【ことわざ】
鼬になり貂になり
【読み方】
いたちになりてんになり
【意味】
いろいろな方法を試してみること。手段を変えながら、目的を果たそうとすること。


【英語】
・try every possible means(あらゆる手段を尽くす)
【類義語】
・貂になり兎になり(てんになりうさぎになり)
・手を替え品を替え(てをかえしなをかえ)
・あの手この手(あのてこのて)
【対義語】
・一本槍(いっぽんやり)
「鼬になり貂になり」の語源・由来
「鼬」はイタチ、「貂」はテンを表します。どちらもイタチ科の動物で、細長い体つきの小動物として知られます。「鼬になり貂になり」は、この二つの動物名を並べ、あたかも姿を変えるように、手段や態度を変えながら物事を進めるようすを表したことわざです。
このことわざの古い用例として、浄瑠璃(じょうるり)『大塔宮曦鎧(おおとうのみやあさひのよろい)』(1723年・江戸時代中期、竹田出雲・松田和吉合作、近松門左衛門添削)に「鼬(イタチ)になり貂(テン)になり、意見するほどひがみ根性」という形が出てきます。『大塔宮曦鎧』は、享保8年に大坂竹本座で初演された五段の時代物浄瑠璃です。
この用例では、人に意見する、つまり相手をさとしたり忠告したりする場面で、あれこれと手段を変えることを「鼬になり貂になり」と表しています。「意見する」は、相手に注意や忠告をして、行いを改めさせようとする意味合いをもちます。
このことから、もとの言い方は、ただ動物を並べた面白い表現ではなく、相手に働きかけるために態度や方法を次々に変えるようすを、動物の名で印象的に言い表したものといえます。イタチとテンは近い仲間の動物であるため、似ているが同じではないものへ次々と変わる、というたとえが自然に成り立ちます。
また、同じ意味に近い形として「貂になり兎になり」もあります。これは、動物名を入れ替えながら、「手を変え品を変え、いろいろな方法を試す」という中心の意味が保たれている例です。ことわざとしては、何かを成しとげるための工夫を表す場合にも、相手にしつこく働きかける場合にも用いられます。
現在の「鼬になり貂になり」は、古い浄瑠璃の中に見られるような、人への働きかけの場面から意味を広げ、方法を次々に変えて試みること全般を表す言い方として使われます。失敗しても一つの方法に固まらず、別の手段を探すという意味の芯は、古い用例から現代の意味まで一続きになっています。
「鼬になり貂になり」の使い方




「鼬になり貂になり」の例文
- 先生は、漢字が覚えにくい児童のために、鼬になり貂になり練習方法を工夫した。
- 店長は売り上げを戻そうと、鼬になり貂になり広告や陳列を変えた。
- 祖母は薬を嫌がる犬に、鼬になり貂になり飲ませ方を試した。
- チームは相手の守備を崩すため、鼬になり貂になり攻め方を変えた。
- 兄は妹の機嫌を直そうと、鼬になり貂になり話題を選んだ。
- 会社は利用者を増やすため、鼬になり貂になり新しいサービスを考えた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・EDP編『英辞郎 on the WEB』アルク。
・竹田出雲・松田和吉作、近松門左衛門添削『大塔宮曦鎧』1723年。























