【故事成語】
朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失う
【読み方】
あしたにそのことをわするれば、ゆうべにそのこうをうしなう
【意味】
朝のうちから心を入れて取りかからなければ、夕方になっても成果を得られないということ。始めにすべきことを怠ると、後で望む結果を失うという戒め。


【英語】
・A stitch in time saves nine(早いうちの手当てが、後の大きな損を防ぐ)
【類義語】
・一日の計は朝にあり(いちにちのけいはあさにあり)
・始めが大事(はじめがだいじ)
・今日の一針明日の十針(きょうのひとはりあすのとはり)
「朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失う」の故事
この故事成語は、中国古典の『管子(かんし)』に出てくる「朝忘其事,夕失其功」という句にもとづく言葉です。『管子』は、春秋時代の斉(せい)の政治家である管仲(かんちゅう)の名に結びつけて伝わった思想書で、政治・経済・軍事・教育など、国を治めるための考えを広く扱っています。
管仲は斉の桓公(かんこう)に仕え、国を豊かにし、軍備を整え、桓公を春秋時代の有力な君主に押し上げた人物として知られます。ただし、『管子』は管仲一人がその時代に書いたものではなく、戦国時代から漢代にかけて、多くの考えがまとめられた書物と考えられています。
もとの句は、『管子』「形勢」に「曙戒勿怠,後稺逢殃。朝忘其事,夕失其功」と並んで出てきます。これは、夜明けには心を引きしめて怠ってはならず、朝にその務めを忘れれば、夕方にはその成果を失う、という流れで読むことができます。
ここでいう「朝」と「夕」は、一日の朝と夕方を表すだけではありません。物事の始まりと終わりを対にして、初めの段階で大切な務めを忘れると、結果が出る段階で功績を失う、という教えを強く示しています。
この句の意味は、『管子』「形勢解」でさらに分かりやすく述べられます。そこでは、君主に仕えて力を尽くさなければ罰を受け、父母に仕えて力を尽くさなければ親しまれず、学問を受けても努力を加えなければ成就しない、とあります。
その説明に続いて、「故朝不勉力務進,夕無見功」と記されています。朝のうちから力を尽くして進もうとしなければ、夕方には見るべき成果がない、という意味です。その結びとして「朝忘其事,夕失其功」が引かれており、この言葉が単なる早起きのすすめではなく、初めから自分の務めに力を尽くすことを説いていると分かります。
「其の事」の「事」は、ただの用事ではなく、自分が果たすべき大切な務めを指します。「其の功」の「功」は、努力の結果として得られる成果や成就を指します。したがって、この故事成語は、初めに目的を忘れたり、必要な努力を怠ったりすれば、最後に望む結果を得られないという、きびしいが実際的な教えです。
日本語では、原文の「朝忘其事,夕失其功」を訓読調にして、「朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失う」と表します。「其の」「忘るれば」という古風な言い方が残っているため、古典に由来する教訓としての重みを保っています。
現在の使い方では、一日の朝と夕方に限らず、勉強の初日、計画の立て始め、練習の始め、仕事の準備段階などにも広げて用いることができます。初めに何をすべきかを忘れず、力を尽くして進めることが、後の成果を守る道であるという意味につながっています。
「朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失う」の使い方




「朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失う」の例文
- 朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失うというように、試験勉強を初日から怠ったため、直前に覚える時間が足りなかった。
- 地域清掃の道具確認を朝にしなかったので、朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失う結果となり、作業が半分しか進まなかった。
- 新商品の説明資料を早めに作らなかったことが、朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失う失敗につながった。
- 朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失うを胸に、合唱コンクールの練習は初日から声出しを大切にした。
- 家族旅行の予約確認を後回しにしたせいで、朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失うように、希望の列車に乗れなかった。
- 朝に其の事を忘るれば、夕べに其の功を失うのだから、班の発表準備は役割を決めたその日に始めるべきだ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『管子』。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary, Merriam-Webster Incorporated.























