【ことわざ】
猿も木から落ちる
【読み方】
さるもきからおちる
【意味】
その道にすぐれた人でも、ときには失敗することがあるというたとえ。


【英語】
・Even Homer sometimes nods.(偉大な人でもときには失敗する)
・A good marksman may miss.(名人の射手でも的を外すことがある)
【類義語】
・弘法にも筆の誤り(こうぼうにもふでのあやまり)
・河童の川流れ(かっぱのかわながれ)
・上手の手から水が漏る(じょうずのてからみずがもる)
・千慮の一失(せんりょのいっしつ)
「猿も木から落ちる」の語源・由来
「猿も木から落ちる」は、木登りがじょうずな猿でさえ、時には誤って木から落ちるという身近なたとえから生まれたことわざです。猿は木に登ることが得意な動物としてとらえられてきたため、その猿が落ちるという意外さによって、「どんなに上手な人にも失敗はある」という意味が分かりやすく伝わります。
このことわざの古い用例として、『鷹筑波集(たかつくばしゅう)』(1642年刊、1638年松永貞徳序、西武編)に出る「猿も木から落つるたとへの木葉かな〈定之〉」があります。『鷹筑波集』は、松永貞徳が長年にわたって批点を加えた発句や付句を、西武が編集した俳諧撰集(はいかいせんしゅう)です。
この句では、木から落ちる木の葉を前にして、「猿も木から落つる」というたとえが引き出されています。「落つる」は現代語の「落ちる」にあたる古い言い方で、この段階では、ことわざが俳諧の中で通じる表現として使われていたことが分かります。
もとの発想は、むずかしい話ではありません。木登りの得意な猿という、だれにも思い浮かべやすい存在を取り上げ、その得意な猿でさえ失敗することがある、と見るところに、このことわざの力があります。特別な人物の逸話ではなく、自然や暮らしの観察から、人の失敗を広く言い表す形に整った表現です。
後の時代には、「弘法にも筆の誤り」「河童の川流れ」「上手の手から水が漏れる」などと並ぶ、失敗をめぐる代表的なことわざとして用いられるようになりました。いずれも、すぐれた人や得意な者でも完全ではない、という考えを表しますが、「猿も木から落ちる」は、猿と木という具体的な場面が目に浮かびやすく、子どもにも意味をつかみやすい表現です。
ただし、使い方には少し注意が必要です。相手の失敗をからかうように言うと、失礼に聞こえることがあります。本来は、上手な人でも失敗することがあると受け止め、必要以上に責めないためのことわざです。自分の失敗を軽く説明したり、親しい人をやさしく励ましたりする場面で、自然に使いやすい言葉といえます。
現在の「猿も木から落ちる」は、実力のある人を低く見る言葉ではありません。むしろ、どれほど慣れていても油断はできないこと、そして、失敗した人を一度の失敗だけで決めつけてはいけないことを伝えることわざとして受け継がれています。
「猿も木から落ちる」の使い方




「猿も木から落ちる」の例文
- 全国大会で何度も優勝した選手が決勝で転倒し、猿も木から落ちるという言葉が思い浮かんだ。
- 料理上手な母が砂糖と塩を取り違えたのは、まさに猿も木から落ちるだった。
- 漢字が得意な友人が書き取りテストで一字だけ書き間違え、猿も木から落ちると感じた。
- 長年運転している父が駐車場所を間違え、猿も木から落ちるとはこのことだと思った。
- ベテランの職人が道具の向きを取り違えたと聞き、猿も木から落ちるということわざを思い出した。
- いつも正確な会計係が金額を一つ読み違えたので、猿も木から落ちると周囲は受け止めた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・西武編『鷹筑波集』1642年。
・Cambridge University Press『Cambridge English Dictionary』。























