【慣用句】
飴と鞭
【読み方】
あめとむち
【意味】
甘い扱いや利益を与える一方で、厳しい罰や締めつけも用い、人を従わせたり動かしたりすること。


【英語】
・carrot and stick(報酬と罰を組み合わせる方法)
【類義語】
・人参と鞭(にんじんとむち)
・信賞必罰(しんしょうひつばつ)
・硬軟両様(こうなんりょうよう)
【対義語】
・放任主義(ほうにんしゅぎ)
「飴と鞭」の語源・由来
「飴と鞭」は、もともと、相手が喜ぶものを与えて引きつける面を「飴」、相手を恐れさせたり罰したりする面を「鞭」にたとえた表現です。甘いものと痛みを与える道具を並べることで、やさしい扱いと厳しい扱いの対比が、一目で分かる形になっています。
この言い方の背景としてよく知られているのは、19世紀のドイツで宰相を務めたオットー・フォン・ビスマルクの政策です。ビスマルクは、社会主義運動を厳しく取り締まる一方で、労働者に対して社会保険などの制度を整え、反発をやわらげようとしました。
「鞭」に当たる政策として、1878年の社会主義者鎮圧法があります。この法律は、社会民主主義や社会主義・共産主義をめざす団体、集会、新聞などを禁じるもので、ビスマルク政権の抑圧的な政策を代表する法律でした。
一方、「飴」に当たる政策として、1883年の労働者疾病保険、1884年の災害保険、1889年の老齢・廃疾保険が挙げられます。これらは、労働者に一定の安心を与え、国家への結びつきを強めようとする政策でしたが、政治上の自由を広げるものではありませんでした。
もとのドイツ語には、「mit Zuckerbrot und Peitsche」という言い方があります。Zuckerbrot は古くは甘い菓子を指し、Peitsche は鞭を指します。このため、日本語の「飴」は、ドイツ語の甘い食べ物を、より分かりやすい甘いものに置き換えた表現といえます。
ビスマルクの政策は、社会主義者鎮圧法による弾圧と、1883年以降の社会保険諸立法による懐柔策を合わせたものとして語られてきました。後には、この政治的な場面だけでなく、しつけ、指導、管理などの場面にも広がり、甘い扱いと厳しい扱いを使い分ける方法を表す言葉として定着しました。
現在の「飴と鞭」は、単に「やさしさと厳しさの両方がある」というだけでなく、相手を動かすために、利益やほめ言葉と、罰やおどしを組み合わせるという意味を含みます。そのため、よい指導をほめる言葉としてよりも、人を支配したり都合よく動かしたりする方法を少し批判的に述べる場合にも使われます。
「飴と鞭」の使い方




「飴と鞭」の例文
- 部員をやる気にさせるため、監督はごほうびと厳しい練習を組み合わせた飴と鞭の方法をとった。
- 会社は成果を出した社員に賞金を出し、目標を大きく下回った部署には改善計画を求めるという飴と鞭を使った。
- 母はゲーム時間を増やす約束と、約束を破ったときの禁止を並べて、飴と鞭で弟の生活を整えようとした。
- その政策は補助金で協力を引き出す一方、違反には重い罰を科す飴と鞭のやり方だった。
- 健太は弟にお菓子をあげたり、片づけないとテレビを消すと言ったりして、飴と鞭で手伝わせようとした。
- 大会前のチーム作りには、励ましだけでも叱責だけでもなく、飴と鞭の使い方が問われる。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・ブリタニカ・ジャパン編『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・平凡社編『世界大百科事典』平凡社。
・Dudenredaktion『Duden Deutsches Universalwörterbuch』Dudenverlag.
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press.























