【ことわざ】
朝焼けはその日の洪水
【読み方】
あさやけはそのひのこうずい
【意味】
朝焼けが出ると、その日は大雨になりやすいという天気の言い伝え。雨や川の増水に用心せよという意味で用いる。


【英語】
・Red sky at night, shepherd’s delight; red sky in the morning, shepherd’s warning.(夕焼けは好天、朝焼けは悪天候への用心)
【類義語】
・朝焼けは雨、夕焼けは晴れ(あさやけはあめ、ゆうやけははれ)
・朝虹はその日の洪水(あさにじはそのひのこうずい)
【対義語】
・夕焼けは晴れ(ゆうやけははれ)
「朝焼けはその日の洪水」の語源・由来
朝焼けはその日の洪水は、中国の古い故事から出た言葉ではなく、空の様子を見て天気を読む日本の天気俚諺(てんきりげん)の一つです。朝、東の空が赤く染まることを、その日の雨の前ぶれとして受け取る経験則を、短く強い言い方にしたことわざです。
このことわざの中心にあるのは、朝焼けそのものよりも、その後に天気が崩れやすいという見方です。近い言い方に「朝焼けは雨、夕焼けは晴れ」があり、朝の赤い空を雨のきざし、夕方の赤い空を晴れのきざしと見る考え方が広く知られています。
天気の動きと結びつけると、この言い伝えは分かりやすくなります。日本付近では、上空の強い西風のため、低気圧(ていきあつ)や高気圧(こうきあつ)が西から東へ流され、天気も西から東へ移っていくことが多くなります。
朝焼けが見えるときは、日が昇る東の空に雲が少なく、東側には晴れの領域があると見られます。ところが、天気が西から東へ移りやすい場合、晴れをもたらした高気圧が東へ離れ、西から低気圧や前線が近づいてくる流れになりやすいのです。
また、朝焼けが美しく見えるときには、空気中の水蒸気が多かったり、雲が朝日に照らされて赤く見えたりすることがあります。低気圧や前線が近づいて水蒸気や雲が増えると、雨へ向かう条件が整いやすくなります。
「洪水」という強い言葉は、単なる小雨ではなく、川の増水や外出の危険まで思い浮かべさせる表現です。ことわざの意味としては、朝焼けを見たらその日の大雨に用心せよ、という警戒の気持ちを強めて伝える言い方になっています。
香川県土庄町(とのしょうちょう)には、「朝焼けはその日の洪水」とともに、「朝焼けは蓑ひねれ」「朝ニッコリはあと悪し」という近い言い伝えが残っています。ここでいう蓑(みの)は、かややすげなどで編んだ、雨や雪を防ぐ昔の外衣で、雨具を用意せよという実用的な知恵が言葉の中に含まれています。
「朝焼けは蓑ひねれ」という言い方は、朝焼けを見たら雨具を整える、という行動に直接つながっています。これに対して「朝焼けはその日の洪水」は、同じ気象の見立てを、より強い警戒の言葉として言い表したものといえます。
このことわざは、地域の人々が農作業、漁、通学、川沿いの移動などを安全に行うために、空を観察してきた生活の知恵と結びついています。科学的な天気予報が身近になる前、人々は朝の空、雲、風、虹などを見て、その日の行動を決めていました。
ただし、天気のことわざは、いつでも必ず当たる予言ではありません。天気に関することわざには科学的に説明できるものもありますが、低気圧が近づいても必ず雨が降るわけではなく、季節や地域によって当たり方が変わることもあります。
現在このことわざを使うときは、朝焼けを見てその日の大雨や川の増水に気をつける、という注意の言葉として受け取るのが自然です。昔の人が空の変化を細かく見て、早めに備えようとした姿勢が、今の意味にもそのままつながっています。
「朝焼けはその日の洪水」の使い方




「朝焼けはその日の洪水」の例文
- 朝焼けはその日の洪水というので、祖父は畑の水路を点検してから出かけた。
- 朝焼けはその日の洪水を思い出し、川沿いの遠足は体育館での活動に変更された。
- 漁師たちは、朝焼けはその日の洪水と心得て、早朝の出船を見合わせた。
- 朝焼けはその日の洪水と言われる日に、母は洗濯物を外に干さず室内に移した。
- 自治会では、朝焼けはその日の洪水という昔からの言い伝えを、防災訓練の話題に取り上げた。
- 山道を歩く予定だった兄は、朝焼けはその日の洪水と聞いて、雨雲の動きを確かめてから出発した。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・小川環樹・西田太一郎・赤塚忠・阿辻哲次・釜谷武志・木津祐子編『角川新字源 改訂新版』KADOKAWA、2017年。
・猪熊隆之『天気のことわざは本当に当たるのか考えてみた』ベレ出版、2023年。
・総務省消防庁地域防災室『防災に関わる「言い伝え」』2007年公開、2023年最終更新。























