老子は、中国の伝説的な思想家であり、老荘思想(道家)の祖とされます。彼の生没年は不詳で、本名は李耳、字はたんといいます。
一説には、周の文書係として勤めていた際に、孔子に隠の道を教えた隠君子としても知られます。
老子は周室の衰えを見て隠棲を志向し、関を越えようとした際、関守の尹喜の求めに応じて『老子』という2編の書を残しました。
この『老子』は「道徳経」とも称され、81章から成り立っています。
その内容は約5000字で、簡潔な格言的表現が特徴として挙げられ、多くの諺や格言のような趣があります。
この書は、人為的な儒教の仁義道徳や権力者からの法的規制を批判し、真の道はこれらの人為を超えたもの、すなわち「無」または「一」であると主張しています。
『老子』の成立時期はおそらく戦国末期で、古来より様々な解釈が存在しています。特に魏の王弼の注や河上公の注などが古注の代表として知られています。
日本においても多くの注釈が存在し、太田晴軒の『全解』が特に評価されています。また、1973年に馬王堆で発見された『老子』は、前200年頃のものと推定され、現存最古の書写本文であるとされています。
老子の思想は、後の時代、特に荘子によってさらに広められ、六朝時代の思想界で大きな影響を持ちました。
また、彼が周の時代に孔子に隠の道を教えたという伝説や、西方への旅の途中で関所の守尹喜に請われて『道徳経』を書き残したという話も伝えられています。
老子は中国文化の中で非常に重要な位置を占めており、多くの人々が彼の血筋や思想を引き継ぐ者として彼を尊崇しています。
特に李氏の多くは、老子を先祖として尊敬し、彼の思想や業績に基づいて反権威主義的な活動を行ってきたと言われています。