『韓非子』は中国戦国時代の法家、韓非の著書で、春秋戦国時代の思想と社会を深く分析したものです。
韓非は中国思想史の全盛期、百家争鳴の時代に活躍した政治家で、彼の主張は権力の保持と扱い方に重点を置いています。
儒家の荀子から学びながらも、礼による徳化ではなく、法による規制を強調しました。彼の背景には、戦国末期の国家間の激しい戦いと、君主権力の変遷がありました。
この時代、君主の権限は多くの士大夫や遊説の徒へと広がり、国の統治が多様化していました。しかし、権力が分散しすぎると国そのものが危機に陥ることも。
韓非は、法によって君主の権力を一元化し、国を強化すべきだと主張しました。 この思想は、彼の出身国である韓よりも、秦の始皇帝によって特に高く評価されました。事実、秦はこの法家思想を取り入れ、強大な帝国を築き上げました。
『韓非子』自体は、20巻55編からなる論文集で、法治主義を強調しています。
彼の認識では、君主と人民の利害は必ずしも一致しないため、法による規制と賞罰をもって操縦するべきであり、法の権威を保持するためには批判を許さない姿勢が必要とされました。