【ことわざ】
開けて悔しき玉手箱
【読み方】
あけてくやしきたまてばこ
【意味】
期待していた中身や結果が、実際には期待外れで、がっかりすることのたとえ。


【英語】
・turn out to be a letdown(期待外れに終わる)
・not live up to expectations(期待にこたえない)
・be disappointed after high hopes(大きな期待のあとに失望する)
【類義語】
・開けて悔しき浦島の子(あけてくやしきうらしまのこ)
・開けて見たれば鳥の糞(あけてみたればとりのふん)
・肩透かしを食う(かたすかしをくう)
【対義語】
・棚から牡丹餅(たなからぼたもち)
・開いた口へ牡丹餅(あいたくちへぼたもち)
・濡れ手で粟(ぬれてであわ)
「開けて悔しき玉手箱」の語源・由来
このことわざは、浦島太郎が禁じられた玉手箱を開けたために、取り返しのつかない変化に見舞われた話を土台にして生まれたものです。箱を開ける前の大きな期待と、開けたあとの強い落胆の差が、そのままこのことわざのいちばん大事なところになっています。
浦島説話そのものは、720年(養老4年・奈良時代)の『日本書紀』や、8世紀前半(奈良時代)の『丹後国風土記』逸文、さらに『万葉集』などにさかのぼります。ただし、この段階では、今の「開けて悔しき玉手箱」という形がそのまま整っていたわけではありません。
古い浦島説話で目立つのは、異界から帰ってきた主人公が、もとの時間や若さを取り戻せず、禁じられた箱を開けてしまう筋です。ここにある、開けなければよかったという後悔が、のちの言い方の土台になりました。
平安中期に成立した『拾遺和歌集』は、1005〜1007年(寛弘2〜4年・平安時代中期)ごろの歌集ですが、その中には中務の歌として、夏の夜の短さを浦島の箱になぞらえ、開けて悔しい思いを重ねた歌が収められています。ここから、浦島の箱と「開けて悔しい」という連想が、かなり早い時代から人びとに通じるものだったと分かります。
この点は大切です。今のことわざは、ただ昔話のあらすじをあとから言い換えたものではなく、和歌の中でも使えるほど、浦島の箱が「開けて後悔するもの」として強く印象づけられていた上に成り立っています。
さらに、室町時代から江戸時代前期にかけて広まった御伽草子の『浦島太郎』では、玉手箱を開けて悔いる気持ちが、今の言い方にかなり近い形ではっきり確かめられます。ことわざとしての輪郭は、この中世の物語の広がりの中で、いっそう分かりやすく固まっていったと考えられます。
近世に入ってからも、浦島の玉手箱は、ことわざや川柳の中で「期待したのに、開けてみれば残念だった」というたとえとして受け継がれました。昔話の一場面が、日常の失望を言う短いことばへ広がっていったのです。
このことわざで大事なのは、ただ失敗したというだけではありません。中に何かよいものがある、あるいは結果はきっとすばらしいと思っていたのに、その見込みがくずれるところに、このことわざらしさがあります。
そのため、単なる失敗談よりも、福袋の中身、表彰の景品、贈り物、試験結果、企画の発表など、先に期待がふくらんでいた場面によく合います。開ける、見る、結果を知る、といった動きのあとで、がっかりする場面にぴたりとはまる言い方です。
なお、「開けて悔しい玉手箱」という形も使われますが、学習用としては、古くからの言い回しに近い「開けて悔しき玉手箱」で覚えると、このことわざらしい響きがつかみやすくなります。文語の「悔しき」が入ることで、昔話から育ったことばであることも感じ取りやすくなります。
まとめると、このことわざは、浦島説話の玉手箱の場面をもとに、平安時代の和歌の中で印象が深まり、中世の物語で今に近い形へまとまっていった言い方です。期待が大きかったぶんだけ落胆も大きいという人の気持ちを、短く印象深く表すことばとして定着したのです。
「開けて悔しき玉手箱」の使い方




「開けて悔しき玉手箱」の例文
- 楽しみにしていた福袋だったが、開けて悔しき玉手箱というほかなかった。
- 高級なお菓子だと思って箱を開けたら試供品だけで、開けて悔しき玉手箱だった。
- 期待して応募した企画の当選通知は、条件が厳しすぎて、開けて悔しき玉手箱となった。
- 豪華な景品だと聞いて包みをほどいたが、中身はありふれた品で、まさに開けて悔しき玉手箱だった。
- 就職先から届いた資料を見て安心していたが、細かな条件を読むと開けて悔しき玉手箱だった。
- 子どもが楽しみにしていたおもちゃの箱は部品が足りず、親子そろって開けて悔しき玉手箱だと感じた。























