【慣用句】
飴をしゃぶらせる
【読み方】
あめをしゃぶらせる
【意味】
大きな利益を得るために、相手に少し利益を与えること。また、相手の喜びそうなことを言って、こちらの思うように乗り気にさせること。


【英語】
・sweet-talk someone(甘い言葉で相手をだます・その気にさせる)
【類義語】
・飴を舐らせる(あめをねぶらせる)
・甘茶を飲ます(あまちゃをのます)
「飴をしゃぶらせる」の語源・由来
「飴をしゃぶらせる」は、もともと甘い飴を口に含ませ、相手を喜ばせるという具体的な場面から広がった言い方です。飴は砂糖や水飴を煮詰めて作る甘い菓子で、「しゃぶる」は口の中に入れてなめたり吸ったりする動作を表します。甘いものを与えて相手の気分をよくするという発想が、比喩として人を誘い動かす意味へ移っていきました。
この言い方には、「飴を舐らせる(ねぶらせる)」という古い形もあります。「舐る」は、舌の先で物をなで味わう、なめる、しゃぶるという意味をもつ言葉です。そのため、「飴を舐らせる」と「飴をしゃぶらせる」は、飴をなめさせるという同じ具体的な動作をもとにした近い形として受け継がれました。
早い時期の用例として、江戸時代前期の狂歌集『卜養狂歌集(ぼくようきょうかしゅう)』(写本は1669年成立、1681年に印刷本を出版)に、「あめねふらせてだまし給ふか」という形が出てきます。この作品は半井卜養の狂歌集で、半井卜養は江戸時代前期の俳人・狂歌師として知られる人物です。
この用例では、約束した飴が来ないことをめぐって、「飴をねぶらせてだますのか」という趣旨の言い回しになっています。実際の飴を期待させる場面と、相手を喜ばせるように見せてだますという比喩が重なっており、現在の「相手をその気にさせる」「相手を油断させる」という意味に近い働きがすでに表れています。
その後、この表現は「飴を舐らせる」「飴をなめさせる」「飴をしゃぶらせる」などの形で使われるようになりました。甘い「飴」は、甘言(かんげん)、つまり人の気に入りそうなうまい言葉と結びつき、人の心を誘うものの代表として理解されるようになります。
現在の「飴をしゃぶらせる」は、単に親切にすることではありません。相手に小さな得や喜びを与えて、あとで自分に有利な流れを作るという、少し策略を含んだ慣用句として使われます。そのため、使う場面によっては、相手をだます、油断させる、取り込むというあまりよくないニュアンスも伴います。
「飴をしゃぶらせる」の使い方




「飴をしゃぶらせる」の例文
- 相手に少しだけ利益を返して飴をしゃぶらせる詐欺の手口には注意が必要だ。
- 商談の初めに大きな値引きを見せて飴をしゃぶらせるような進め方は、信頼を失うことがある。
- 相手チームを油断させるために初戦で飴をしゃぶらせる作戦は、試合の精神に合わない。
- 店員はおまけを付けて飴をしゃぶらせることで、客に高い商品を選ばせようとした。
- 兄は弟に先におやつを選ばせ、片づけを手伝わせようとしていたので、母は飴をしゃぶらせるような頼み方だと言った。
- うまい話で飴をしゃぶらせる相手には、すぐに飛びつかず、条件をよく確かめる必要がある。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年。
・近藤いね子・高野フミ編『プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・半井卜養『卜養狂歌集』1681年。























