【故事成語】
圧巻
【読み方】
あっかん
【意味】
全体の中で、最もすぐれた部分。特に、書物・作品・演技・展示・試合などの中で、他を抜いて見事なところをいう。


【英語】
・the highlight(最も見どころとなる部分)
【類義語】
・白眉(はくび)
・出色(しゅっしょく)
「圧巻」の故事
圧巻の「巻」は、もともと巻物や書物を指し、そこから答案や一まとまりの詩文を指すことがあります。中国の官吏登用試験である科挙(かきょ)では、及第者のうち最優秀者の答案をほかの答案の上に載せたことから、「巻を圧する」、つまり多くの答案の上にあるほどすぐれている、という意味が生まれたと伝わります。
ただし、圧巻は試験の話だけに閉じた言葉ではありません。もともとは、中国で詩文や絵画の書物の中で最もすぐれているものを指した言葉でもあり、『潜渓詩眼(せんけいしがん)』(11〜12世紀・北宋の時代)には、すでに「圧巻」という表現が使われていたことを示す記述があります。
その古い用例では、杜甫の「奉贈韋左丞丈二十二韻」という詩について、「此詩前賢錄為壓卷」という趣旨の言葉が出てきます。これは、昔のすぐれた人々がこの詩を「圧巻」として記録した、という意味で、単に目立つ詩というより、全体の組み立てが整い、巻の中で特にすぐれた作品として評価されたことを表しています。
この場面で大切なのは、「圧する」という字が、力で押しつけることだけを表しているのではない点です。多くの作品や答案の中で一つが上に立ち、ほかをしのぐほどすぐれている、という評価の言葉として働いています。そのため、圧巻は「大きくてすごい眺め」という意味だけではなく、「全体の中で一番すぐれている」という考えを中心にしています。
日本語の古い用例としては、『両足院本山谷抄』(1500年ごろ)に、詩を編む際には圧巻が大事であるという内容の言い方が出てきます。ここでの圧巻は、詩文の集まりの中で特に高く評価される作品を指しており、中国の詩文批評の言葉が、日本でも漢詩文を読む人々の間で用いられていたことが分かります。
その後、圧巻は詩文や書物だけでなく、作品全体の中で最もすぐれた部分を表す言葉へ広がりました。近代以降の用例では、「全作品中の圧巻」のように、ある作者の作品群の中で最もすぐれたものをいう形も定着しています。
現在では、演奏、演劇、映画、展示、試合、発表など、さまざまな場面で使われます。どの場合も、ただ派手で迫力があるというだけでなく、「ほかと比べて特にすぐれている」「全体の中で最も強く心に残る」という意味が中心になります。
「圧巻」の使い方




「圧巻」の例文
- 決勝戦の最後に見せた逆転シュートは、今大会の圧巻だった。
- 文化祭の展示では、体育館いっぱいに並んだ共同制作の壁画が圧巻であった。
- その小説は、主人公が真実に気づく終盤の場面が圧巻である。
- 新商品の説明会では、実物を使って課題解決の手順を示した実演が圧巻であった。
- ピアノ発表会では、難しい曲を落ち着いて弾き切った姉の演奏が圧巻だった。
- 博物館の特別展はどの資料も興味深かったが、復元された巨大な船の展示が圧巻だった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・范温『潜渓詩眼』宋代。
・仇兆鰲輯註『杜詩詳注』康煕32年序。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』。























