【ことわざ】
案じるより念じろ
【読み方】
あんじるよりねんじろ
【意味】
心配して思い悩むだけでなく、神仏に祈って助けやよい結果を願うほうがよい、という教え。


【英語】
・Care is no cure.(心配しても解決にはならない)
「案じるより念じろ」の語源・由来
「案じるより念じろ」は、「案じる」と「念じる」を並べ、心配することと祈ることを比べたことわざです。「案じる」は「案ずる」から変化した言い方で、「案ずる」には、もともと考えをめぐらす、工夫するという意味があり、後に物事の成り行きを心配する意味が強くなりました。江戸時代以降、「案じる」という形が、将来の心配などを表す言い方として定着していきました。
古い用例としては、『竹取物語』(9世紀末〜10世紀初めごろ成立)に、考えをめぐらす意味の「案ずる」が出てきます。また、『中務内侍日記(なかつかさのないしにっき)』(鎌倉時代後期、藤原経子著)には、成り行きを思い悩む意味の用例があり、さらに江戸時代の歌謡にも心配する意味で使われています。つまり、「案じる」は、ただ考えることから、不安を抱いて思い煩うことへと意味を広げてきた言葉です。
一方の「念じる」は、「念ずる」から変化した言い方です。「念ずる」には、物事の成就を強く願う、神仏に心の中で祈る、経文や名号を心の中で唱える、という意味があります。『うつほ物語(うつほものがたり)』(平安時代、円融朝から一条朝初期にかけて成立、作者未詳)にも「念ずる」の古い用例があり、心の中で強く思う働きを表す言葉として古くから使われてきました。
「念じる」という上一段の形は、江戸時代後期の『花江都歌舞妓年代記(はなのえどかぶきねんだいき)』(1811〜1815年刊、烏亭焉馬編)にも用例があり、「念ずる」から日常的な言い方へ移っていったことが分かります。祈りそのものは、神仏に願い事をする「祈願」とも深くつながり、個人や集団が、病気平癒、安産、雨ごいなどを願って神仏に祈る習わしとして、広く行われてきました。
このことわざの要点は、「心配するな」と突き放すことではありません。心配してばかりいると、心は同じところをめぐり、かえって落ち着きを失いやすくなります。そこで、どうにもならない不安を抱えるよりも、神仏に願いを向けることで心を整え、よい結果を待とう、という考えを短く言い表しています。
したがって、「案じるより念じろ」は、努力や準備をしなくてもよいという意味ではありません。できることをしたうえで、なお心配が消えないときに、思い悩むだけでなく、祈りによって気持ちを静めるところに、このことわざの味わいがあります。
「案じるより念じろ」の使い方




「案じるより念じろ」の例文
- 大事な手術を前に、家族は案じるより念じろの思いで平癒を祈った。
- 遠足前夜、雨の予報ばかり気にしても仕方がないので、案じるより念じろと晴れを願った。
- 試合の抽選結果を待つ選手たちは、案じるより念じろと静かに勝利を祈った。
- 受験票を確認したあとは、案じるより念じろと合格を祈って心を落ち着けた。
- 山で連絡が取れなくなった仲間を待つ間、案じるより念じろと全員の無事を祈った。
- 大切な取引の返事を待つ担当者は、案じるより念じろという気持ちでよい知らせを願った。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・Martin H. Manser編、Rosalind Fergusson・David Pickering協力『The Facts On File Dictionary of Proverbs Second Edition』Facts On File、2007年。























