【ことわざ】
有っても苦労、無くても苦労
【読み方】
あってもくろう、なくてもくろう
【意味】
財産や子どもは、あればそれ相応の苦労があり、なければないで別の苦労があるということ。


【類義語】
・有って地獄、無くて極楽(あってじごく、なくてごくらく)
「有っても苦労、無くても苦労」の語源・由来
「有っても苦労、無くても苦労」は、財産や子どもの有無をめぐる生活上の実感から生まれたことわざです。「有っても」と「無くても」を向かい合わせにし、どちらを選んでも苦労が残るという考えを、短く覚えやすい形にしています。ここでいう「有無(うむ)」は、あることとないこと、あるなしを指す言葉です。
このことわざで特に取り上げられるのは、財産と子どもです。財産は、少なければ生活の不安になり、多ければ守ること、分けること、管理することへの心配が出てきます。子どもは、いなければ寂しさや周囲からの重圧があり、いれば育てる費用や将来への心配が生まれます。つまり、このことわざは「多ければ必ず幸せ、なければ必ず不幸」と単純に決めつけない、生活の深い見方を表しています。
言い方には、かな書きの「あっても苦労、なくても苦労」と、漢字を用いた「有っても苦労、無くても苦労」の形があります。かな書きは日常のことばとしてやわらかく、漢字表記は「有」と「無」の対立がはっきり見えるため、ことわざの骨組みが分かりやすくなります。
「苦労」は、仕事、生活、心配ごとなどのために心身を使って、つらい思いをすることを指します。中世以後の日本語では、「労苦」よりも「苦労」の形が一般に用いられ、生活や会話の中で自然に働く言葉として広がっていきました。
このことわざの近い言い方に、「有って地獄、無くて極楽」があります。こちらは、金や子どもは持つと苦労や心配が増えるため、むしろないほうが気楽だという意味を表します。「有っても苦労、無くても苦労」は、どちらかを勝ち負けで決めるよりも、どちらにもそれぞれの重さがあると見る、より穏やかな表現です。
現在の使い方では、財産や子どもの話だけでなく、手に入れたいものにも責任や心配がついてくるという場面にも広げて用いられます。ただし、本来の中心は、財産や子どものように、人生に深く関わるものをめぐる苦労にあります。そのため、軽い買い物や小さな迷いだけに使うと、ことわざの重みが少し弱くなります。
「有っても苦労、無くても苦労」の使い方




「有っても苦労、無くても苦労」の例文
- 受けついだ土地の管理に悩む祖父を見て、財産は有っても苦労、無くても苦労だと感じた。
- 貯金が少なければ生活が不安で、多ければ守り方や使い方に迷うので、有っても苦労、無くても苦労という言葉が身にしみる。
- 子どもがいない寂しさと、子育ての心配の両方を思うと、有っても苦労、無くても苦労という面がある。
- 会社の資金は足りなくても困るが、急に増えても管理が難しく、有っても苦労、無くても苦労だ。
- 親せきの間で財産の分け方が問題になり、有っても苦労、無くても苦労ということわざを思い出した。
- 子どもの進学費用に頭を悩ませる両親を見て、有っても苦労、無くても苦労という言葉の重みを知った。
主な参考文献
・三省堂編修所編『新明解故事ことわざ辞典 第二版』三省堂、2016年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。























