【慣用句】
暗礁に乗り上げる
【読み方】
あんしょうにのりあげる
【意味】
思いがけない障害や困難によって、計画・交渉・捜査などの進行が妨げられること。


【英語】
・hit a snag(思わぬ問題にぶつかる)
・run into difficulties(困難に直面する)
【類義語】
・行き詰まり(いきづまり)
・難航(なんこう)
・頓挫(とんざ)
【対義語】
・順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
「暗礁に乗り上げる」の語源・由来
「暗礁」は、もとは海面の下に隠れていて見えない岩や珊瑚礁(さんごしょう)を指す言葉です。船の航行では、外から見えにくい暗礁に船が乗ってしまうと、先へ進みにくくなります。「乗り上げる」も、船や車が進行中に障害物などの上にのってしまうことを表します。
江戸時代後期には、「暗礁」は実際の海の地形を表す言葉として用いられていました。寺門静軒の『江戸繁昌記(えどはんじょうき)』(1832〜1836年・江戸時代後期、寺門静軒著)は、江戸市中の繁栄を記した地誌・漢文戯作で、その中に「富津の暗礁」という例があります。この段階の「暗礁」は、海面の下に隠れた岩という具体的な意味を保っています。
その一方で、「暗礁」には、急に出会う困難という比喩の意味も生まれています。水面下に隠れた岩は、船が近づくまで危険が見えにくいものです。そのため、物事を進めている途中で、思いがけず現れて進行を妨げる問題を「暗礁」と表すようになったと考えられます。
「暗礁に乗り上げる」というまとまった形では、明治時代の国木田独歩の日記『欺かざるの記(あざむかざるのき)』(前編1908年、後編1909年刊行)に用例があります。明治二九年四月二二日の記述に、「此の暗礁に乗り上げたり」とあり、実際の船ではなく、新婚生活の中で生じた危険や行き詰まりを、船が暗礁に乗り上げた状態にたとえています。
この明治期の用例では、「暗礁」は海の岩そのものではなく、人間関係や生活上の難局を表しています。また、「乗り上げる」は、前へ進んでいたものが障害物にかかって止まる様子を保っています。つまり、見えにくい岩に船が乗って動きにくくなるという具体的な場面が、物事の進行が思わぬ問題で妨げられるという現在の意味につながっています。
現在では、計画、交渉、捜査、話し合いなどが、途中で予期しない問題にぶつかって進みにくくなる場合に広く用いられます。完全な失敗を必ず表すのではなく、まずは進行が妨げられ、打開策が必要になっている状態を表す言い方です。
「暗礁に乗り上げる」の使い方




「暗礁に乗り上げる」の例文
- 新しい図書室を作る計画は、工事費が予想以上に高く、暗礁に乗り上げることになった。
- 両校の交流行事は、会場が使えなくなり、暗礁に乗り上げるおそれが出た。
- 父の店の改装計画は、必要な許可が下りず、暗礁に乗り上げる。
- 話し合いは、予算の分担で意見が分かれ、暗礁に乗り上げるかに見えた。
- 新商品の開発は、部品の入荷が止まり、暗礁に乗り上げる結果となった。
- 地域の祭りを復活させる案は、運営する人手が足りず、暗礁に乗り上げるところだった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1984〜1989年。
・国木田独歩『欺かざるの記』1908〜1909年。























