【慣用句】
草の根を分けて探す
【読み方】
くさのねをわけてさがす
【意味】
あらゆる手段を尽くし、残すところがないほど隅々まで探し求めること。


【英語】
・leave no stone unturned.(できる限りの手段をすべて尽くす)
【類義語】
・草を分けて探す(くさをわけてさがす)
・虱潰し(しらみつぶし)
「草の根を分けて探す」の語源・由来
「草の根を分けて探す」は、地面を覆う草をかき分け、外からは見えない根元まで、一か所ずつ調べる姿を表した言い方です。「草の根」は、ここでは地域の住民や民衆を表す「草の根運動」などの意味ではなく、土の近くに隠れている草の根元そのものを指します。そこまで分けて見るという誇張から、見落としのないよう徹底して探すという意味が生まれました。
この表現につながる古い用例は、『花世の姫(はなよのひめ)』(室町時代末期成立、作者未詳)に出てきます。『花世の姫』は、継母に疎まれて山中へ捨てられた姫が、山姥の助けを受け、やがて幸せを得る御伽草子(おとぎぞうし)です。
物語では、父の留守中に、継母が花世姫をだまして、人里離れた山へ捨てさせます。帰宅した父は、ただ一人の娘がいなくなったと知って深く悲しみ、大勢の者を方々へ向かわせ、富士の裾野や山々をくまなく捜させました。
その場面には、「富士の裾野のくさをわけ、山々の木の下の草の根を分けて、至らぬ所もなく尋ね給へども」とあります。草が茂る野山を実際にかき分けながら、捜していない場所が一つもないほど、探し回ったという意味です。
この用例では、「草を分ける」「草の根を分ける」という具体的な動作と、「あらゆる場所を徹底して探す」という比喩的な意味とが重なっています。初めから、単なる草むらの捜索だけを述べたものではなく、父が手を尽くして娘を捜し求める切実さまで表す言い回しとなっています。
古い形では、「草を分けて捜す」のほか、「草を分けて尋ねる」「草を分けて詮議する」などともいいました。「尋ねる」は行方を求めること、「詮議(せんぎ)する」は、ここでは行方の分からない者を捜索することを表します。動詞が異なっても、草をかき分けるほど隅々まで捜すという意味は共通しています。
江戸時代末期には、歌舞伎『三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)』(1860年、河竹黙阿弥作)の六幕目に、「草を分けて詮議致せど、一向に行方知れず」とあります。ここでは、方々を捜索しても相手の行方が分からないという意味で使われており、草のない町中の出来事にも用いられる比喩的な言い回しとして、定着していたことが分かります。
やがて、「草の根を分けて探す」「草の根を分けて捜す」という形が広く用いられるようになりました。「草の根を分けても探す」「草の根を分けても探し出す」と「ても」を添えると、どれほど手間がかかっても必ず見つけるという強い決意が、いっそうはっきりと表れます。
現在では、野山で人や物を探す場合に限りません。失われた品物、事件の証拠、行方の分からない人物、必要な情報などを、考えられる手段をすべて使って捜し求める場面に用います。草の根までかき分けるという細やかな動作が、見落としを許さず、最後まで諦めずに探す姿勢を表す慣用句となったのです。
「草の根を分けて探す」の使い方




「草の根を分けて探す」の例文
- 捜索隊は、行方不明になった登山者を草の根を分けて探す覚悟で山へ入った。
- 母は、祖母から譲られた指輪を草の根を分けて探すように、家中の引き出しを確かめた。
- 警察は事件を解決するため、わずかな手掛かりでも草の根を分けて探す方針を固めた。
- 新聞記者は事故の真相を知る証人を草の根を分けて探すことにした。
- 研究者たちは、所在の分からなくなった古文書を草の根を分けて探すように、各地の蔵書を調べた。
- 命を救ってくれた恩人に礼を伝えるため、家族はその人を草の根を分けて探す決心をした。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・現代言語研究会編『慣用句の辞典』あすとろ出版、2007年。
・横山重・太田武夫校訂『室町時代物語集 第三』井上書店、1962年。
・作者未詳『花世の姫』室町時代末期成立。
・河竹黙阿弥『三人吉三廓初買』1860年。
・Cambridge University Press『Cambridge English Dictionary.』























