「杞憂」の意味とは(出典・故事)
【故事成語】
杞憂
【読み方】
きゆう
【意味】
心配しなくてもよいことを、むやみに心配すること。取り越し苦労。「憂」は心配する意味。
わざわざ自分でトラブルや心配ごとを作り出して、結局「あれ、こんなこと心配する必要なかったわ」と気付くっていう。無駄にエネルギーを使ってしまうことを教えてくれる言葉やな。
【出典】
「列子」
【故事】
昔、中国の杞(き)の国の人が天地が崩れ落ちてきたらどうしようと心配して、夜も寝られず、食事もしなかったという故事による。「列子」より。
「杞憂」の解説
「杞憂」の言葉の由来は、中国の昔の話に出てくる杞という国からきているんだよ。
「杞」というのは、中国の古い時代、周の時代に存在した小さな国の名前だったんだ。その国の人が、空から地面が落ちてきたらどうしよう、地面が壊れたらどうしようと心配して、寝ることも食べることもできなくなってしまったという話があるんだ。
でもね、空から地面が落ちてくることなんて、普通はありえないよね。だから、この話から「杞憂」という言葉が生まれて、本当には起こらないことを心配すること、つまり取り越し苦労をすることを指すようになったんだよ。それが「杞憂」の由来なんだよ。
「杞憂」の使い方
「杞憂」の例文
- もしかすると、彼は出てこないかもしれないという考えは杞憂に終わり、そう待つまでもなく静かに扉が開いて彼が出てきた。
- あまりに疲れていたので、このまま眠ってしまったら、乗り過ごして終点まで乗ってしまうんじゃないかと思ったが、杞憂に終わった。
- 命にかかわる病気なのではないかと思い、病院に行って診察してもらったのだが、杞憂だったのでよかった。
- こんなに見晴らしのいいところで、敵に襲われたらどうしようかと思ったが、それは杞憂であり、周辺には敵影は認められなかった。
- 長いあいだ私を苦しめてきたあの心配は、実のところ杞憂だったのだ、と気づいた。
【注意!】間違った例文
「母親が事故で入院した。大丈夫かと杞憂している。」
「杞憂」の文学作品などの用例
五人目に現れたのは、大島左太夫であった。彼は今日の忠直卿の常軌を逸したとも、思われるふるまいについて、かすかながら杞憂をいだく一人であった。むろん、彼は自分の主君が、自分たちの昨夜の立ち話を立ち聞きした当の本人であろうとは、夢にも思っていなかった。(菊池寛の忠直卿行状記より)
言い換えれば、無駄な心配や、事前に考えすぎて後悔するような状況のことを示している。