【悪獣もなおその類を思う】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

悪獣もなおその類を思う

【ことわざ】
悪獣もなおその類を思う

【読み方】
あくじゅうもなおそのるいをおもう

【意味】
人に害を与えるような猛獣でさえ、同じ仲間を思う気持ちをもつ。まして人間なら、身内や仲間を思いやる心があるはずだということ。

ことわざ博士
「悪獣」は荒々しく恐ろしい獣を指し、「その類」は同じ仲間・同じたぐいを指すんだよ。
助手ねこ
人のこわさや荒々しさだけで判断せず、その人にも仲間を思う情があること、また人はなおさらその情を失ってはならないことをいう場面で用いるニャン。

【英語】
・There is honor among thieves.(悪人どうしにも守るべき仲間意識はある)
・Dog does not eat dog.(同じ仲間どうしは互いに傷つけない)

【類義語】
・鬼の目にも涙(おにのめにもなみだ)
・同病相憐れむ(どうびょうあいあわれむ)
・同類相求む(どうるいあいもとむ)

【対義語】
・骨肉相食む(こつにくあいはむ)

「悪獣もなおその類を思う」の語源・由来

ことわざを深掘り

「悪獣もなおその類を思う」は、「悪獣」「なお」「その類」「思う」という言葉を重ねて、どれほど荒々しく見えるものにも、同じ仲間を思う情がある、という考えを表した言い方です。「類」は、同じたぐい、仲間という意味をもつ言葉です。

「悪獣」という言葉は、単に「悪い動物」というより、人に害を加えるような恐ろしい獣を思わせる強い表現です。このことわざでは、最も荒々しく見える獣を引き合いに出すことで、仲間を思う心の根強さを際立たせています。

古い用例としては、『太平記(たいへいき)』(14世紀後半成立、室町時代の軍記物語)巻十三に、「虎狼悪獣」という形が出てきます。虎や狼のような恐ろしい獣をまとめていう表現で、「悪獣」が危険な猛獣を指す言葉として使われていたことが分かります。

その場面では、慈童が深い山に流され、普通なら虎や狼などを恐れるはずの場所で、不思議な力によって害を受けず、仙人のようになる話が語られます。「悪獣」は、山中の危険や恐ろしさを表す言葉として働いています。

このように、「悪獣」は中世の文章にも見える古い言葉ですが、ことわざ全体の形は、後のことわざ集に、まとまった言い方として収められます。藤井乙男編『諺語大辞典(げんごだいじてん)』(1910年・明治43年、有朋堂書店刊)は、この表現を大きなことわざ集の中に置いています。

同書には、古い表記で「惡獸モ猶ソノ類ヲ思フ」とあり、その意味として「猛惡なる猶同類に對する愛情を有す」と記されています。これは、猛々しく害をなすようなものでも、同じ仲間に対する愛情をもつ、という趣旨です。

表記は、時代とともに「惡獸」から「悪獣」へ、「猶」から「なお」へ、「思フ」から「思う」へと、現代の読みやすい形に整えられてきました。意味の芯は変わらず、荒々しいものにも同類への情がある、という考えを伝えています。

このことわざに近い発想として、同じ種類のものが自然に求め合うことをいう「同類相求む」や、同じ気質の者が互いに寄り合うことをいう「同気相求む」があります。ただし、「悪獣もなおその類を思う」は、ただ仲間が集まるというだけでなく、荒々しいものにも仲間を思う情が残る、という点に重みがあります。

また、「鬼の目にも涙」が、無慈悲な者にも時には情けが起こることをいうのに対して、このことわざは、とくに身内や仲間への情に焦点を当てています。こわそうに見える相手や、ふだんは厳しい相手にも、自分の仲間を大切にする心があることを示す言い方です。

現在では、乱暴そうな人や厳しい人であっても、家族や友人、仲間を思って行動する場面に用いられます。同時に、人間ならばなおさら、身近な人を思いやる心を忘れてはならない、という静かな戒めも含むことわざです。

「悪獣もなおその類を思う」の使い方

健太
体育館の片づけで、いつもこわい六年生が、自分の班の一年生の荷物を持ってあげていたよ。
ともこ
意外だけれど、悪獣もなおその類を思うっていうものね!
健太
うん。ふだんは声が大きくてびっくりするけれど、同じ班の子をちゃんと守っていたんだ。
ともこ
見た目や態度だけで決めつけないで、仲間を大切にするところも見たいね。

「悪獣もなおその類を思う」の例文

例文
  • 乱暴な態度で知られる兄も、妹が困っている時だけは必ず助けるので、悪獣もなおその類を思うという言葉が浮かぶ。
  • 気性の荒い選手が、けがをした同じチームの仲間を背負って運ぶ姿に、悪獣もなおその類を思うを感じた。
  • 近所で恐れられている犬も、自分の子犬にはそっと寄り添っており、悪獣もなおその類を思うとはこのことだ。
  • 厳しい店長が、長年働いた店員の家族の事情を聞いて休みを認めたのは、悪獣もなおその類を思うというべき行いだった。
  • 普段はぶっきらぼうな祖父が、孫の発表会の日だけは早朝から席を取りに行き、悪獣もなおその類を思うの情を示した。
  • 敵対しているように見えた二人も、同じ学校の危機には力を合わせ、悪獣もなおその類を思うという一面を見せた。

主な参考文献
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂書店、1910年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・『太平記』14世紀後半成立。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』.




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