【ことわざ】
足下から鳥が立つ
【読み方】
あしもとからとりがたつ
【意味】
身近なところで、思いがけない出来事が突然起こること。また、急に思い立って、あわただしく物事を始めること。


【英語】
・Quite abruptly.(急に、思い立ったように)
・I never dreamed that such a thing would happen in my immediate circle.(身近でそんなことが起こるとは思わなかった)
【類義語】
・寝耳に水(ねみみにみず)
・青天の霹靂(せいてんのへきれき)
「足下から鳥が立つ」の語源・由来
このことわざの土台には、草むらなどに潜んでいる雉(きじ)や山鳥が、人のすぐ近くまで来たところで急に飛び出す情景があります。足もとで静かだったものが突然羽音を立てて動くため、思いがけない出来事や、急に騒がしくなる行動を表すたとえになりました。
古くは、狂言『素袍落(すおうおとし)』(室町末期〜近世初期に伝わる狂言)に、「足許から鳥の立つ様な」という形が出てきます。この作品では、主人がふと伊勢参宮を思い立ち、太郎冠者に伯父へ知らせる使いを命じる流れがあり、急なお使いを受けた驚きが、足もとから鳥が飛び立つような不意の出来事として表されています。
この古い段階では、「身近なところから突然、意外なことが起こる」という意味が強く表れています。鳥が遠くの空から来るのではなく、自分の足もとから立つため、驚きがすぐそばで起こるという感覚が、このことわざの中心にあります。
江戸時代になると、井原西鶴『世間胸算用(せけんむねさんよう)』(1692年刊、井原西鶴作)にも、「足もとから鳥のたつやうに」という形が出てきます。この作品は大晦日の町人たちの暮らしを描く読み物で、その中では、ふだんは手を休めていた者が急にばたばた働きだす様子に、この言い方が使われています。
ここから、「突然の出来事に驚く」という意味だけでなく、「急に思いついたように、慌てて物事を始める」という意味もはっきりします。足もとから鳥が飛び立つ瞬間の動きが、人間の急な行動にも重ねられたのです。
近代の用例では、田山花袋『生』(1908年)に、「足元から鳥の立つように急に思い立って」という形が出てきます。この例では、突然思い立って行動に移す意味で使われており、江戸時代に見られた慌ただしい行動の意味が、近代にも自然に受け継がれていることが分かります。
表記には、「足下」「足元」「足許」「足もと」などの形があります。古い例では「足許」「足もと」といった表記も出てきますが、いずれも「あしもと」、つまり自分のすぐ近くを表し、ことわざの中心となる情景は同じです。
このように、「足下から鳥が立つ」は、足もとの草むらから鳥が急に飛び立つ身近な驚きから生まれ、やがて意外な出来事と、急に始まる慌ただしい行動の両方を表すことわざとして定着しました。驚きの場所が「遠く」ではなく「足下」であることに、このことわざらしい切実さがあります。
「足下から鳥が立つ」の使い方




「足下から鳥が立つ」の例文
- 提出日の朝になって材料を買いに走るとは、足下から鳥が立つような始め方だ。
- 穏やかな会議の終わりに社長交代の知らせが入り、足下から鳥が立つ思いをした。
- 旅行の前夜に急に行き先を変えると言い出し、足下から鳥が立つような家族会議になった。
- 静かな町内会で突然大きな工事の話が出て、足下から鳥が立つような騒ぎになった。
- 夏休みの最終日に自由研究を始めるのは、足下から鳥が立つような行動だ。
- 友人が何の相談もなく引っ越しを決めたので、足下から鳥が立つように驚いた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・近藤いね子・高野フミ編集主幹『プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・『森藤左衛門本狂言・素袍落』室町末〜近世初。
・井原西鶴『世間胸算用』1692年。
・田山花袋『生』1908年。























