【ことわざ】
朝日が西から出る
【読み方】
あさひがにしからでる
【意味】
絶対に起こるはずがないことのたとえ。自然の道理に反するほど、あり得ない事態をいう。


【英語】
・when pigs fly(絶対に起こらないと思う)
・never in a million years(とても起こりそうにない、または不可能である)
【類義語】
・石が流れて木の葉が沈む(いしがながれてこのはがしずむ)
・石に花(いしにはな)
・馬の角(うまのつの)
・烏の頭が白くなる(からすのかしらがしろくなる)
【対義語】
・水は逆様に流れず(みずはさかさまにながれず)
「朝日が西から出る」の語源・由来
「朝日」は、朝に東から昇る太陽、またはその光を表す言葉です。このことわざは、その朝日が「西から出る」と言うことで、自然の道理に反するほどあり得ないことを表します。
太陽は、地上から見ると東の地平線から昇り、西の空へ沈んでいきます。これは太陽そのものが地球の周りを動くためではなく、地球の自転によってそのように見える日周運動によるものです。
そのため、「朝日が西から出る」という言い方は、ただ珍しいことではなく、普通の自然の流れが完全に逆になるほどの不可能を示します。単なる驚きよりも強く、「まず起こるはずがない」という判断を含む表現です。
古い形に近い用例としては、江戸時代前期の浄瑠璃(じょうるり)『曾我扇八景』(1711年ごろ)の中に、「朝日も西から出ぬべし」という表現が出てきます。この一節は「不思議千万」という語の用例として伝わり、はなはだしく不思議なさまを言う文脈で用いられています。
この古い用例では、現在の形の「朝日が西から出る」と完全に同じ言い回しではなく、「朝日も西から出ぬべし」という形で表れています。「出ぬべし」は、ここでは「出るだろう」「出てもおかしくないほどだ」という趣をもつ古い言い方として読めます。
つまり、近世の段階ではすでに、朝日が西から出るという不可能な景色が、非常に不思議なことや常識を超えたことをたとえる材料として使われていたことが分かります。現在のことわざは、その発想を分かりやすく整え、「朝日が西から出る」という形に固定して用いられるようになったものです。
同じ発想をもつ言い方に、「西から日が出る」や「お天道さんが西から出る」があります。いずれも、太陽が本来とは反対の方角から昇るというあり得ない状態を思い浮かべさせ、絶対に起こるはずのないことを強く表します。
また、「石が流れて木の葉が沈む」や「石に花」は、自然のあり方や現実の道理に反することを用いて、起こるはずのないことをたとえる表現です。「朝日が西から出る」も、こうした不可能を自然物の逆転で表すことわざの一つとして理解できます。
ただし、「朝日が西から出る」は、中国古典の具体的な人物や事件にもとづく故事成語ではありません。太陽の動きという身近な自然の観察をもとに、日本語の中で「あり得ないこと」のたとえとして使われてきたことわざです。
現在では、実際に自然現象を説明する場面よりも、「そんなことは起こらない」という判断を、少し強めて言う場合に使われます。人の急な変化をからかうときにも用いられますが、中心にある意味はあくまで「絶対にあり得ないこと」です。
「朝日が西から出る」の使い方




「朝日が西から出る」の例文
- 壊れた時計が電池も入れずに動き出すなど、朝日が西から出るような話だ。
- 提出日を過ぎた答案が自然に満点へ変わることはなく、そんな期待は朝日が西から出るに等しい。
- 一度も応募していない作文コンクールで入賞するなど、朝日が西から出るようなことだ。
- あの几帳面な姉が、卒業式の開始時刻を忘れるとは、朝日が西から出るほどの出来事だ。
- 試合終了後に得点が勝手に増えて逆転するなど、朝日が西から出る話にすぎない。
- 毎日練習を休んでいた選手が何の努力もなく大会新記録を出すとは、朝日が西から出るようなものだ。
主な参考文献
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・小学館『大辞泉』編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1994年。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary, Merriam-Webster.























