長するにつれて親の気持ちが理解できるようになることも多く、人生の経験とともにこのことわざの意味を実感することがあります。
「親の心子知らず」の語源・由来
「親の心子知らず」の語源は、室町時代の軍記物語『義経記』に由来するとされています。
この物語は源義経の生涯を描いたものであり、その中で義経の忠臣・武蔵坊弁慶が語った言葉がもとになっています。
弁慶は、義経に対して「子供というものは親の心を理解しない。だからこそ、人の心を理解することはとても難しい」と述べました。この発言が「親の心子知らず」ということわざの起源となり、広まっていったと考えられています。
このことわざは、もともとは親の愛情や苦労が子供には伝わりにくいことを指していますが、実際の親子関係だけでなく、師弟関係や目上の者と目下の者との関係にも適用される表現となりました。
「親の心子知らず」の使い方
「親の心子知らず」の例文
- 親がどんなに心配して忠告しても、子供は聞く耳を持たない。「親の心子知らず」とはまさにこのことだ。
- 私も若い頃は親の忠告がうるさいと感じていたが、今になって「親の心子知らず」だったと痛感する。
- 母は毎日私の健康を気にかけてくれたが、当時の私は「親の心子知らず」で、そのありがたさを理解していなかった。
- 「親の心子知らず」というように、子供が自立するまでは親の苦労はなかなか伝わらないものだ。
- 子供のためを思って厳しく接しても、本人には伝わらない。「親の心子知らず」とはよく言ったものだ。
「親の心子知らず」の文学作品などの使用例
子爵夫人は、無邪気に然し淋しそうに微笑した。
「それがおかしゅうございます。晨子はもう西洋へ参ると申すのばかりが嬉しいものと見えましてね。……まるで子供のようでございますよ。彼方に参って役に立たないものは何も入用らないなどと呑気を申しております」
彼女は、細そりした肩に片手を動して羽織のずったのをなおした。
「……親の心子知らずとはよく申したものでございます」(『伊太利亜の古陶』宮本百合子)
「親の心子知らず」の類義語・似たことわざ
- 親の思うほど子は思わぬ
- 子を持って知る親の恩
「親の心子知らず」の対義語
「親の心子知らず」の注意点
- 子供が親の気持ちを理解しない状況に適用する
→ 親が子供の気持ちを理解しない場合には使わない。
(例:✕「親が私の気持ちをわかってくれない。まさに親の心子知らずだ」→ これは「子の心親知らず」に該当する) - 実際の親子関係以外にも使えるが、目上の立場が前提
→ 先生や上司など、親のように面倒を見てくれる存在に対しても使える。
(例:◯「先生が一生懸命指導してくれるのに、全然聞いていない。まさに親の心子知らずだ」) - 成長とともに理解できることを含意することが多い
→ 一時的な反発ではなく、時間が経って気づくことを指す場面で使うのが自然。
(例:◯「昔は親の言うことがうるさいと思っていたけど、今はありがたさがわかる。親の心子知らずだったなあ」)
「親の心子知らず」の英語表現
It is a wise child that knows its own father.
直訳:自分の父親をわかっているのは賢い子どもである。
意味:子供は親の気持ちを理解しにくいが、本当に賢い子供は親の考えや苦労を知っている、という意味。
例文:Even though his father did everything for him, he didn’t understand it until he grew up. It is a wise child that knows its own father.(父親が自分のためにどれだけ尽くしてくれたか、彼は成長するまで理解できなかった。親の心、子知らずとはこのことだ。)