目次
「弘法にも筆の誤り」とは
読み方・意味
- ことわざ:弘法にも筆の誤り
- 読み方:こうぼうにもふでのあやまり
- 意味:どんなに熟練した達人でも、ときには失敗するというたとえ。
「弘法にも筆の誤り」とは、どんなに優れた名人や達人であっても、時には失敗することがあるという意味のことわざです。
特に、その道に長けた人物が珍しくミスをしたときに使われます。
「弘法」とは、平安時代の僧侶であり、真言宗の開祖である空海(弘法大師)のことを指します。
空海は書の名人としても知られ、「三筆」(嵯峨天皇・橘逸勢とともに、日本三大書家の一人)と称されるほどでした。
「弘法にも筆の誤り」の語源・由来
「弘法にも筆の誤り」の語源は、『今昔物語』などの伝承にあります。
あるとき、空海は宮中の応天門に掲げる額の字を書くよう命じられ、「應天門」と書きました。
しかし、額を掲げた後で、「應」の字の上の点が抜けていることに気づきます。
すでに額が高い場所に設置されていたため、下から筆を投げつけて見事に点を打ったという逸話が残っています。
この話は、単なる「ミス」を指摘するものではなく、空海の驚異的な技術や対応力の高さを称えるものでもあります。
ただし、この伝説が生まれた当初は「筆の誤り」として語られることはなく、むしろ空海の超人的な能力を示す話として伝えられていました。
「弘法にも筆の誤り」という表現が広く使われるようになったのは江戸時代以降であり、偉大な人物であっても失敗することがある、という教訓の言葉として定着しました。
「弘法にも筆の誤り」の使い方
「弘法にも筆の誤り」の例文
- 彼は数学の天才だけど、計算ミスをしてしまったなんて驚きだね。まさに弘法にも筆の誤りだ。
- いつも完璧なシェフが、今日は塩を入れすぎたみたいだ。弘法にも筆の誤りということか。
- 守備が鉄壁のプロ野球選手がフライを落とすなんて、まさに弘法にも筆の誤りだね。
- あの先生が漢字を間違えるなんて珍しいね。弘法にも筆の誤りとはこのことだ。
- 普段はミスしない先輩が、今日に限って資料の数字を間違えた。やはり弘法にも筆の誤りということか。
- ベテランのバイオリニストが本番で音を外したけど、長年の経験があっても失敗はあるもの。弘法にも筆の誤りだね。
文学作品などの用例
「違え無え。さう云やどこか眼の中に、すすどい所があるやうだ。」
「ほんによ、だからおれは始めから、何でもこの人は一つぱしの大泥坊になると云つてゐたわな。ほんによ。今夜は弘法にも筆の誤り、上手の手からも水が漏るす。漏つたが、これが漏ら無えで見ねえ。二階中の客は裸にされるぜ。」
と繩こそ解かうとはし無えけれど、口々にちやほやしやがるのよ。すると又あの胡麻の蠅め、大方威張る事ぢや無え。(『鼠小僧次郎吉』芥川龍之介)
「弘法にも筆の誤り」の類義語・似たことわざ
「弘法にも筆の誤り」の対義語
「弘法にも筆の誤り」の注意点
- 誰にでもある普通のミスには使わない
→ そもそも得意でない人が失敗した場合には適さない。
(例:✕「料理が苦手な彼が卵を焦がした。弘法にも筆の誤りだ」→ もともと得意でないため不適切) - 相手を責める意味ではなく、励ましとして使う
→ 「ミスしても仕方がないよ」とフォローする場面で使うと良い。
(例:〇「普段は完璧な君が失敗するなんて珍しいね。でも、弘法にも筆の誤りだから気にしないで!」) - 一般的に自分のミスには使わない
→ 「弘法」は他者を指すため、自分の失敗には基本は用いない。
(例:✕「テストで計算ミスをした…弘法にも筆の誤りだな」→ 自分のことには適さない)
「弘法にも筆の誤り」の英語表現
Even Homer sometimes nods.
直訳: ホメロスも時に居眠りする。
意味: どんな偉人や天才でも、時には失敗することがあるという意味のことわざ。
例文: He’s a brilliant writer, but he made a mistake in his latest book. Even Homer sometimes nods.
(彼は素晴らしい作家だけど、最新の本でミスをしてしまった。ホメロスも時に居眠りする。)
To err is human, to forgive divine.
直訳: 間違えるのは人間の性、許すのは神の業。
意味: 人は誰でもミスをするものなので、他人の過ちを許すことが大切であるという意味のことわざ。
例文: He apologized sincerely for his mistake. To err is human, to forgive divine.
(彼は自分のミスを心から謝罪した。間違えるのは人間の性、許すのは神の業だ。)
おおっ!チュン子ちゃんの字、めっちゃきれいニャー!さすが学級委員!