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「急がば回れ」の意味(語源由来・類義語・対義語)
【ことわざ】
急がば回れ
【読み方】
いそがばまわれ
【意味】
急いでいる時は、少しぐらい危険でも近道をしたくなるが、遠回りでも安全な道を行ったほうが結局は早いことが多いということ。急ぐ仕事はかえって丁寧に、確実なやり方でやれという意味でも使われる。
これは、急ぐあまりに無理をせんと、ちゃんと安全を確認して進むことの大切さを教えてくれる言葉やな。
【語源由来】
連歌師の宗長が詠んだ「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」より。
【類義語】
・急がば高火
・急ぎの文は静かに書け
・急いては事を仕損じる
・早いものに上手なし
・近道は遠道
・遠道は近道
・走れば躓く
・回るは近道
・回るは早道
【対義語】
・巧遅は拙速に如かず
・急かねば事が間に合わぬ
・善は急げ
「急がば回れ」の解説
「急がば回れ」の言葉の元になったのは、室町時代の連歌師である宗長の歌にあった、「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」という言葉だよ。
この歌の中の「もののふ」は武士のことを指し、「矢橋の船」は滋賀県の草津市の矢橋港から大津市の石場港までの湖上の船のことを言うんだ。「瀬田の長橋」は日本三大名橋の一つである「瀬田の唐橋」のことだよ。
この歌が作られた当時、京都へ行くには矢橋から琵琶湖を渡る海路の方が、瀬田の唐橋を通る陸路よりも短くて早かったんだ。でも、琵琶湖は比叡山からの強い風(比叡おろし)によって航行が危険だったんだよね。
だから、安全な陸路を選んでゆっくりと旅を進める方が良いという意味で「急がば回れ瀬田の長橋」と歌われたんだ。それが今の「急がば回れ」ということわざにつながっているんだよ。
つまり、「急がば回れ」は、急いでいる時ほど、安全で確実な方法を選んで進むべきだという教えが込められているんだね。
「急がば回れ」の使い方
「急がば回れ」の例文
- 健太くんは図書館の本の期限がせまっていたので、あせって読もうとしたが、急がば回れと考えて、いったん返却してから、再度かりなおした。そのおかげで、ゆっくりと理解しながら読み進めることができ、本の内容がよくわかり、楽しく読めた。
- 急がば回れという言葉にあるように、いったん休憩してから出発しないと、このまま歩き続けたら、どこかで倒れて余計に時間がかかることになるよ。
- 健太くんは学校の工作の宿題がおくれていたが、急がば回れを思い出し、あせらずにていねいに作業を進めた。その結果、きれいな作品ができ、先生にもほめられた。
- 急がば回れという言葉にあるように、電車内で不調を感じたら、最寄りの駅で降りないと、貧血を起こし余計に時間がかかってしまう。
- ともこちゃんは試験勉強に追われていたが、急がば回れを思い出して、焦らずに計画的に学習を進めた結果、無事に試験に合格した。
- 急がば回れっていう言葉があるように、最短距離で行こうとすると渋滞するから、こっちから回っていったほうが良いよ。
- 会社で新しい商品の開発が遅れていたが、急がば回れの教訓を守り、焦らずに品質を確保した結果、評判が良く売れ行きが好調だった。
- 駅までは少し遠回りになるけれど、横断歩道を渡ったほうが安全だよ。急がば回れというからね。
- 塾におくれそうなので近道をしたら工事中で通れなかった。あわてて引き返したけれど間に合わなかった。まったく急がば回れだ。
- 急がば回れっていう言葉にあるように、この契約を確実にしたいならば、クライアントだけじゃなく、こことここにも面倒がらずにあいさつに行っておいた方がいいよ。
- 急がば回れという言葉のように、寄り道をした人の方が人生の円熟味が増しているような気がする。
「急がば回れ」を英語で言うと?
「急がば回れ」の英語表現をご紹介します。
※英語の声:音読さん
Make haste slowly.
- 直訳:ゆっくりと急げ。
Slow and steady wins the race.
- 直訳:遅くとも着実な者が競争に勝つ。
Haste makes waste.
- 直訳:急ぎは無駄を生む。
- 意味:急ぐとかえって時間がかかる。
- 用語:haste:急ぎ / waste:無駄
More haste less speed.
- 直訳:より急ぐなら、よりスピードを落とせ。
- 意味:急ぐとかえって時間がかかる。
「急がば回れ」を深掘り
「急がば回れ」という考え方や哲学が科学的にも支持されていることを示す研究や事例が数多く存在します。
北海道大学の村田明日香の研究によれば、人は報酬を得るために急ぎがちになり、エラーをしやすくなることが示されています。
特に、失敗することで報酬が得られなくなるという事実が人々の焦りを引き起こし、その結果としてパフォーマンスが低下するという悪循環になりやすいことが分かりました。
つまり、ある種の報酬や目標を目の前に掲げられると、人は冷静な判断を失いがちになり、その結果として失敗しやすくなるのです。
また、愛の告白の際に熱意だけで行動し、後でその行動を後悔することなども、「急がば回れ」の考え方が必要とされる状況の一つとして挙げられます。
焦って行動することで冷静な判断ができなくなり、結果として思い通りの結果を得られないことが多くなるのです。
日本人の睡眠時間が少ないという問題に関しても、「急がば回れ」の考え方が科学的に支持されています。睡眠不足になると、マイクロスリープという短時間の無意識の眠りに陥りやすくなることが知られています。
これは大脳皮質が疲れている証拠であり、この状態での作業効率はほとんど上がりません。そのため、仮眠を取ることで脳の疲れを解消し、パフォーマンスを回復させる方が効率的であることが示されています。
実際、NASAの研究によれば、短時間の仮眠を取ることでパフォーマンスが大幅に向上することが分かっています。
さらに、昼寝をすることで記憶力が向上するという研究結果もあります。特に、昼寝後にカフェインを摂取すると、眠気を感じることなく活動的になれることが広島大学の研究で示されています。
これらの研究や事例を通じて、「急がば回れ」という考え方が実際の行動や判断においても有効であり、科学的にもその根拠があることが示されています。
参考文献
このことわざ、科学的に立証されているんです | 堀田 秀吾
一口メモ:命令形のことわざは他にもあるよ
教訓を含むことわざには、命令口調のものがあります。ここでは、命令形のことわざの例を3つご紹介します。
勝って兜の緒を締めよ
物事において成功や決着がついたからといって気を緩めてしまいそうになるが、緩めるのではなくさらに気を引き締めないといけないと言う意味。
可愛い子には旅をさせよ
親は、子どもを手元においてあまやかさずに、世間に出して苦労をさせたほうがよいということ。
習うより慣れろ
物事は、人に教わるよりも自分で直接体験してゆく方が身につくということ。