【あの世千日、この世一日】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

あの世千日、この世一日

【ことわざ】
あの世千日、この世一日

【読み方】
あのよせんにち、このよいちにち

【意味】
死後の千日の楽しみよりも、生きているこの世の一日を楽しむほうがよいということ。

ことわざ博士
あの世千日、この世一日は、死後の長い時間よりも、現に生きている一日の価値を重く見る言い方なんだよ。
助手ねこ
命や時間を大切にしたい場面、また今この世で味わえる喜びを軽んじないようにいう場面で用いるニャン。

【英語】
・a day in life is better than a thousand days in the afterlife.(あの世の千日より、この世の一日のほうがよい)

【類義語】
・死しての千年より生きての一日(ししてのせんねんよりいきてのいちにち)

「あの世千日、この世一日」の語源・由来

ことわざを深掘り

「あの世千日、この世一日」は、特定の中国古典の故事に由来する言葉ではなく、「あの世」と「この世」を向かい合わせ、「千日」と「一日」を比べて意味を際立たせることわざです。「死後の千日の楽しみ」より「この世の一日の楽しみ」をよしとする形で、長くても手の届かない時間より、短くても実際に生きて味わえる時間を重んじる考えを表します。

「あの世」は、人が死んでから赴くと考えられている世界、すなわち死後の世界を指す言葉です。古い用例では、『宇津保物語(うつほものがたり)』(970〜999年ごろ成立、平安時代中期)に、「この世にも、あのよにも」と、現に生きている世界と死後の世界を並べた言い方が出てきます。ここにはすでに、「この世」と「あの世」を対にして考える感覚が表れています。

一方、「この世」は、死後の世界である「あの世」に対する現世、つまり現に生きている今の世を指します。『万葉集(まんようしゅう)』(8世紀後半成立、奈良時代)には、「今代(このよ)にし楽しくあらば」と始まる歌があり、今この世で楽しく生きることを、来世のあり方よりも身近な価値として受け止める発想が読み取れます。これは「あの世千日、この世一日」そのものではありませんが、今生きている世界を大切に見る心の古い表れといえます。

「あの世」は、仏教の言い方では彼岸にあたる世界として、極楽・浄土、または地獄を指すことがあります。一般には、もっと広く、死後の世界やこの世とは別の場所という意味でも使われてきました。このことわざでは、あの世で長く楽しむという想像上の時間を「千日」と大きく表し、それに対して、いま生きている確かな時間を「一日」と短く表しています。大きな数と小さな数を並べることで、時間の長さではなく、実際に生きて味わえることの重みを強く示しています。

表記には、「彼世千日此世一日」「彼の世千日此の世一日」のような形があります。「彼世」「彼の世」は「あの世」、「此世」「此の世」は「この世」を漢字で表したものです。現在は、読みやすく「あの世千日、この世一日」と書くことが多く、かな書きにすることで、ことわざとしての意味がすぐ伝わりやすくなっています。

このことわざは、死後の世界を否定するための言葉ではありません。むしろ、まだ来ていない遠い世界を思うだけで、目の前の一日をおろそかにしてはならない、という戒めを含んでいます。家族と過ごす時間、友だちと笑う時間、健康に食事をする時間など、生きているからこそ持てる一日を大切にしようとする、素朴で力のある言い方です。

「あの世千日、この世一日」の使い方

健太
おじいちゃんが退院したから、日曜日に家族で小さなお祝いをするんだ。宿題は土曜日の朝に終わらせるよ。
ともこ
いいね!長く元気でいてほしい人と過ごす一日は、ほんとうに大事だよね。
健太
うん。あの世千日、この世一日っていうし、今いっしょにご飯を食べられる時間を大切にしたいんだ!
ともこ
それなら、お祝いの手紙も書いたら?きっとおじいちゃん、すごく喜ぶよ。

「あの世千日、この世一日」の例文

例文
  • あの世千日、この世一日というように、退院した祖母と過ごす今日の散歩を家族は何より大切にした。
  • 父はあの世千日、この世一日の思いで、子どもたちと食卓を囲む時間を望んだ。
  • 余命を意識した友人は、あの世千日、この世一日と考え、会いたかった人に手紙を書いた。
  • あの世千日、この世一日ということわざを聞き、健太は病室の祖父と話せる一時間を大事にした。
  • 母はあの世千日、この世一日と言って、先の不安ばかり見ず、今日の家族の笑顔を喜んだ。
  • あの世千日、この世一日は、長い夢のような未来より、今生きて味わえる一日を重んじる言葉だ。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・Electronic Dictionary Research and Development Group『JMdict』。




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