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【琴瑟調わず】の意味と使い方や例文!故事は?(対義語・英語)

琴瑟調わず

【故事成語】
琴瑟調わず

【読み方】
きんしつととのわず

【意味】
夫婦の仲がよくないことのたとえ。

ことわざ博士
琴と瑟の音が合わない様子に、夫婦の心や暮らしが調和しない状態を重ねた表現だよ。
助手ねこ
夫婦の間ですれ違いや争いが続き、円満とはいえない場面に用いるニャン。

【英語】
・marital discord.(夫婦間の不和)

【対義語】
・琴瑟相和す(きんしつあいわす)

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「琴瑟調わず」の故事

故事成語を深掘り

「琴瑟」の「琴」と「瑟」は、どちらも中国の古い弦楽器です。「瑟」は琴に似た、より大型の楽器で、二つを合奏して音が美しく調和する様子は、古くから、家族や夫婦が仲よく暮らすことのたとえとして用いられました。反対に、その音が整わないことから、夫婦の仲がよくない状態を「琴瑟調わず」と表します。

このたとえのもととなったのは、『詩経(しきょう)』(戦国時代成立、中国最古の詩集)「小雅(しょうが)・常棣(じょうてい)」の一節です。『詩経』には、紀元前千年ごろから紀元前六百年ごろにかけての周代の歌が収められています。

「常棣」は、兄弟や家族が集まり、仲よく宴を開く喜びを歌った詩です。その中には「妻子好合、如鼓瑟琴」とあり、妻や子が仲よくまとまる様子を、琴と瑟を奏でるような美しい調和にたとえています。ここから、夫婦の仲がむつまじいことを「琴瑟相和す」「琴瑟調う」と表すようになりました。

一方、「琴瑟不調」という否定の形は、『漢書(かんじょ)』(後漢、82年ごろ成立、班固撰)「董仲舒伝(とうちゅうじょでん)」にも出てきます。前漢の儒学者である董仲舒(とうちゅうじょ)が武帝の問いに答え、秦から受け継いだ政治の仕組みを改める必要を説いた場面です。

董仲舒は、政治がうまく働かない状態を「琴瑟不調」にたとえました。琴や瑟の調子がひどく狂えば、いったん弦を解き、張り直してからでなければ演奏できないように、政治も古い仕組みを改めなければ治まらないという意味です。この段階では、夫婦の不仲ではなく、政治の乱れを表すたとえとして使われています。

現在の意味に直接つながる用例は、『因話録(いんわろく)』(9世紀・唐、趙璘撰)にあります。『因話録』は、帝王や役人などにまつわる逸話を集めた全六巻の書物です。そこには「郭曖嘗與昇平公主琴瑟不調」とあり、郭曖(かくあい)と、その妻である昇平公主(しょうへいこうしゅ)の夫婦仲が調わなかったことを「琴瑟不調」と記しています。

郭曖は妻との争いの中で、皇帝の娘であることを頼みに威張っていると非難しました。怒った昇平公主は父である皇帝に訴えましたが、皇帝は郭曖の父が大きな功績を立てた人物であることを認め、娘を夫のもとへ帰しました。郭曖の父も息子を厳しく戒め、この夫婦の争いを収めようとしました。

この逸話では、「琴瑟不調」が楽器の不調ではなく、はっきりと夫婦げんかや夫婦の不和を表しています。琴と瑟の美しい合奏を夫婦円満にたとえた古い表現が、否定の形になることで、夫婦の心が合わない状態を表す言葉として定着していったのです。

日本では、正岡子規の『筆まかせ』(1884〜1892年・明治時代、正岡子規著)に、「琴瑟相調はず風波時に生ずる」とあります。夫婦の間に争いが起こることを述べた用例であり、「琴瑟不調」という漢語が「琴瑟相調わず」「琴瑟調わず」という日本語の形で用いられ、現在の意味へと受け継がれたことが分かります。

「琴瑟調わず」は、調和するはずの二つの楽器が別々の音を立てるように、本来は心を合わせて暮らす夫婦がすれ違い、仲よく過ごせなくなっている様子を表す故事成語です。

「琴瑟調わず」の使い方

健太
隣の家のおじさんとおばさん、最近なんだか元気がなくて挨拶も少し冷たいんだよね。
ともこ
あら、そうなの?前はいつも二人で仲良くお庭の手入れをしていたのに、どうしちゃったのかしら。
健太
お父さんに聞いたら、お互いの意見が合わなくて、今は琴瑟調わずという状態らしいんだ。
ともこ
なるほど、二人の息がぴったり合わないんだね。早く元の仲良しに戻るといいわね!
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「琴瑟調わず」の例文

例文
  • 両親は小さなことでも争いが絶えず、琴瑟調わずの状態が続いている。
  • 物語では、琴瑟調わずだった王と妃が、国の危機をきっかけに心を通わせる。
  • 忙しさから会話が少なくなり、夫婦はいつしか琴瑟調わずとなった。
  • 人前では仲のよい夫婦に見えたが、家庭では琴瑟調わずであった。
  • 店の経営方針をめぐって意見が対立し、店主夫婦は琴瑟調わずと噂された。
  • 琴瑟調わずのまま争いを重ねるのではなく、二人は互いの考えを聞くことにした。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・班固『漢書』後漢、82年ごろ成立。
・趙璘『因話録』唐、9世紀。
・『詩経』戦国時代成立。
・正岡子規『筆まかせ』1884〜1892年。





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