【商人は損と原価で暮らす】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

商人は損と原価で暮らす

【ことわざ】
商人は損と原価で暮らす

【読み方】
あきんどはそんともとでくらす

【意味】
商人は、損をした、原価で売っているなどと言いながら、実際には利益を得て暮らしているということ。売り手の損話や原価話を、そのまま信じすぎてはならないというたとえ。

ことわざ博士
商人の言う「損」や「原価」に、商売上の駆け引きが含まれやすいことを皮肉った言葉だよ。
助手ねこ
値引き、安売り、赤字覚悟などの言葉と、実際の利益との食い違いをいう場面で用いるニャン。

【英語】
・caveat emptor.(買い手は用心せよ)

【類義語】
・商人は損していつか倉が建つ(あきんどはそんしていつかくらがたつ)
・商人の元値(あきんどのもとね)
・商人の空誓文(あきんどのそらせいもん)
・損と元値で蔵を建て(そんともとねでくらをたて)

【対義語】
・現金掛け値なし(げんきんかけねなし)

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「商人は損と原価で暮らす」の語源・由来

ことわざを深掘り

「商人は損と原価で暮らす」は、商人が売買の場で口にする「損」と「原価」という言葉をもとにしたことわざです。ここでいう「原価」は、ふつうの音読みの「げんか」ではなく、この言い方では「もと」と読まれます。

「原価」は、利益を含めない仕入れ値段、もとの値段を指す言葉です。また、「元値」も、商品を仕入れたときの値段、または生産原価を指します。つまり、このことわざでは、「もうけをのせていない値段だ」という売り手の言葉が、表現の軸になっています。

「元値」という言葉の古い用例には、『狂歌之詠草』(1654年・江戸時代前期)に出る「もとねにもまはりかねたる」という形があります。ここでは、売買や値段のもとになる額をめぐる言い方として、「元値」が早くから使われていたことが分かります。

一方、「原価」は、もとの値段という意味で、『江戸繁昌記』(1832〜1836年・江戸時代後期、寺門静軒著)に「原価は四銖」と出てきます。また、仕入れの値段という意味では、『福翁自伝』(1899年、福沢諭吉著)にも「原価でドシドシ売て遣らう」という用例があります。

このことわざの背景には、商人の言う値段や損話を、そのまま信用しないという昔からの世間の見方があります。「商人の元値」は、商人のいう元値には駆け引きが多く、信用しがたいという意味で、商人が「これでは元値が切れる」と言って売るところから生まれた言い方です。

同じ系統には、「商人は損していつか倉が建つ」もあります。これは、商人が損した損したと口癖のように言いながら、いつのまにか金持ちになっていることを表します。商人の抜け目なさを評する意味に加え、当面の損を覚悟して最終的な利益を図る商売上の心得としても読むことができます。

「商人は損と原価で暮らす」は、これら二つの発想を短くまとめた形といえます。「損だ」と言い、「原価だ」と言いながら、その商いで生活を成り立たせているという見方が、一つの表現にまとまっています。

さらに広く見ると、江戸時代の商いには、値段をめぐる駆け引きが深く関わっていました。「掛値無」は、物を売るときに実際より高い値段をつけないことを表し、『日本永代蔵』(1688年・江戸時代前期、井原西鶴著)にも「現銀売にかけねなし」という用例が出てきます。

三井越後屋は、延宝元年(1673年)に江戸本町で開かれ、のちに「現金掛け値なし」の商法で発展しました。この商法は、掛け売りをせず、正札どおりに現金で商品を売る方式で、値引き交渉を前提に高めの値段をつける慣行を改めるものでもありました。

「現金掛け値なし」が特別な商法として広まったことは、逆にいえば、値段に掛け値や交渉が入りやすい商いが広く行われていたことを示しています。そのような世の中では、「原価だ」「損だ」という売り手の言葉にも、買い手は注意して耳を傾ける必要がありました。

また、「商人の空誓文」は、商人の言動には駆け引きが多く、信用しがたいことをいう言葉です。『吾吟我集』(1649年・江戸時代前期、石田未得著)には「あき人のそらせいもん」という古い用例があり、商人の言葉を警戒する発想が江戸時代前期にはすでに表れていました。

したがって、このことわざは、一つの物語や有名な事件から生まれた故事ではありません。商いの場でくり返された「損」「原価」「元値」といった売り言葉と、それをうのみにしない世間の知恵が重なり合って、今の形に整った言い方です。

「商人は損と原価で暮らす」の使い方

健太
商店街のおもちゃ屋さんで、店主の人がこれ以上安くしたら原価割れで大損だよって笑いながら言っていたんだ。
ともこ
あら、健太くん、その言葉をそのまま信じちゃったの?
健太
えっ、だって本当に困った顔をしていたから、かわいそうだなって思ってさ。
ともこ
商人は損と原価で暮らすって言うでしょう。お店がずっと続いているのは、ちゃんと利益が出ているからなんだよ!
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「商人は損と原価で暮らす」の例文

例文
  • 閉店セールで赤字覚悟と書いてあっても、商人は損と原価で暮らすという言葉を思い出し、すぐには飛びつかなかった。
  • 問屋が原価ぎりぎりだと強調したが、商人は損と原価で暮らすというので、父は相場を確かめてから契約した。
  • 祭りの屋台が損をしていると言いながら毎年出店を増やしており、商人は損と原価で暮らすそのものだった。
  • 店主はもうからないとこぼしていたが、新しい店を出した様子を見ると、商人は損と原価で暮らすと思わずにはいられない。
  • 特別価格だとすすめられても、商人は損と原価で暮らすという見方を忘れず、必要な品かどうかを考えた。
  • 取引先の赤字説明をそのまま信じず、商人は損と原価で暮らすという戒めに従って、見積もりの内訳を確認した。

主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』Oxford University Press.


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