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【急行に善歩無し】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・英語)

急行に善歩無し

【故事成語】
急行に善歩無し

【読み方】
きゅうこうにぜんぽなし

【意味】
物事を急いで行うと、丁寧さや正確さを欠き、よい仕上がりにならないということ。

ことわざ博士
急行に善歩無しは、急いで歩けば足取りが乱れることを、慌てて進めた仕事の不出来にたとえた表現だよ。
助手ねこ
時間に追われて作業を急ぎ、間違いや粗雑な仕上がりを招いた場面で用いるニャン。

【英語】
・Haste makes waste.(急ぎすぎると、かえって時間や労力を無駄にする)

【類義語】
・急いては事を仕損じる(せいてはことをしそんじる)
・急がば回れ(いそがばまわれ)

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「急行に善歩無し」の故事

故事成語を深掘り

「急行に善歩無し」のもとの形は、「急行無善歩」です。「急行」は、ここでは鉄道の急行ではなく、急いで進むことを指します。「善歩」は、乱れのない、しっかりとした歩みという意味です。急いで歩けば、一歩一歩を正しく運べないという具体的な姿から、物事を性急に行えば、よい成果を残しにくいことを表しています。

この句は、後漢の王充が80年ごろに著した思想書『論衡(ろんこう)』の言葉として伝わっています。『論衡』は、当時広く信じられていた迷信や不合理な説を批判し、物事を道理に照らして考えようとした書物です。

明代の楊慎が著した『升庵詩話』には、「急行無善歩、促柱少和聲」とあり、王充の言葉として挙げられています。前半は、急いで進めば、よい歩みはできないという意味です。後半は、弦楽器の調子を性急に整えても、調和のとれた音は生まれにくいという意味で、速さを求めすぎると、動作の整いも音の美しさも失われることを、二つの比喩で表しています。

これとよく似た言葉は、『西京雑記(せいけいざっき)』(両晋南北朝期成立、作者未詳)にも出てきます。巻三には、前漢の文人である枚皋は文章を素早く作り、長卿こと司馬相如は時間をかけて作ったと記されています。二人とも名声を得ましたが、司馬相如の文章は初めから終わりまで整って美しく、枚皋の文章には、時折、不出来な句がありました。

その違いを受けて、『西京雑記』には「故知疾行無善迹矣」とあります。急いで進めば、よい足跡は残らないという意味です。ここでは、歩く速さを表す言葉が文章作りに重ねられ、早く書く能力は役立つものの、急ぐほど文章の細部に欠点が生じやすいことを示しています。

同じ話では、戦場で急いで命令書を書くときには枚皋を用い、朝廷で後世に残る重要な文章を書くときには司馬相如を用いるべきだとも述べています。速さが必要な仕事と、時間をかけて完成度を高めるべき仕事とを区別しており、単に「何事も遅く行うべきだ」と説いているのではありません。

唐代には、政治家の朱敬則が武則天に差し出した上疏の中で、「急趨無善迹、促柱少和聲」という近い形を用いました。朱敬則は、国が乱れていた時期に役立った厳しい政策も、世の中が治まった後まで性急に続ければ害になると説き、時勢に応じて政治の方法を改めるよう求めました。

この用例では、急いで歩く姿のたとえが、文章の作り方だけでなく、国を治める判断にまで広がっています。目先の速さばかりを求めず、状況を落ち着いて見定めなければ、よい結果を残せないという戒めになっています。

清代の翟灝が著した『通俗篇(つうぞくへん)』は、「急行無善歩」の項目に、『論衡』『西京雑記』『唐書』などの類似した表現をまとめています。さらに、急いで歩くこととよい歩き方は両立しないことや、仕事に追われているときには整った書が書けないことを表す、後代の詩句も挙げています。こうして、急ぐほど仕上がりが損なわれるという考えが、長く受け継がれてきました。

日本語では、漢文の「急行無善歩」を「急行に善歩無し」と読み下し、急いで仕上げた仕事は出来がよくないという意味で用います。「歩」は、もともと一歩一歩の足取りを表しますが、現在では、文章、作品、計画、工事など、正確さや丁寧さが求められる幅広い仕事に当てはめられています。

この故事成語が戒めているのは、素早く行動することそのものではありません。速さを優先するあまり、必要な確認や順序を省き、成果の質を落としてしまうことです。急ぐ必要があるときほど、外してはならない手順を守ることが、結局は確かな完成への近道になります。

「急行に善歩無し」の使い方

健太
理科の観察記録を休み時間だけで仕上げたら、グラフの数字を二か所も書き間違えてしまったよ。
ともこ
急行に善歩無しだね。早く提出しても、間違いだらけでは困るもの!
健太
うん。今度は観察した日付と気温を一つずつ確かめてから清書するよ。
ともこ
私も表の単位が合っているか見るね。二人で丁寧に直せば、今度は大丈夫!
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「急行に善歩無し」の例文

例文
  • 急行に善歩無しで、慌てて書いた作文には誤字や説明不足が多かった。
  • 母は急行に善歩無しと言い、料理の火加減を確かめずに急ぐ兄を注意した。
  • 急行に善歩無しの言葉通り、短時間で作った祭りの看板は文字の位置がずれていた。
  • 提出期限だけを気にして報告書をまとめれば、急行に善歩無しとなり、重要な数字を見落としかねない。
  • 安全確認を省いて工事を進めることは、急行に善歩無しの戒めに反する。
  • 急行に善歩無しと心得て、職人は納期が迫っていても最後の仕上げを丁寧に行った。

主な参考文献

・王充『論衡』後漢、80年ごろ。
・楊慎『升庵詩話』明代、16世紀。
・『西京雑記』両晋南北朝期成立。
・劉昫ほか編『旧唐書』後晋時代成立。
・翟灝『通俗篇』清代、18世紀。





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