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【弘法にも筆の誤り】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

「弘法にも筆の誤り」の漫画

【ことわざ】
弘法にも筆の誤り

【読み方】
こうぼうにもふでのあやまり

【意味】
どんな名人や達人でも、ときには失敗することがあるというたとえ。

ことわざ博士
弘法にも筆の誤りは、すぐれた人を責めるためではなく、名人にも思いがけない失敗があることを表す言葉だよ。
助手ねこ
ふだんは正確にできる人が、得意な仕事や作業で珍しく失敗した場面で用いるニャン。

【英語】
・Even Homer sometimes nods.(偉大な人でもときには失敗する)
・A horse may stumble though it has four legs.(しっかりしているものでも、ときにはつまずく)

【類義語】
・猿も木から落ちる(さるもきからおちる)
・河童の川流れ(かっぱのかわながれ)
・上手の手から水が漏る(じょうずのてからみずがもる)
・知者も千慮に一失あり(ちしゃもせんりょにいっしつあり)

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「弘法にも筆の誤り」の語源・由来

ことわざを深掘り

「弘法にも筆の誤り」の「弘法」は、空海(くうかい)に贈られた諡号(しごう)である弘法大師(こうぼうだいし)を指します。弘法大師は、のちに「大師」といえば弘法大師を指すほど親しまれた人物で、平安時代初期の僧として広く尊敬されてきました。

このことわざが成り立つ土台には、弘法大師が「書の名人」として知られていたことがあります。空海は、嵯峨天皇、橘逸勢とともに平安初期の三筆(さんぴつ)の一人に数えられ、日本の書の歴史で重要な人物とされています。

語源としてよく結びつけられるのは、『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』(12世紀初め成立、平安時代後期、編者未詳)巻十一第九話に出てくる応天門(おうてんもん)の額の話です。『今昔物語集』は、天竺・震旦・本朝の三部に分けて多くの説話を収めた説話集で、日本の古い説話文学を代表する作品です。

応天門は、平安京の大内裏にあった朝堂院の南面正門です。伝えられる話では、弘法大師が勅命によって諸門の額を書くことになり、応天門の額を取り付けたあとで、「応」の字の点が欠けていることに気づきます。そこで弘法大師は、下から筆を投げて、その欠けた点を打ったと語られています。

この話で大切なのは、古い説話そのものが、ただの書き損じを笑う話として語られているわけではない点です。『今昔物語集』の文脈では、点が「落失たり」とされ、弘法大師が投げた筆で点を補う不思議な力のほうが強く印象づけられています。後のことわざは、この伝説を背景にしながら、「あの弘法大師でさえ筆を誤ることがある」という方向へ意味を移していった表現といえます。

ことわざとしての古い用例には、江戸時代中期の滑稽本『笑註烈子』(1782年)に見える「弘法にも筆のあやまり」があります。ここでは、弘法大師のような名人にも誤りがあるという言い方が、すでに人の失敗を軽く受け止める表現として使われています。

このように、「応天門の額」の古い伝説は平安時代後期の説話集に語られ、ことわざとしての形は江戸時代に定着したものと考えられます。物語の段階では弘法大師の超人的な技が中心で、ことわざの段階では「どんな達人にも失敗はある」という人間らしい教えが中心になりました。

現在の「弘法にも筆の誤り」は、すぐれた人を責めるためだけの言葉ではありません。むしろ、名人であっても失敗することがあるのだから、人の失敗を必要以上に責めすぎない、また自分の失敗にも学びの余地を見つける、という穏やかな見方を含むことわざです。

「弘法にも筆の誤り」の使い方

健太
計算大会でいつも満点のともこちゃんが、最後の答えを写し間違えたって本当?
ともこ
提出したあとで気づいたから、もう直せなかったの。見直しもしたのに悔しいな……
健太
弘法にも筆の誤りだね。計算が得意なともこちゃんでも、緊張すると写し間違いがあるんだ。
ともこ
ありがとう。次の大会では、答えを写すところだけもう一度たしかめるよ!
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「弘法にも筆の誤り」の例文

弘法にも筆の誤りのイラスト
  • 全国大会で何度も優勝した選手が決勝で反則をしてしまい、弘法にも筆の誤りと言われた。
  • 長年そろばんを教えている先生が暗算の答えを一つ間違え、弘法にも筆の誤りだと周囲は受け止めた。
  • 有名な料理人が大切な料理で塩と砂糖を取り違えたのは、まさに弘法にも筆の誤りだった。
  • 校正の仕事をしている父が案内状の名前を一字見落とし、弘法にも筆の誤りという言葉を思い出した。
  • いつも正確な駅員が臨時列車の時刻を読み違えたので、弘法にも筆の誤りだと同僚がなぐさめた。
  • 書道の上手な友人が展覧会用の作品で一画を書き落とし、弘法にも筆の誤りとはこのことだと思った。

主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・馬淵和夫ほか校注・訳『日本古典文学全集21 今昔物語集1』小学館、1971年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』Cambridge University Press。





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